AirPodsを発売した数日後にAirPowerをキャンセルしたアップル

「AirPowerマットで使えます」。嘘だろう。私に言わせれば、Appleがハードウェアの品質に求めているという「高い水準」は、その顧客の扱いには発揮されていない。ワイヤレス充電が可能な199ドル(日本では22800円)のAirPodsヘッドフォンを発売してからわずか9日後、やがて発売されるはずだったApple純正AirPower誘導充電マットとの互換性をウリにしていたのもむなしく、AppleはAirPowerを完全に破棄した。なんでも「普通に使える」ことを標榜する企業にとって、これはらしくない、ずさんな仕事だ。まったく使えない。

AirPodsの発売後、かなり短期間でAirPowerのキャンセルが表明されたことを考えると、3月20日に「AirPods with Wireless Charging Case」を発表した時点で、はたしてAppleはAirPowerが予定通り発売可能だと判断していたのかどうか、疑問が残る。それを明らかにしないのは、顧客の信頼を踏みにじるものだ。まだ誰も手に触れたことがないうちに、次々に登場する新製品を発注するよう、いつも促しているような会社にとって、これは痛手だろう。そうした顧客に償う方法を真剣に考えるべきではないだろうか。何しろAppleは、2450億ドル(約27兆円)もの現金を常に保有している会社なのだから。

AirPower廃止のニュースをすっぱ抜いたのはTechCrunchだった。「最大限に努力しましたが、AirPowerでは私たちの高い基準を達成することができないという結論に達し、プロジェクトをキャンセルしました。発売を楽しみにされていたお客様にはお詫びいたします。私たちは、ワイヤレスは将来有望だと相変わらず信じています。そしてワイヤレス体験をさらに推し進めるようコミットしています」と、Appleのハードウェアエンジニアリング担当上級副社長であるDan Riccio氏は、電子メールで述べている。

これは驚き以外の何物でもない。特に、AirPowerと互換性があると書いてあったワイヤレス充電可能な199ドル(日本では2万2800円)のAirPodsや、箱にAirPowerと組み合わせた使い方が大々的に描かれている79ドル(日本では8800円)の単品の充電ケースを買った人は、がっかりだろう。

Appleが、AirPowerマットを最初に発表したのは2017だった。その時点では、「来年」にはAirPodsのワイヤレス充電ケースといっしょに発売するとしていた。しかし、2018年は何事もなく行き過ぎた。そして、新しいAirPodsは3月20日に発売されたが、そのプレスリリースにもAirPowerについて何の言及もなかった。これで一気に疑惑が高まった。そして今、伝わるところでは過熱の問題によって生産が困難となり、製品自体がキャンセルされることになった。Appleは、火災の危険性が指摘されたGalaxy Note 7の二の舞になることを避けるため、発売を中止したのだ。

「AirPods with Wireless Charging Case」の箱には、AirPowerの図も載っていた(画像:Ryan Jones

AirPodsで使える充電マットは、他にもいろいろある。もしかすると、Appleが将来発売するiPhoneやMacBookは、ワイヤレスでAirPodsに電源を供給できるようになるかもしれない。しかし、粗悪なサードパーティ製品を避けて、Apple製品だけですべて揃えたいという人には、歯がゆい事態となってしまった。

ありがたいことに、新たにAirPods with Wireless Charging Caseを購入した人は、まだ返品することもできる。しかし、レーザー刻印によってパーソナライズしたApple製品は、普通は返品できない。私自身、よくなくすので、AirPodsには電話番号を刻印している。さらには、AirPowerの発売を楽しみにしながら、Apple Watcheや、iPhone 8以降のモデルを購入した人もいるはずだ。こうした例外的な返品を認めるのかどうか、Appleに問い合わせ中だ。

どうしようもなく壊れやすい新型MacBookシリーズのキーボードについての謝罪Mac Proについての謝罪旧いiPhoneの動作が遅くなることを通知するやりかたがまずかったことについての謝罪、Apple TV+とApple Arcadeを発表だけして、登場は何ヶ月も後になるという最近のベイパーウェアの発表イベント、そして今回のAirPowerについての謝罪とキャンセル。世界で最も多くの現金を保有している会社のゴタゴタが収まらない。こうした問題をうまく解決できなければ、Appleは、Android並に信頼性が低いものに見られてしまうというリスクを冒すことになる。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

投稿者:

TechCrunch Japan

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