Alibaba傘下のLazadaがオンライン生鮮食料品販売のRedmartを買収予定か

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今年に入ってからAlibabaは、東南アジアにある、Rocket Internet投資先のEC企業Lazadaの支配権を10億ドルで獲得した。そして今、もともとの計画通りLazadaを”新興市場のAmazon”にすべく、Alibabaが動き始めている。

3人の情報筋から入手した情報によれば、Alibabaの管理下にあるLazadaは、シンガポールを拠点とする生鮮食料品配達サービス企業Redmartの買収契約のまとめに入っている。Redmartは当初、買収ではなく投資という形を希望していたようだが、ある情報筋によれば、3000〜4000万ドルの買収額で話がまとまりそうで、早ければ来週にもこの話が公になる可能性がある。

Redmart、Lazada、Alibabaのいずれからも、本件についてのコメントは発表されていない。

現在のLazadaの取扱商品には、電子機器やファッション、ベビー用品などが含まれており、Redmartを買収すれば生鮮食料品を商品カテゴリーに加えることができる。また、Lazadaは東南アジアの6カ国でビジネスを展開している一方、Redmartはシンガポールだけでオペレーションを行っており、長い間海外展開の夢を抱いていた。

しかしRedmartのビジネスの雲行きは怪しい。これまでに同社は5500万ドルもの資金を調達しており、今となっては東南アジアの有名ベンチャー投資家である、Facebook共同ファウンダーのEduardo Saverinや、大手ゲーム会社のGarenaも同社に投資している。Redmartは5年前に、東南アジアで初めて生鮮食料品のオンラインショッピングサービスを提供する企業として誕生したが、これまで資金繰りには苦しんできた。TechCrunchでも今年に入ってから、Redmartが海外展開や資金力強化のために1億ドルの資金調達を試みていたことが報じられたが、結局これは失敗に終わった。こうなるとイグジットも当然選択肢に含まれてくる。9月にはRedmartがある投資銀行と協力して売却先候補を検討しているとBloombergが報じており、その後も同社は売却先を探すのに忙しいようだ。

Redmartの売却交渉に詳しい情報筋によれば、同社はこれまでにシンガポールの小売企業NTUCや、政府系ファンドのGICとも交渉にあたったがそこでも話はまとまらなかった。しかし、これらの売却話がどこまで進んでいたかは定かではない。さらに別の人の話によれば、Redmartは今年Amazonから買収を提示されたが、金額の低さを理由にそれを断ったという。さらにRedmartは、最近再びAmazonにコンタクトをとり、Lazadaも買収に興味を持っているという情報で買収額を釣り上げようとしたが、それも上手くいかなかった(Amazonの東南アジアでの計画はこの時点でははっきりしない)。

どうやらRedmartは、AlibabaとLazadaの中に、ほかの売却先候補にはないものをみつけたようだ。AlibabaがLazadaに投資した際、Lazadaは資金を使い切る寸前だった。そしてTech In Asiaの最近のニュースによれば、バランスシートの詳細は分からないものの、Redmartも赤字続きの状況にある。

会長のJack Maやその他のAlibaba経営陣は、東南アジアや傘下にあるEC企業Paytmが拠点を置くインドを最も優先度の高い成長市場と呼んでいた。さらにLazadaへの投資や、直近に迫った金融業を営むAscend Moneyへの投資によって、Alibabaは東南アジア市場でいち早く足場を固めるため、サービスを提供する準備が出来たことを証明している。Amazonは、インドでは既にAlibabaのライバルとされている一方、東南アジアへはまだ進出していない。またオンラインでの取引は、東南アジア全体の取引の5%にも満たないと言われているが、この地域には6億人以上の消費者がいる。Googleが共著した最近のレポートによれば、段々と豊かになってきている中産階級の存在や、インターネットの普及が進むことで、東南アジアのデジタル経済は2025年までに年間2000億ドル規模に成長するとも予測されている。そしてEC業がその成長を支えていくと考えられているのだ。

上記のような可能性にも関わらず、現状は厳しい。イグジットの金額の低さに投資家はガッカリするかもしれないが、Redmartの売却話がまとまれば、同社は豊富な資金を持つ親会社と強調して競合を打ち負かし、市場に残り続けることができるだろう。

Redmartのライバルであり、設立から18ヶ月で2000万ドルの資金を調達したHappyFreshは、”事業の継続と利益率の向上”を目的に、最近東南アジアのふたつの市場から撤退した

HappyFreshよりもさらに若いHonestBeeは、昨年150万ドルを調達し、東南アジアとその周辺の6ヶ国以上へサービスを展開するという野心的な計画を立てていた。しかしそれから1年が経った今、同社のサービスは4都市へしか展開されておらず、これは限られた資金で資本集約型の事業をスケールさせることの難しさを物語っている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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