B Dash Camp 2019 SpringのPitch Arena優勝はAI搭載型クラウドIP電話サービスのRevcomm

独立系ベンチャーキャピタルのB Dash Venturesが主催するスタートアップの祭典「B Dash Camp」が5月23日、24日に北海道・札幌で開催された。その目玉企画の1つであるピッチイベント「Pitch Arena」(ピッチアリーナ)は2日間に渡って熱戦が繰り広げられた。

今回は12社が初日のファーストラウンドに参戦。通常は6社が2日目のファイナルラウンドに進むのだが、今回はファーストラウンドで同点となった企業が出たため、異例の7社選出となった。

ファイナルラウンドで審査員を務めたのは以下の5名で、激戦を勝ち抜いて見事優勝を飾ったのはAI搭載型クラウドIP電話サービス「MiiTel」(ミーテル)を開発・提供するRevcomm(レブコム)。準優勝にあたるスペシャルアワードは、農作物の自動収穫ロボットを開発し、RaaS(Robot as a Service)モデルで提供するinahoだった。

  • 江幡智広氏(mediba社長)
  • 木村新司氏(DasCapital代表)
  • 國光宏尚氏(gumi創業者/CEO)
  • 佐藤裕介氏(ヘイ代表取締役社長)
  • 玉川 憲氏(ソラコム代表取締役社長)

以下、優勝のRevcomm、準優勝のinahoを含めファイナルラウンドに登壇した各企業をピッチ順に紹介していこう。

モノグサ

2016年8月設立。知識習得のための問題作成から習得判定までを自動で行うサービスを開発・提供する。具体的には、解いて覚える記憶記憶アプリ「Monoxer」を提供している。このアプリは、解答を入力するだけでAIが誤答の選定も含めて作成してくれるのが特徴だ。

利用者の学習状況から知識の定着度を計測し、問題の出題頻度や難易度を自動で調整する機能も備える。現在は学習塾を中心に10社40万人ほどが利用しており、月間アクティブユーザーは3000人程度とのこと。個人には無料で提供、法人向けの利用料金は、スタンダードプランは無料、プレミアムプランは1ユーザーあたり年額3000円。プレミアムプランでは、進捗の確認や非公開スクールの作成が可能だ。

今後は、会計や法律、トークスクリプトなど学習塾以外の企業への導入も計画している。

Nature Innovation Group

2018年1月設立。傘のシェアリングサービス「アイカサ」を昨年12月に東京・渋谷エリアでスタート。1日70円で傘を借りられるサービスで、専用アプリを必要とせず、LINEでアイカサと友だちになることですぐに使えるのが特徴だ。アイカサスポットに設置されている施錠状態の傘に張られているQRコードをスマホで読み取ることで解錠・決済が可能。

LINE Payとも連携しており、クレジットカードとともに決済方法として選べる。直近では福岡市やLINE Fukuokaとの連携を発表。すでに福岡市内で1000本の傘のシェアリングを開始している。

inaho

2017年1月設立。画像処理とロボットアームの技術をベースに、アスパラやきゅうりといった農作物の自動収穫ロボットを開発。

従来は、農家が目視で収穫可能かどうかを判断する必要があった農作物を、機械学習によってAIが自動判断してロボットアームが収穫する。赤外線センサーを内蔵しているので、夜間作業も可能とのこと。

ロボットは売り切りではなく、RaaS(Robot as a Service)として提供。ロボットには重量を量るセンサーも備わっており、農家が収穫量した野菜の市場取引価格の15%を同社が手数料として徴収するというマネタイズモデルだ。15%という手数料は人件費に比べると安価とのこと。しかもinahoのロボットはRaaSモデルのため、稼働していない時期は手数料が発生しないのもポイント。センサーやカメラなどの性能が向上した場合はロボットのアップグレードなども追加費用なしで受けられる。農業従事者は季節雇用のケースも多く、不安定な労働条件を強いられる。そのためなかなか人が集まらず、収穫量はもちろん農家の収入も落ち込む。inahoは、そういった課題をロボットで打破する。

A1A

2018年6月設立。見積査定に必要なデータを一元管理することで、企業の購買担当者が最適な価格で購買できるようにする「RFQクラウド」と呼ばれるサービスを提供。

100人を超える現役購買担当者へのインタビューを通して抽出した「見積査定に必要な明細項目がそろっていない」「過去の類似品目の見積が残っていない」「データの保管場所が散在している」といった課題を解決する。購買担当者の業務負荷を軽減しつつ、将来のAI活用経営に向けた下地作りをサポートするとのこと。

実際の現場では、仕入れ先では部品点数が多く見積もりフォーマットも統一されていないため、同じ材料を使った同じ製品でも価格が異なるという問題が発生していた。購買側が統一フォーマットを用意して発注することで、原価低減やコストの最適化を進めていけるとしている。相見積もりや過去の見積もりとの参照も簡単になる。

ネクストイノベーション

2016年6月設立。女性向けの遠隔診療サービスを提供。生理などの悩み相談を受け付けるサービス「アレのスマルナ」では、診断後にピルの処方・発送までを実現。婦人科での診察に抵抗がある若年層を中心に、重い生理痛で学業や仕事に支障をきたすといった問題を解決する。

もちろん、避妊などの相談も可能だ。意図しない妊娠を避けるためのアフターピルを処方してもらうこともできる。同社によると、最近は副作用が少なく女性の身体に負担がかからないピルが主流だが、ピルにはいまだ昔の悪いイメージがあり日本ではなかなか普及しない。オンラインで気兼ねなく受診してピルを入手できるルートを確保することで、女性がより活躍できる社会を目指す。

RevComm(レブコム)

2017年7月設立。電話営業や顧客対応を可視化する音声解析AI搭載型クラウドIP電話サービス「MiiTel」(ミーテル)を提供。電話営業や電話での顧客対応の内容をAIがリアルタイムで解析することで、成約率を上げつつ、解約率と教育コストの低下を目指す。

顧客管理システムとの連携も可能で、顧客名をクリックするだけで簡単に発信できるほか、着信時に顧客情報を自動表示するいった機能もある。電話での会話内容は顧客情報に紐付けてクラウド上に自動録音されるため、すぐにアクセスできる。一部を抜粋して共有することも可能だ。

現在のコアターゲットは人材会社だが、今後は教育目的やコンプライアンス目的など多く業界で幅広く活用できるとしている。さらに世界進出時にまず狙う国はインドネシアとのこと。

AiLL

2016年10月設立。人とのコミュニケーションをAIがナビゲートとするマッチングサービスを提供。出会いから相手の気持ちの変化、自分の行動による結果などをAIがリアルタイムで分析できるのが特徴だ。

相手への好感度をAIが分析し、上がったのか下がったのかがすぐにわかるほか、相手をデートを誘うまでの会話をAIがアシストすることで効率よくコミュニケーションが取れる。「フラれて傷つくのが怖いので人に声をかけにくい」という不安をAIが払拭する。

現在は、大企業の20~30代の共働き志望の正社員独身者を対象に、企業の福利厚生サービスとして試験導入されている。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。