AppleのHomePodが棚でほこりをかぶらない理由

Appleは、安易なネーミングと型破りな売り込みとともに、そのスマートスピーカーをデビューさせたが、このデバイスを安易に軽視する傲慢な人々はいずれつけを払うことになる。Appleは、AmazonやGoogleとは異なり、人とコンピューターの対話手段として知性をもつ箱を売ることに将来性がないことを知っている。人々が欲しいのは製品でありテクノロジーではない。

HomePodの発表は、Appleにとってここ数年でもっともスタートアップ的な行動だ。この会社は、巨大なホームスピーカー市場と急成長のスマートスピーカー分野を同時に破壊しようとしている。ハードウェアを目的を達成するための手段ではなくチャンスとして扱うことで、Appleは結局棚でほこりをかぶることになるマニア向け製品以上のものを作った。

はっきり言って、Siriは遅れている。WWDC 2017以前から遅れていて、WWDC 2017の後もまだ遅れている。Appleはこの知的アシスタントを最先端水準にするべく機械学習の専門家を採用し、大型買収を実行して必要な技術レベルを確保しようとしている。HomePodをAIの有用性を見せるためのハードウェアではなく、オーディオソリューションとして宣伝するのも当然だ。しかし、最終的にはどちらでもよいことだ。

Appleが、プロダクトファースト、プラットフォームは二の次のアプローチを取るのにはわけがある。パーソナルアシスタントは収益化にはまだまだ時期が早すぎる ―― AmazonはAlexaを収入源ではないと何年も言い続けている。一方ホームスピーカー市場は明確に定義されている。私は市場規模の推定が大嫌いだが、ワイヤレス・オーディオ市場は500億ドルを優に超えると推定されている。

昨年のTechCrunch Disrupt New York 2016で、AmazonのEcho担当VP、Mike Georgeはこのデバイスの典型的な利用場面は何かと聞かれ、音楽だと答えた。これが興味深いのは、Echoのハードウェアで最大の差別化要素は遠方界マイクロホンだからだ。音声インターフェース内蔵で音楽を聞くのに使われることがいちばん多いハードウェア機器を設計する際、スピーカーを最優先項目にすることは理にかなっている。

Echoの最終的な価値提案は、遠くの声をスマホより高精度で検知することだ。ちなみにEchoはAlexaの音声認識や自然言語をすべて内部で処理している。

Appleは人工知能を、製品ポートフォリオ全体に正しく取り入れる必要がある。これは人工知能が不可欠な先進技術だからであり、GoogleやAmazonに対抗して昔ながらの音声命令に答えるためではない。そして、この会社がそれを成し遂げることを疑う理由はほとんどない。AppleはAIを使えずに取り残される哀れな8000億ドル企業ではない。機械学習はあらゆるApple製品に使われている ―― Spotlight検索、メール、iMessageなどリストは続く。

AppleがWWDCでHomePodを紹介したとき、ひとつ奇妙だったのは音質を強調したことだ。従来のAppleのやり方は使いやすさ重視だった ―― スピーカーがペアで動作することやiPhoneとのペアリングが簡単なこと。おそらくこれは349ドルという価格を正当化しようとするAppleの試みなのだろう。そう、Appleだから価格は高く、V2が出てV1が値下げされるまで買うのは大変だ ―― この戦略はまだ有効だ。

今回の発表は、ホーム用のAirPodsと考えるのが適切だ。将来、AirPodもHomePodもSiriとの高度な統合による恩恵を受けるだろう ―― しかしSiriのためにAirPodやMacBookやiPhoneを買う人はいない。HomePodを信じることは、ホームオーディオ市場を信じ、Appleのプロダクトファースト戦略の遂行能力を信じることを意味している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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