AppleがSierra正式公開―macOSは安定したプラットフォームになった

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今日(米国時間9/21)、macOS Sierraが正式に公開され、ダウンロードできるようになった。AppleがOSをメジャー・アップデートするたびにわれわれはレビューを書くことになっている。今年のアップデートでOS XはmacOSと呼び名が変わった。これ自体はコスメティックな変更にすぎないが、一歩下がってMacコンピュータのOSの全体像を観察するのにいい機会かもしれない。

デビューから15年以上、13回のメジャー・アップデートを経てMacは成熟したコンピューティング・プラットフォームとなった。これはすばらしいことだ。

アップデートが発表されるたびに大勢の優秀なライターがMacのOSの新機能や改良点を詳しく解説したレビュー公開する。そこでmacOS Sierraの技術的詳細はそういうレポートに任せておく。いずにせよ3ヶ月の公開ベータ・テストを経た後なのでSierraそのものについてはここで紹介しなけれならないような新しいニュースは特にない。

そんなわけでこの記事はmacOSのレビューとしてたいへん短いものになりそうだ。iOS 10は非常に大掛かりなアップデートだったが、macOS Sierraは、少なくともOS X El Capitanのユーザーにとっては、さほど大きな変更ではない。

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まず新機能を簡単に見ておこう。Siriが初めてMacにやってきた。実現するのが遅すぎたともいえるが、目新しい機能も含まれている。Macに話しかけることによって天気予報やNBAの試合結果、単語の翻訳、テキストの送信などができる。Wi-Fiを切ったり、HDDのファイルを検索したりもできる。ただしサードパーティーのアプリはMacのSiriを利用できない(この機能はiOS 10デバイスに限られる)。私はiPhoneでSiriを長いこと使ってきたのだが、Sirの機能を利用するためにMacに話しかける機会はあまり多くなさそうだ。私が慣れていないせいもあるだろうが、Macの大型スクリーンを前にしていれば音声入力はそれほど必須の機能ではないように思える。

写真アプリはiOS 10とほぼ同様の機能を得た。 撮影場所、日時を基準にした自動アルバム作成や従来よりはるかに強力な検索機能などだ。そのためMacで写真を眺めるのはすばらしい体験になった。メッセージではリンク先をプレビューしたり、Facebookの「いいね!」に似たtapbackと呼ばれる絵文字のリアクションを送ったりできる。残念ながら、メッセージではiOS 10で導入された便利な機能の多くはMacに移植されず、メッセージ用アプリをインストールしたりはできない。

他の新機能にはデスクトップと「書類」のフォルダのコンテンツがiCloudと自動的に同期し、ユーザーのあらゆるデバイスからアクセスできるようになること、これに関連してiCloudがストレージの最適化を助けることなどが含まれる。 その他ウェブ版Apple Pay、Safari内での子ウィンドウ(ピクチャー・イン・ピクチャー)の表示、iWorkでのリアルタイムの共同作業などの機能も追加された。

Apple WatchのユーザーはWatchとApple IDを用いて非常に便利な2段階認証を設定できる。Apple Watchを身に着けてMacに近づくと、自動的にアンロックが行われる。私は長年パスワードを入力してきたが、Apple Watchを使った認証は魔法のような体験だ。

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念のために断っておくが、 macOS SierraはすばらしいOSだ。これまでのMacになかった数多くの新機能を追加してくれる。しかしMac体験を根本的に一新するようなOSではない。AppleはMountain LionMaveriksのリリースでは「新機能が200件も!」と宣伝したが、今回はそのようなアップデートではない。MacのOSはもはやそういう時代ではない。

Appleは手を広げすぎたという批判がある。だからAppleにはmacOS、iOS、tvOS、watchOSのすべてを同時にメジャー・アップデートするような能力はないというわけだ。しかしAppleがこの10年で大きく成長したことを考えておく必要がある。開発者も圧倒的に増えている。つまり優先順位の問題ではない。

ある意味でMacは開発の観点からは「退屈な」プラットフォームになった。しかしユーザーからすれば悪いことではない。AppleはiOSに惜しみなく先進的、実験的テクノロジーを注ぎ込んでいる。iPadではノートパソコンに変わる次世代のコンピューティング・プラットフォームを築こうと試みている。残念ながらこの目標はまだ実現していない。すくなくとも一般ユーザーに関する限りはまだだ。

その一方で、MacのOSはもっとも安定したプラットフォームとなっている。私はこの夏いっぱい公開ベータ版のSierraをテストしてきた。私に関する限り、Sierraにはまったく何の問題もなかった。たしかに目を奪うような新機能には欠けているかもしれない。しかしSierraはMacを従来よりはるかに効率化した。私としてはそれで十分だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+