App Storeで警官配備の表示アプリが禁止され出会い系も困難に、アップルがガイドライン改定

Apple(アップル)は今週、デベロッパーにApp Store Reviewガイドライン改訂版を示し、どのようなアプリが許可され、あるいは拒絶されるのか、またアプリの動作として許されることを詳しく記述して注意を促した。同社によれば、今回のガイドラインの変更は、レビュー、プッシュ通知、アップルでサインイン(Sign in with Apple)、データの収集とストレージ、モバイルデバイスの管理、その他に影響を与えるという。かなり目立つ変更点としては、アプリが広告を通知として表示できるようになったこと、出会い系や占いアプリに対してのルールが厳しくなったこと、ユーザーが警察による取り締まりを回避することを助けるようなアプリをAppleが拒絶できるようする新ルールが盛り込まれたことなど、いろいろある。

最後に挙げた、警官のいる場所を表示するアプリに対する変更は、驚くべきことに、プッシュ広告や出会い系アプリに対する変更ほど注目されていない。しかし、これは今回のルール変更の中で最も注視すべきものだろう。

App Store Reviewガイドラインの以前のバージョン(2020年1月のスナップショットを参照)には、「アプリは法執行機関によって公開された飲酒運転検問所のみを表示できる」と書かれていた。そして「アプリが「飲酒運転」や「速度の超過」を助長するようなことをしてはならない」と記されていた。当然の懸念だろう。

今回改訂されたルール(セクション1.4.4)では、これまでの文言に加えて、「ユーザーが法執行機関を回避するのを補助することによって、その種類を問わず、犯罪を犯したり、犯そうとするするために使われるような」アプリをアップルは拒絶すると明記されている。

思い出してみれば、昨年アップルは香港の民主主義推進派のデモ隊が警官を避けるために使用していたクラウドソーシングによるマッピングアプリ「HKmap」を拒絶するという決定を巡って、やっかいな状況に巻き込まれていた。当初、アプリは承認されたが、同社は中国の国営メディアから「暴徒による暴力行為を助長している」と批判されると、その1日後に承認が取り消した。

このアプリでは、ユーザーは警官のいる場所、催涙ガスが使われている場所、その他の抗議活動に関する詳細など、クラウドソーシングによって集めた情報を、定期的に地図上にプロットして共有できる。アップルは声明の中で、そのアプリが「警官を待ち伏せして標的にする」ために使われていることが判明したため、削除したと述べた。

セクション1.4.4の変更前(上)と変更後(下)

新しいApp Store Reviewガイドラインでは、この種のアプリに関するアップルの最終決定を明記している。事実上、ユーザーが法執行機関を回避することを支援するアプリを禁止した。ただし、ガイドラインにも記載されているように、警官を避けるのは必ずしも「犯罪を犯す」ためとは限らない。アムネスティ・インターナショナルは、香港の抗議活動中に警察に拘束された人々が、殴打されたり、拷問を受けるなど、警察による残虐行為があったことを文書で報告している。つまりHKmapには、ユーザーが自らの身の安全を確保するために、警官を回避することを可能にするという面もあったことになる。

このようにアップルのルールにはあいまいな部分があり、アプリを拒絶したり禁止したりすることを決定する前に、そのアプリがどのように使われるのか同社として精査する余地を残している。

今回のガイドラインに関して注目すべき他の変更としては、アプリのデベロッパーが、プッシュ通知でマーケティングメッセージ(つまり広告)を送信できるようにするという更新(セクション4.5.4)も含まれている。これまではこのような動作は禁止されていた。この変更は、すぐにユーザーから抗議を受けることになったが、最初に考えられたほど悪くないかもしれない。

これまで禁止されていたにもかかわらず、多くのアプリが、すでにユーザーにスパム広告を表示していたのは明らかだ。これからは、そうしたアプリは、ユーザーインターフェース内で顧客の同意を得る必要があり、アプリ内にオプトアウトのための仕組みを用意して、ユーザーがプッシュ通知による広告をオフにできるようにすることが求められる。この変更により、アプリ内購入が可能だったり、広告収入に依存しているアプリについて、オプトアウトの仕組みを備えているか、少なくともレビュー担当者はチェックしなければならなくなる。

「こうしたサービスを悪用すると、デベロッパーの権利が取り消される可能性があります」と、アップルは警告している。また別の変更では、「占い」や「出会い系」アプリが、「ユニークで高品質な」体験を提供していない場合、スパムとみなされるアプリのリストに追加された。それに関連するセクション(4.3)では、アップルが過飽和だと認識していたり、より厳格なレビューが必要だと考えているアプリのカテゴリについてデベロッパーに注意を促している。

また新しいガイドラインには、App Storeに投稿されたレビューにデベロッパーが対応する方法を指示するセクション(5.6.1)が含まれている。そこには「ユーザーのコメントに返信する際には、敬意を持って接すること」や、無関係な情報、個人情報、スパム、マーケティング情報を文面に含んではならないと念を押している。またこのセクションには、デベロッパーがユーザーのレビューを求める際には、アップルのAPIを使い、ほかのメカニズムを利用してはならないことも明記している。これによりユーザーは、iOSの設定からすべてのアプリについてApp Storeのレビューの要求をオフに切り替えることができる。この文言は以前のガイドラインにもあったものだが、セクション1.1.7から同5.6.1に移動した。

最後にアップルは、既存アプリのアップデートを含み、今後のすべてのアプリは、2020年4月30日以降、iOS 13のSDKを使用したものである必要があると、デベロッパーに念を押している。それ以降のアプリは、すべて「Appleでサインイン」のログイン/サインアップ機能をサポートする必要もある。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)