Airbnbが政府の情報開示要請に関する初の透明性レポートを発行

Interiors of a living room

Airbnb初となる透明性レポートによれば、同社は今年の上半期だけで世界各国の政府から188件のユーザーデータ開示要請を受けていた。そして、そのうち82件について実際に情報開示を行っている。

Airbnbは、サービスを提供している各都市の地方行政機関や一般の人々に対する透明性を高めることを目的とした、Community Compactという施策の一環として透明性レポートを発行している。

「私たちはもっと開けたコミュニティづくりを目指し、世の中の人たちに対して私たちのコミュニティに関する情報を公開しています」とAirbnbのスポークスマンであるChristopher NultyはTechCrunchに語った。「私たちは、透明性レポートの発行がその大きな一歩であると感じていますし、今後は現在掲載されていないデータについても公開していきたいと考えています」

政府からの要請に関する情報を定期的に公開しているテック企業の数は増加傾向にあり、Airbnbは今回のレポート発行によって、そのような企業に仲間入りすることとなった。GoogleFacebookUberといった企業が透明性レポートを発行しているが、Airbnbと比べると彼らが政府から受け取る情報開示要請の数はずっと多い。

Googleは2015年の下半期だけで4万667件の要請を受けている一方、Facebookは同じ期間に1万9235件の要請を受けている。両社は、法執行機関にとってとても価値のあるユーザーデータを大量に保有しているため、多くの情報開示要請を受け取っているのも納得がいく。しかし、UberやAirbnbは、ユーザー間のやりとりや、写真、個人情報のようにリッチな情報を持ち合わせていないため、要請の数も少なくなりがちだ。Uberは、今年の4月に発行された初となる透明性レポートの中で、6ヶ月間で法執行機関から受け取った情報開示要請の数が469件だったと発表していた。

Nultyは、Airbnbがユーザーの安全性向上に努めていることから、同社の受け取る要請の数が比較的低くなっていると話す。「私たちは、Airbnbのプラットフォームにおいて、信頼をとても重要視していて、それがレポートの内容に反映されているのだと思います。2016年の上半期だけ見ても、世界中で3100万回もサービスが利用されているにも関わらず、情報開示要請の数は驚く程低い数字にとどまっています。これは、Airbnbのプラットフォーム上にいる人たちの大部分が、安全にサービスを利用をできているという証拠です」

Airbnbはレポートの中で、法執行機関に情報開示を求められたときは、「無駄であったり、効果が無い場合、さらには誰かに危害を加えるリスクを生み出さないと思われる場合に限って」ユーザーにその事実を伝えるよう努めると記載している。

さらに、同社はレポート内にNational Security Letters(NSL)に関する情報も記載していた。このレターをもとにして、連邦当局はテック企業にユーザーデータを要請することができ、さらに要請先の企業がNSLの情報について話すことを防ぐため、同時に緘口令がしかれることもよくある。企業は、受け取ったNSLの数だけ0から499の範囲で公表することができるが、AirbnbはこれまでのところNSLについては心配していないという。

「今日までに私たちは、情報公開に制限がかけられているNSLやその他の類似要請を受けたことはありません」とAirbnbはレポート内で述べている。

Airbnbは、受け取った情報開示要請を国別に分類し、実際に情報開示が行われた要請の数についても公開している。しかし、要請が地方行政機関からのものなのか、連邦政府からのものなのか、また、どのような情報が開示されたのかについては触れられていない。

同社の法的処置に関するガイドラインによれば、Airbnbは、裁判所の文書提出命令(subpoena)に応じて、ユーザーの住所、氏名、支払データといった基本情報を提供するとされている。しかし、予約履歴などの詳細情報の開示には裁判所命令(court order)が必要となるほか、メッセージなどのユーザー間のやりとりに関する情報開示にあたっては令状(warrant)が必要とされている。

Airbnbに送られた情報開示要請のほとんどがフランス当局から発されており、アメリカ、ドイツ、イギリスの司法当局がその後に続く。また、Airbnbは、オペレーションを行っている世界中の191ヶ国のうち、たった21ヶ国の政府からしか情報開示要請を受けていない。

Airbnbに対する政府の要請の数は比較的少ないものの、ユーザーデータ開示の少なさでは依然Slackがトップだ。最新の透明性レポートによると、同社はレポート発行時までに1件しか情報開示要請を受けていない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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