Amazon、美術品などに「希望価格提示」機能を導入―買い手は売り手と値切り交渉ができる

Amazonはクリスマス商戦に向けて意欲的に新しい試みを始めている。その一つが、eBayやPricelineにあるようなダッチ・オークション機能だ。ユーザーは興味のある商品についてMake an Offer〔希望価格提示〕ボタンを押して、Amazonのリスト価格より低い価格を提示することができる。

Amazonはこの機能を当初、15万件のアイテムに限定して提供する。対象は美術品、スポーツやエンターテインメン分野のコレクター向けアイテムだ。ただし「2015年にはさらに何十万件ものアイテムが追加される」という。

この新機能は間違いなくeBayなどの個人間売買サイトからビジネスを奪うことを目的としている。固定価格ではなく、買い手の反応を見て価格を決められる柔軟なシステムであれば、一品物のアイテムを売ろうとする新たな売り手をAmazonのマーケットプレイスの取り込むことが可能になる。

AmazonのAmazon Marketplace担当のPeter Faricy副社長は次のように説明する。

新しい「希望価格提示」機能は、一品物のアイテムをできるだけ安く買おうとしているユーザーにとってまったく新しい体験を提供する。そうしたアイテムの売り手にとっては潜在的な顧客と直接取引し、妥当な価格を見出す道が開ける。かつて店舗や画廊で行われていた値決め交渉がそっくりオンラインで再現できる。最近のわれわれの調査によれば、「興味を示した買い手と価格交渉ができる機能があればさらに売上を伸ばせる」と売り手の半数が考えていることが判明した。逆に買い手も「希望価格提示」ボタンによって、もっとも安い値段でアイテムを購入することができる。

これはAmazonが2013年からマーケットプレイスで美術品などの一品物の扱いを始めたことの延長線上にある。画廊やアンティークショップは常に顧客と相対で交渉し値決めをするというビジネスモデルだ。

この機能を利用しているアイテムの例が面白い。少し検索するとピカソの木版画が見つかった(上の写真)。当初価格は12万5000ドルだったが、すぐに10万ドルに値下げされ、さらに「希望価格提示」を待っている。

その他「希望価格提示」システムを利用しているアイテムには、Tony Romoのサイン入りフットボールヘルメットなどがある。しかしAmazonはこのモデルを一品物以外にも拡大していきたい考えのようだ。

ただしAmazonは「これは一般的なオークションではない」とはっきり述べている。つまり買い手が他の買い手の値段を知り、直接価格を競うようにはなっていない。

「すべての交渉は売り手と買い手の間で1対1でプライベートに行われる。売り手はいつでも買い手の提示した価格を承認することができる。このシステムは買い手が値切り交渉ができることを目的としており、買い手はいかなる場合でも当初のリスト価格以上を払うことはない」とAmazonは説明している。

希望価格提示(Make an Offer)機能を利用したい売り手はリスト価格を決定する際にこのオプションを選べる。興味を示した相手が希望価格を提示してきた場合、売り手は承認、拒否、新価格の逆提示を行える。双方が合意したときに限り、買い手はその合意した価格でアイテムをカートに追加できる。

最近のAmazonの新たな試みとしては、良質な日用品を提供するAmazon Elements、レストランへのテイクアウト予約と宅配バイク・メッセンジャーによる宅配実験などがある。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


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TechCrunch Japan

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