Amazon出品よりも高速で優れた自社ECサイトで勝負したいブランドを支援するShogunが約37億円を調達

今年はeコマースがブームとなり、かつてないほど多くの企業や買い物客が、コロナ禍においてソーシャルディスタンスが確保できる安全な選択肢として、ウェブサイトやアプリに目を向けるようになった。個々の企業やブランドがより良いウェブサイトを設計できるように支援するプラットフォームを構築したスタートアップが本日、グロースファンディング(事業拡大のための資金調達)のラウンドを発表した。インターフェイスの改善と高速化によってこの局面に挑むためだ。

Shopify(ショッピファイ)、Big Commerce(ビッグ・コマース)、Magento(マジェント)などのeコマース用プラットフォーム上にブランドが自社サイトを構築し、商品やサービスを販売できるように支援するShogun(ショーグン)は、この1年間で182%の成長を遂げ、3500万ドル(約36億8千万円)の資金調達を行ったことを発表した。Leesa(リーサ)、MVMT、Timbuk2(ティムバック2)、Chubbies(チャビーズ)、K Swiss(Kスイス)などを含む15000社のほか、社名は公表されなかったがFortune 500の家庭用品ブランドも現在Shogunのツールを使用しており、その数は過去8か月で5000社増加した。

Nick Raushenbush(ニック・ラウシェンブッシュ)氏とShogunを共同で創業したCEOのFinbarr Taylor(フィンバー・テイラー)氏によると、今回調達した資金は2つの主力製品(Page BuilderとFrontend)をさらに強化して、同社の市場戦略を向上させるために使う予定とのことだ。ちなみに、Page Builderはドラッグ&ドロップでECサイトを作成できるツール、Frontendはページの読み込み時間を短縮し、企業が簡単にページを更新できる機能を備えた、エンドツーエンドの「ヘッドレスコマース」ソリューションである。

画像クレジット:Shogun

これまでのところ、同社の成長の大部分は有機的であり、マーケティングチームは2人、営業担当者も2人しかいない。「お客様との約束を果たすために、これらのチームだけでなく、エンジニア、設計、製品に関わる各チームも増員する」とテイラー氏は述べた。

シリーズBをリードしているのはAccel(アクセル)で、Initialized Capital(イニシャライズド・キャピタル)、VMG Partners(VMGパートナーズ)、Y Combinator(Yコンビネーター)が参加している。このラウンドに業界の著名人が多数参加していることは、eコマースとウェブデザインの世界においてShogunが高い信頼を得ていることを物語っている。そのような著名人には、Bryant Chou(ブライアント・チョウ)氏(WeblowのCTO)、Mark Lavelle(マーク・ラヴェル)氏とMark Lenhard(マーク・レンハード)氏(それぞれMagentoの元CEOと戦略担当SVP)、Alex O’Byrne(アレックス・オバーン)氏(Shopifyの大手エイジェンシーであるWe Make WebsitesのCEO)、Brian Grady(ブライアン・グラディ)氏(Magentoの大手エイジェンシー、Gorilla GroupのCEO)、およびRomain Lapeyre(ロマン・ラピエール)氏(GorgiasのCEO)などがいる。

成長は、Shogunの取り組みに市場がどれだけ注目しているかを示す指標の1つである。Shogunのユーザー数が増えているだけではない。同社の推定(Adobeの数字を引用)によると、世界全体のe-コマース市場の売上も、今年3月以降、当初の予測を超えて約940億ドル(約9兆9000億円)もの拡大を記録したという。

もう1つの指標は資金調達そのものだ。Shogunは、前回のラウンドから8か月という短いスパンで今回のラウンドを成功させた。同社は、今年2月にイニシャライズドキャピタルがリードした(YCとVMGも参加)シリーズAラウンドで1000万ドル(約10億5千万円)を調達している。

3つ目の指標は評価額だ。テイラー氏は、Shogunの評価額は「9桁の数字であることは間違いない」と述べたが、具体的に何億ドル程度なのかについては明言しなかった。PitchBook(ピッチブック)のデータによると、同社の今年2月時点の評価額は5000万ドル(約52億6000万円)だった。

eコマースの世界は現在、単に広いマクロ経済トレンドの観点からだけでなく、現在舵取りをしているのは誰なのかという観点からも、重要な時期を迎えている。そのような中で報じられたのが、Shogunに関する今回のニュースである。

Amazonや他のマーケットプレイスは、多くの人々がオンラインで買い物をする方法に影響を及ぼすようになった。なんと言っても、顧客が望むものや必要とするものを送料無料で購入できる、使いやすいインターフェイスを備えたワンストップショップを提供しているからだ。同じように、ソーシャルメディアプラットフォームにも、新しい種類の「ストア」が誕生した。ブランドが顧客候補と交流するために利用してきたソーシャルメディアだが、今ではそこで商品やサービスを販売することもできるようになっている。

しかしこれで話が終わるわけではない。ブランドや企業は、オンライン上で生き残るために、製品やサービスを思い通りに見せられる独自のスペースを持ち、顧客体験をより良くコントロールして、第三者に依存することは(物理的にも金銭的にも)避けたいと考えている。
もちろん、欲しいものを最安値で手に入れられる場所にしか関心がない消費者もいるだろう。しかし、自分が欲しいものがピンポイントで決まっている消費者や、特定の企業に愛着を感じていて、気を散らされることなくそこで買い物をしたいと考える消費者もいる。そして、そのような消費者のためにショップを構えることにも必ず商機がある。

Amazonのようなマーケットプレイスのインターフェイスや、Instagramの「ショッパブルな写真(ショップリンク機能)」の予測性は、時にはイライラするほど役に立たないことがある。筆者は、わずかに値段が異なるデンマーク製泡立て器を15種類も見たいとは思わない。欲しいのは、無事に届き、1か月使用しても壊れず、返金してくれる人を探しまわる状況に陥らないような製品だ。同様に、特定のブランドから購入したいと思うかもしれないが、ストーリーやピンで表示される商品と欲しい商品は異なる可能性が高いと思う。

Shogunは、Shopifyのようなプラットフォームを使用してオンラインで独自の「不動産」を構築することを決めた顧客企業に対し、より多くの選択肢を提供し、快適な速度で機能するECサイトを構築するよう提案している。

eコマースビジネスは「テック」能力の見せ所だとみなされてはいても、その能力をコアコンピテンシーとして持つeコマース企業はあまりない。そこにチャンスがあるのだ。

アクセルのパートナーであるEthan Choi(イーサン・チョイ)氏は、「小売業者は大小を問わず、自社の技術スタックを維持するのにうんざりしている」と述べている。ECサイトのプラットフォームは、配送や物流、支払い、在庫発注などの分野も手がけることにより、ますます洗練されてきているが、ウェブデザインの分野まではまだ手が回っていない。

「Shopifyには15種類ほどのテンプレートしかないため、デザインを管理できず、自社のECサイトが、他の100万社のサイトの中に埋もれてしまう。資金とエネルギーがあっても、カスタムサイトを構築するには非常にコストがかかり、テキストの一部を変更するだけで丸一日かかることがある」とイーサン氏は語る。

速度は、Shogunが特定し、別の方法で解決してきた課題である。テイラー氏によると、サイトの速度は閲覧者を購入者に変換するための最も重要な要素である。そのため、Shogunは顧客に最短のページ読み込み時間を提供している。

多くのスタートアップの事例と同じく、テイラー氏とラウシェンブッシュ氏がこの市場ニーズを見つけたのは偶然の出来事だった。

スコットランド・グラスゴー出身のエンジニアであるテイラー氏は以前、Yコンビネーター(YC)で働いていた。YCでは、インキュベーター宛ての大量の申請書を管理するためのツールを考案し、それを構築するサポートをしていた(ちなみに、その流れを汲み、地域レベルでスタートアップとの連携を高めるためにYCが設立したのがStartup Schoolだが、これもテイラー氏が構築した)。

サイドプロジェクトとして、彼は友人のニックと一緒にRuby on Railsをベースとするページビルダー(サイト作成ツール)を考案した。そのページビルダーは当初あまり注目されなかったが、eコマースエージェンシーで働くニックの友人が、「もし2人がeコマースのページを作るためにページビルダーを微調整してくれたら、当社が利用する。報酬も支払う」と言った。
「それがきっかけだった」とテイラー氏は言う。

彼らのプロジェクトは、最終的により多くの顧客とユーザーを獲得して軌道に乗った。勢いづいた彼らは、ついに組織を離れ、自分たちの目的を達成するためにスタートアップを設立し、YCコホートの仲間入りを果たした。

「Shogunは今後、モバイルコマースを向上させるためのツールを構築することに注力していく」とテイラー氏は語る。同氏によると、一般的に、eコマースサイトをモバイルで利用する割合は全体の80%を占めるが、モバイルによる売上は20%にすぎないという。

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カテゴリー:ネットサービス

タグ:eコマース

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(翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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