AirPods Proはワイヤレスイヤホンの価格水準を引き上げる

「この250ドル(日本では2万7800円)のイヤホンは、なかなかいい」というのは、私が新しいAirPodsを箱から出して装着してみた直後に同僚に伝えたメッセージだ。ニューヨーク市の歩道、地下鉄の中、それからいくつかのカフェで試した後も、その第一印象はまったく変わらなかった。

もう少し言葉を付け加えるなら、これはかなり快適だ。私は、これまでにさまざまなBluetoothイヤホンを使ってきた。それは私の仕事の約得のようなもの。その中でも、不可解な複数形を含む名前を別にすれば、AirPods Proがたぶん最も快適だった。唯一の例外があるとすれば、それはApple(アップル)の子会社のBeatsが販売しているBeats Powerbeats Proくらいだろう。ただしPowerbeats Proは、もっと多くのプラスチック部品を使用した、完全なオーバーイヤーフック型として、独自の装着感を実現している。

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新しいAirPodsは、耳に差し込むだけで快適にフィットする。いろいろなタイプのイヤフォンを試して、どれもしっくりこなかったという人にとっては朗報だ。そういう人も少なからずいるだろう。もちろん、人の耳は2つと同じ形のものがない、美しい雪の結晶のようなものであり、誰でも同じ体験が味わえるというわけではない。とはいえアップルは、オリジナルのAirPodsに対して寄せられたさまざまな苦情を基に、それらを解消するための多くの修正を盛り込んできた。より人間工学的なデザインを採用するとともに、ついにシリコン製のイヤーチップを採用するという妥協に踏み切ったのだ。

なぜ、これまでずっとアップルは、イヤーチップの採用を見送ってきたのか。私には理解できないが、同社もようやく自らの判断で採用を決めたのだ。AirPods Proには、スモール、ミディアム、ラージという3種類のイヤーチップが2個ずつ、合計6個付属している。購入時にはミディアムが装着されている。しかし、これらは標準的な形状のシリコンチップではない。それでも強く引っ張れば外れる。イヤホン本体と噛み合う部分は固くなっている。

アップルによれば、このような独自形状のイヤーチップによって、優れたフィット感が得られるという。もう1つの利点は、本体との結合が、より強固なものになること。これは間違いなく重要だ。私も、ニューヨークの歩道にイヤホンのイヤーチップを、うっかり落としてしまったことがある。これなら、ポケットから取り出すときにも、外れてしまう可能性がずっと低くなる。もし紛失してしまったとしても、アップルはおそらく1ドル程度でスペアを販売することになるだろう。

イヤホンの耳に入る部分は大きくなったのに対し、軸の部分は短くなったことに気付くだろう。これはアップルが、より多くの電子部品を上部に集約できるようになったから。軸は、イヤホンを手で持つための部分として残っている。また、軸にはハプティクボタンも内蔵しており、従来のAirPodsのタップ操作を置き換えている。軸を強めにつまむようにすると、わずかなクリック音を発して応答する。

標準設定では、1回つまむとトラックの再生/停止が可能だ。長押しすると、アクティブ・ノイズキャンセリングモードと、外部音取り込みモードが切り替わる。これらの設定は、iOS(またはiPadOS)13.2がインストールしてあるデバイスで変更可能だ。iOSデバイスとのペアリングは相変わらず簡単で、iPhoneまたはiPadの近くでケースのフタを開くだけ。Androidデバイスやデスクトップ機とは、通常のBluetooth機器と同じ手順でペアリングできる。

設定は、「設定」→「Bluetooth」の順にタップして、AirPods Proのアイコンの横にある「i」をタップする。そこからは、「ノイズコントロール」モードを切り替えたり、左右のAirPodsのボタンに、それぞれ異なる機能を割り当てたり、「イヤーチップ装着状態テスト」を起動したりすることができる。 このテストでは、再生ボタンを押すと、音漏れをテストするための短い音楽が再生される。適切なイヤーチップを装着していれば、「密閉されています」と表示される。何か問題がある場合には、「イヤーチップを調整するか、ほかのチップにしてください」と表示されるので、指示に従う。

人によって耳の形が異なるのはもちろん、一人の人間でも右と左で差がある場合もある。私の場合は、箱から取り出したまま、つまり標準のミディアムのチップでうまくフィットした。それは私の場合であって、私の耳が標準的ということだろう。当然ながら、人によって結果は異なる。

AirPods Proの音質は素晴らしい。私がこれまでに試した中で、最高の音質のイヤフォンの1つと言える。同じ価格帯のソニーWF-1000XM3と同等のレベルだ。この2つは特に抜きん出ている。Echo Budsとは異なり「設定」でレベルを調整することはできないが、AirPods Proは、まざまなジャンルの音楽に合うように、標準状態でうまくチューニングされている。いろいろと試してみるために、これまでのところ、坂本龍一、Danny Brown、The Hold Steady、Electric Youth、Sunn 0)))などを聴いてみた。どれも豊かで充実したサウンドを再生し、250ドルのイヤフォンに期待できるレベルには十分到達している。

ノイズキャンセリング性能も、ソニーと同等レベル。Appleは、オーバーイヤータイプのBeatsのヘッドフォンと同様の適応性を実現している。つまり、常にマイクで周囲の音をモニターし、それに応じて調整を加えている。オーバーイヤータイプのヘッドフォンのような、完全な遮断効果が得られるわけではないが、密閉度が高いので、必要に応じて周囲の音をかき消すのには、非常に優れた効果を発揮する。

周囲に注意を払う必要がある場合には、外部音取り込みモードを利用すればいい。内蔵マイクが周囲の音を拾ってくれる。このモードでは、再生中の音楽を完全に消音してしまうことなく、ほどよいバランスで、環境音とミックスしてくれる。この点に関して、Echo Budsでは問題があると感じていた。エアコンのノイズのようなものまで増幅してしまう。繰り返しになるが、Echo Budsのようにレベルを調整するのではなく、外部音取り込みモードをオン/オフすればいいのだ。

ちょっと余談になるが、AirBuds Proは、前のモデルと同様、イヤフォンを着けたまま人と話ができるという点で、もしかすると社会規範を変えていく可能性がある。こうしたことを見ると、私としては、今日の子供たちにアンディ・ルーニー(Andy Rooney、米国の辛口のコメンテーター)のような態度で接したいと思ってしまうのだが。

ノイズキャンセリングも、外部音取り込みモードも、同様にバッテリーの持続時間をじゃっかん短くする。それらがオフの状態では5時間連続再生できるところが、オンでは30分ほど短くなる。充電ケースを利用した場合、ノイキャンも外部音取り込みもオフの状態なら、Appleは24時間使えるとしている。来週初めに飛行機でアジアに行く際には、これを限界まで試してみようと、今からワクワクしている。快適さについてもテストしたい。今日も、今のところ数時間使っているが、すべて良好だ。

ケースはオリジナルのAirPodsより、じゃっかん大きめ。それでもBeatsやSonyの製品ほどではなく、ポケットに入れて普通に持ち運びできる。縦横の比率は入れ替わっている。今回のものは、長さよりも幅の方が広い。AirPods本体の軸部分が短くなったからだ。新しいデザインでは、ケースにしまうのが、やや難しくなっている。とはいえ、2、3回試してみれば、すぐに理解できるだろう。

AirPods 2と同様、ケースはLightningポート経由でも、ワイヤレスでも充電できる。充電中にケースをタップすると、LEDが点灯する。黄色または緑色に光って、充電状況を表示する。

そう、半日も使っていれば、魅了されてしまう。そこには、何の不思議もない。250ドルという価格は、高すぎると感じる人も多いだろう。しかし、2、3時間も使っていれば、もう手放すのが難しくなる。

近いうちに、もう少し長いレビューを掲載予定だ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

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TechCrunch Japan

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