Amazon Echoはベゾスの巻返し―そのうち音声認識のゼロクリック買い物端末に化ける?

今朝(米国時間11/6)、Amazonは突然、Echoという新しいデバイス.を発表した。Echoにはスピーカーに加えて「常時オン」のマイクが内蔵されており、周囲のユーザーの声を聞き取ってクラウドに転送する。天気予報を尋ねると教えてくれる。目覚ましをセットするよう命じることもできる。エイブラハム・リンカーンの業績について尋ねることもできる。

なんと! 円筒形のパーソナルアシスタントなのだ。だが、このデバイスの本質が何であるか―というより、やがて何になりそうかじっくり考えてみる必要がありそうだ。

Amazonのビジネスモデルは人々に明日の天気予報を教えることではない。

毎朝目覚ましを鳴らすことでもない。

歴代大統領の業績を教えることでもない。

Amazonのビジネスはものを売ることだ。したがってEchoの存在理由も究極的にはそこにあるに違いない。

冷蔵庫を開けたらピクルスが切れていた。オーケー。「アレクサ、ショッピングリストにピクルスを追加」と呼びかければよい(Echoに命令するときにはアレクサと呼びかけることになっている。このキーワードはユーザーがカスタマイズできるらしい)。 念のため断っておくが、まだEchoから直接ショッピングはできない。単にショッピングリストにアイテムを追加できるだけで、ユーザーはそのリストにもとづいて別途注文をしなければならない。

しかしEchoが少しでも普及のきざしを見せたらこの点はさっそく「改良」されるのではないか?

たとえば、「アレクサ、カンフーパンダ2を注文」と呼びかけるとさっそく注文がすんでしまう。

「アレクサ、極上のエジプト綿のシーツを注文」。ジャジャン! シーツが発送される。

ワンクリック購入がゼロクリック購入に進化するわけだ。家全体(すくなくともEchoのマイクが聞き取れる範囲)が衝動買いを狙ったスーパーマーケットのレジ横の買い足し台になるのだ。

アメリカのAmazon プライム会員はEchoを半額で購入できるが、それにはもっともな理由がある。プライム会員はたくさん注文する。Echoはプライム会員にさらにいっそうたくさん注文させる仕掛けなのだ。おそらくその目論見は成功するだろう。

邪悪な企みだろうか? そうとは言えない。AmazonはEchoを買えと強制しているわけではない。それに第一、私自身、Amazonプライムを文字通り毎日利用している始末だ。私の愚かな物欲がさらにたやすく満足されるようになり、一声かけるだけでアイテムが魔法のように戸口に現れるのは楽しいだろう。

しかしAmazonがなぜEchoを作ったか、その理由は覚えておくべきだ。Amazonは顧客がわざわざ訪問しなければならない「デスティーネション・サイト」であることにもはや満足していない。Amazonは世界に遍在することを狙っている。Amazonストアが現実空間のあらゆる隅々にまで行き渡り、じっと聞き耳をたてて人が口を開くのを待ち構えているという状態が目標なのだ。

多少のギミックがバンドルされているものの、その本質はショッピングチャンネルだという点でEchoはFire Phoneに似ている。

しかしジェフ・ベゾスはFire Phoneの失敗(今だに8300万ドル相当の在庫を抱え込んでいる)から一つ学んだようだ。人々はもっと買い物をさせるために作られた製品だと知ってしまうとそれに金を出したがらなくなる。だが、Echoの本質はFire Phoneと変わらないのだろうと思う。

今のところ、Echoのショッピング機能は欲しいものを音声でショッピングリストに追加できるだけだが…さて?

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


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TechCrunch Japan

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