AmazonがBibaの特許と従業員を取り込む:新しいビデオチャットサービスをリリースか

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AmazonによるTwitchElemental Technologiesの買収は、ビデオサービスに本格的に参入するという同社の大きな戦略の2つのピースでしかなかったようだ。このマーケットプレイスとクラウドコンピューティングの巨大企業は昨年、サンフランシスコを拠点とするBiba Systemsを人知れず買収していた。Biba Syestemsはビジネスパーソン向けのビデオメッセージングアプリを開発する企業だ。ある情報提供者によれば、Amazonは現在ビデオメッセージング・サービスの開発に取り組んでいる最中で、今月開催されるAWS re:Invent 2016でその全貌を明らかにする予定だという。

AmazonによるBiba Systemsの買収の可能性が最初に伝えられたのは先週のことだ。GeekWireは2015年9月にデラウェア州に提出された資料の中で、「Justin Acquisition」と呼ばれる企業体とAmazonの合併に関する記述を見つけた。Justin AcquisitionにAmazonの名が直接記載されているわけではないが、その資料には当時Amazonに雇われていたパラリーガル(法律事務所の事務員)の名前が含まれていたのだ。

私たちはAmazonにこの件に関するコメントを求めたものの、彼らからの返事はない(GeekWireの取材にも応じていないようだ)。そこで私たちは独自で調査をすすめることにした。その結果、私たちはAmazonがBibaのテクノロジーと従業員を取り込んでいたことを突き止めた。BibaとAmazonとの間の直接的なつながりを発見したのだ。

Bibaは2つの特許を取得している。1つはビデオ・カンファレンスに関わる技術、もう1つはオーディオ・ストリーミングに関わる技術だ。そして、この2ヶ月間で2つの特許の所有権がAmazonに移行されている。

さらに、Bibaの従業員に付与されたAmazon名義のEメールアドレスが存在することも突き止めた(この記事でそのEメールアドレスを公開する気はない)。

「ジャスティン・’Biba’」に道をゆずる?

AmazonがBibaのテクノロジーをどのように活用するかはまだ不明だ。だが、情報提供者によればAmazonは先日、数名を対象にビデオカンファレンス製品のテストを行ったところだという。

「彼らはそのプロダクトをサンクスギビング後に控えたre:Inventで発表する予定です」と情報提供者は話す。

そのプロダクトにBibaのテクノロジーが使われているかはまだ分からない(もし本当にそのプロダクトが来週発表されるとすればの話だが)。しかし偶然にも私たちは、Bibaが今年8月と9月に同社のAndroidアプリiOSアプリのアップデートを突然、それも密かに行っていたことに気がついた。同社は2015年9月以降、Twitter上のマーケティング活動を行っていないのにもかかわらずだ。

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AmazonがAWSで提供するアプリやサービスの拡大を目指しているのには納得がいく。

すでにAWSでは、クラウド・インフラストラクチャー上で動作するプロダクトをいくつか提供している。それには、クラウドベースのEメールおよびカレンダー管理サービスのWorkMailや、VMwareやParallels、Microsoftなどと競合関係にある仮想デスクトップサービスのWorkSpacesなどが含まれる。

その製品ミックスに、ビジネス向けのコラボレーション・プロダクトやカンファレンス・プロダクトを新たに加えることは自然な流れだと言えるだろう。Bibaが現在提供している機能には、ビデオ/音声カンファレンス、スケジュール管理、連絡先管理、メッセージング、スクリーン・シェアリング、ITマネージャー向けの運営管理機能などがある。

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過去には、はたしてAmazonはエンタープライズ向けソフトウェアのビジネスを拡大していくのかという議論もあったが、この件が本当であれば、その可能性も出てくる。この買収によってAmazonは、AWSの競合サービスであるAzure、そして幅広い種類のエンタープライズ向けプロダクトを抱えるMicrosoftに対する競争力を高めることができそうだ。Microsoftは先日、同社のカンファレンス・プロダクトであるSkypeのアップデートを行い、同アプリは以前よりビジネス・フレンドリーなものとなっている。

AmazonがどのようなサービスをAWSに加えるにしろ、それは既存サービスを共食いするのではなく、補完するようなサービスとなるだろう。すでにAmazonは、AWSでサードパーティーのソフトウェア・プロバイダー向けの大規模なマーケットプレイスを運営している。同社の消費者向けマーケットプレイスのエンタープライズ版とも呼べるサービスだ。

Bibaのテクロジーが活躍しそうな分野は他にもある。すでに述べたように、AmazonはJunstin Acquisitionという企業体を通して今回の買収を実施している。これに関してGeekWireは、同じくAmazonがすでに買収したビデオ・プラットフォームのTwitchと今回の買収には何らかの関連があるのではないかと推測している(Twitchの創業者は同じくビデオサービスのJustin.tvを創業した人物でもある。Twitchのビジネスにフォーカスするため、Justin.tvはすでに閉鎖されている)。

現在4500万人いるTwitchユーザーの多くは、自分のゲームプレイ姿を生中継したり、他のプレイヤーのプレイを観たり、それにコメントをしたりするゲーマーたちだ。だが、Twitchは「食」「アート」などの他の分野への拡大にも取り組んでいる。AmazonがBibaの機能をTwitchに組み込むことで、またはTwitchの機能をBibaに組み込むことで、Twitchにインタラクティブな要素を加え、同サービスをよりB2B向けのプラットフォームへと進化させることができる。

そして最後に、AmazonがBibaを社内用のプラットフォームとして利用する可能性もある。

Amazonの求人を見渡してみても、Bibaの名前に触れているものは1つしかなかった。AWSの顧客サポート部門であるAWS Supportのトレーニングを専門とする、トレーニング・スペシャリストの求人広告を見ると、応募要項のなかには過去にAdobe Connect、Webex、そしてBibaを利用したことがあるという項目がある。Amazonはまず、Bibaのプラットフォームを自社内のサポート・プラットフォームとして利用する可能性がある。そして、その後にAWS上のサービスとしてリリースすることも考えられるだろう。

CrunchBaseによれば、Bibaのこれまでの調達金額の合計は約1500万ドルで、主要投資家にはBenchmark、Trinity、InterWestPartnersなどがいる。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

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TechCrunch Japan

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