Airbnb、緊急時に備えた宿泊提供ボランティア登録を受付へ

宿泊先を探している人に個人が自分の家や部屋を貸し出すことができる旅行スタートアップAirbnbには、オープンハウスプログラムというものがあり、これまで1万7000日分もの宿泊を提供してきた。これはAirbnbホストのボランティアプログラムで、ハリケーンや洪水、その他の自然災害などで避難を余儀なくされた人や、災害に遭った家族をサポートするために他の都市から来た人に、家や部屋を無料で提供するというものだ。

そして今、Airbnbはこのプログラムをより多くの人が参加できるようなものにするため、新バージョンを試行しようとしている。その新バージョンでは、Airbnbのホスト、そしてホストではなくても困っている人に宿を提供したいと思う人なら誰でも“スタンバイ”リストに登録できるというものだ。

今夏に試験開始を見込む今回の取り組みは、まずカリフォルニア州サンノゼで実施する。その後、年内にいくつかの都市に広げ、最終的にはグローバル展開する予定だ。

オープンホームの拡大は、このプログラムを災害などの緊急時にいかに素早く役立てられるようにするか、というところからきている。Airbnbはこれまで90件超の災害時に9000軒の家(部屋)での宿泊を提供した。その中で、時間的ギャップが課題として浮かび上がった。というのも、家や部屋を貸し出すボランティアを募るのに数日かかるからだ。必要な時にすぐにサービスを提供できるよう、前もって準備できることがある、ということで今回の取り組みに至っている。

サンノゼがプログラムの試験を行う初の都市に選ばれたのには2つ理由がある。2017年の大規模な洪水では、同市は1万4000世帯を避難させなけれなならず、そうした人たちの宿泊場所を用意するのにAirbnbに頼ったという経緯がある。それだけに、サンノゼはこのプログラムの意義を理解しているのだ。またサンノゼはシリコンバレーの中心地に位置するだけあって、テック企業主導のサービスを積極的に受け入れる素地がある。

「想像がつくかと思うが、シリコンバレーにおける最大の都市として、テック企業とのコラボレーションはいいことだと思っている」とサンノゼ市長のSam Liccardoはインタビューでこう答えている。「テクノロジーは私たちの経済を一変させた。と同時に、コラボレーション的なアプローチをとることも可能なはずだ」と話した。

これまでにもサンノゼとAirbnbは協力したことがある。ホテルに宿泊する人が払う宿泊税を、Airbnbのホストが自分の部屋に泊まる客から集め、市がホストに課税するというスキームをつくった。これについてLiccardoは、このスキームがAirbnbが他都市で同様の税金に対応する際のテンプレートとなった、と指摘する。

Airbnbがサンノゼでオープンホームを展開したのは洪水がきっかけだったが、Liccardoによるとサンノゼが洪水よりも懸念している自然災害は地震であり、それに十分に備えたいという考えだ。

Airbnbの災害対応・救援の責任者Kellie Bentzは、Airbnbはこれまで救援団体と宿のコーディネートで協力してきた、と語る。オープンホームの次の段階では、このプログラムを拡充するために市当局と緊密に連携を取ることになる。

詳細は今後詰められることになるが、このプログラムはAirbnbのホスト登録をしていない人にもアピールするものとなるため、Airbnbとサンノゼ市が共同で社会に向けて発信するとことになりそうだ。これには、公共サービスでの告知や、災害時に宿を提供することについてその詳細を直接聞くことができるセッションも含まれる。災害時の宿の提供では、ホストはおそらく収入を得ることはできないが、Airbnbがある程度のコストを負担することはあり得る。宿を提供してもいいと考える人のネットワークをあらかじめ築くことで、Airbnbは各ホストがどんな宿を提供できるのか、あるいはどんな制限があるのかといった、より包括的なデータを集めることができる。

このプログラムの趣旨について、Bentzはサンノゼ市に取り入るものでもなければ、Airbnbのホストを増やすこともでもないと断言する。しかし想像するに、この2つは(意図していないとしても)おおいに起こりうる副作用だろう。サンノゼ市はこれまでAirbnbとずっとうまくやってきたというわけではない。Airbnbはホテル向けの規則に違反し、いくつかのケースではまだAirbnbの宿に修正を加えている最中だ。今回の取り組みにより、Airbnbは、崩壊的な侵略者ではなく頼れる存在になる、という社会的信用を得られる。一方、ホストについてだが、これまでAirbnbの宿を何回も利用したことはあっても自分の住まいを誰かに貸すことに消極的という人に対し、このプログラムは少なくともコンセプトをアピールするチャンスになる(厳密に言うと、Airbnbはそうした理由でこのプログラムを拡大するわけではない、としている。このプログラムに誠実さがなければ、私は今ここにいないだろう、とBentzは語った)。

緊急時の宿泊提供者になるというのは、Airbnb以外のところでもできることだが、Airbnbはこれまでのところ、バケーションレンタルのHomeAwayのような家を貸し出す他のプラットフォームと特に協力していない。Bentzは「他社との協力について我々には話し合う用意がある。しかし今のところ、どこかが興味をもっているというような話は聞いていない」と述べている。

 イメージクレジット:Radius Images

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(翻訳:Mizoguchi)

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TechCrunch Japan

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