Bentley Motorsがテクノロジーとコーチビルドを融合させたContinental GT Speed 2022年モデルを発表、贅沢な時間の歪みを味わう

Bentley Motors(ベントレー・モーターズ)は、旧世界と現代を股にかけているようだ。100年以上にわたり、自動車のラグジュアリーとパフォーマンスの最先端を走るこの自動車メーカーは、長年、時代の変化に対応しつつも、クラシックなフィーリングのコーチビルディングには、常にその精神を宿している。

自動車製造におけるこのようなロマンティックな考え方は、現代のテクノロジーの進歩や高級志向の消費者の需要とはほとんど相いれないものかもしれない。

ベントレーが何かを心得ているとすれば、それはクラシカルな魅力にこだわり続けながら、時代にも歩調を合わせていることだろう。その最たる例が、Bentley Continental GT Speed(ベントレー・コンチネンタルGTスピード)2022年モデルだ。このパワフルな2ドアグランドツアラーは、現在、道を走るクルマの中でもひときは異彩を放っている。

基本概要

画像クレジット:Alex Kalogianni

ベントレー・コンチネンタルGTは、4ドアのBentley Continental Flying Spur(ベントレー・コンチネンタル・フライングスパー)セダンの2ドアバージョンにあたる。多くの要素を共有しているものの、GTは大きな車体を小ぶりにしただけではなく、デザインや性能など他の要素で差別化を図っている。

GTの中核となるのは、6.0リッターのツインターボW12エンジンだ。この巨大なパワーユニットは、内燃機関が縮小(あるいは消滅)に向かう時代にあっては、異端の存在といえる。GTスピードを特徴づけるこのシステムからは、標準のContinental GT W12(コンチネンタルGT W12)を24HP(18kW)上回る650HP(485kW)のパワーと、最大664lb・ft(900Nm)のトルクが生み出され、デュアルクラッチ式の8速オートマチックギアボックスを介して出力される。

そして、強化されたシャシーシステムにより、そのパワーは4つのホイールを介して余すところなく伝達される。

「当社のシャシーエンジニアは、ドライバーがドライブダイナミクスコントロールを使ってドライブモードを制御し、真の意味での乗り心地とハンドリングの両立を実現するために、信じられないほど多くのテクノロジーを駆使していた」とベントレー・モーターズのプロダクトコミュニケーション部長であるMike Sayer(マイク・セイヤー)氏は、TechCrunchに対して述べる。そして「シャシー剛性の変化を可能にするために、3チャンバー・エアサスペンションを採用し、3つの異なるサスペンション剛性を実現している。スポーツモードでは、各エアサスペンションの1つのチャンバーを利用して、高いバネ剛性を確保し、コンフォートモードでは、ソレノイドバルブが3つのチャンバーを低圧で作動させ、ソフトなサスペンションを実現する。そしてさらに、48V電動アンチロールコントロールであるBentley Dynamic Ride(ベントレー・ダイナミック・ライド)が加わる」と同氏は説明する。

今回のGTスピードでは、電子制御リアディファレンシャルと後輪操舵をはじめとするいくつかの新しいテクノロジーがGTモデルとして初めて採用された。

電子制御デフは、スポーティな運転をする際、ターンイン時のバランスとコントロールを確保するために、リアアングルにトルクを配分するものだ。後輪操舵は、最初にフルサイズのラグジュアリー4ドアであるフライングスパーに採用され、回転半径を小さくするとともに、高速走行時の安定性を高めている。2ドアのGTスピードでは、セダンよりもはるかに積極的に適用され、シャープな旋回性に寄与している。

そうこういいながら、このGTは、総重量が5000ポンド(2273キログラム)を超えるにもかかわらず、最高時速208マイル(時速335キロメートル)で走行し、わずか3.5秒で時速60マイル(時速約97キロメートル)に到達するロケットスタートを実現している。これは、クルーズ船のような豪華な装備を持たないクルマでも達成するのが難しいことだ。

テクノロジーを散りばめるベントレー

画像クレジット:Alex Kalogianni

コンチネンタルGTスピードの内側には、ベントレーのクルマの特徴である丹念に作り込まれたインテリアが備わっている。

このクルマの組み立ては、自動化された作業もあるが、かなりの部分が手作業で行われており、ほぼすべての要素に熟練した職人の注意が払われている。インテリアには、プレミアムレザーや、バールウォールナットから自然に倒れた希少なレッドウッドまで、さまざまな種類の木製素材が使用されている。

シートやハンドルにはすべて手縫いのステッチが施され、メタルスイッチ類はダイヤモンドパターンのローレット加工が重厚さを醸し出している。

セイヤー氏は「主要なロータリーノブに使用されているローレット加工は、18カ月かけて開発され、ローレットのカット面の角度を正確に表現するためにアルゴリズムを作成した」と語り、細部にまでこだわっていることを強調する。緻密に作りこまれた壮麗なインテリアは、高度な最新テクノロジーの基で生み出され、しかもそれが見事に融合しているのだ。

画像クレジット:Alex Kalogianni

ダッシュボードの中央には12.3インチのタッチスクリーンがあり、最新の高級車を購入する人の期待に違わぬ機能を備えている。タッチスクリーンは、ナビゲーションやエンターテインメントを提供するとともに、いくつかの車両機能のインターフェイスでもある。ドライバーは、スロットルとステアリングの設定を好みに応じてカスタマイズしたり、クリアランスを取るためにサスペンションを上げたり、必要なときには詳細なドライバーズマニュアルにアクセスしたりすることができる。

また、タッチスクリーンに表示される情報の多くを反映するようにカスタマイズできる完全デジタル式のメータークラスターと組み合わせて使用することもできる。さらに、安全な夜間走行のために前方をハイライト表示する熱感知タイプのナイトビジョンのオプションも用意されている。これには歩行者認識機能も組み込まれており、夜間に人を検知した場合には、赤いボックスで強調表示される。

高解像度のスクリーンに配置されている特徴的なグラフィックは、職人技を感じさせる。

セイヤー氏は「メーター類のグラフィックは、物理的な部品と同じように細部にまでこだわってデザインした。それ以上に、複数のタッチスクリーンに頼らず、物理的な手触りのあるボタンやロータリーノブを残すことも、当社の理念に沿ったものだ」という。

それでも先進すぎるデザインが趣味に合わない場合は、スクリーンはパネル内に収納され、代わりに、時計、コンパス、温度計の3つのアナログメーターに置き換えることもできる。ちょっとした車内ガジェットシアターのようかもしれない。しかし、別の見方をすれば、ある意味で車内の将来性を確保しているともいえるだろう。美しさという点では、ディスプレイよりも車内の他の部分の方がはるかに古びるだろうし、それを目立たないように収納する方法は、このラグジュアリーグランドツアラーの持つ包容力ならではのものだ。

ユーザーエクスペリエンス

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GTスピードのハンドルを握ると、最初はきらびやかなクロームやポリッシュされた化粧板に目を奪われるが、エンジンをかけた瞬間からドライバーが中心に据えられていることがすぐにわかる。

ヘッドアップディスプレイや交通標識認識などのアシスト機能が状況の認識を助け、長距離走行時にはレーンキープアシストやアダプティブクルーズコントロールが負担を軽減してくれる。便利な機能だが、GTスピードが最も魅力を発揮するのはフル稼働したときだ。

W12エンジンは、その力強く堂々としたエキゾーストノートを後ろから鳴り響かせる。アクセルを踏み込むと、まるでGTスピードの系譜に連なる単発の戦闘機で加速しているような感覚と音に包まれる。しかし、古風さを思わせるのはここまでだ。それ以外の部分では古さとは程遠い。パワーの伝達はスムーズかつ力強く、加速の頭打ちを感じるためには制限のない高速道路を走る必要がある。

その点では、GTスピードはフライングスパーと同様に、蒸気機関車のような重厚な接地感がある。そのため、急なカーブを曲がるときには大きな戸惑いが生じる。しかし、信頼と勇気を持って走れば、GTスピードは驚くほどダイナミックな動きを見せる。

風の強い田舎道では、このクルマの良さが最大限に発揮される。クルマの大きさと重さはやはり明白だが、アクティブテクノロジーのおかげで、ベントレーは自信を持ってコーナーを回ることができる。しかし、状況の厳しさが増すと楽しさは萎んでいく。物理法則に逆らうようなエンジニアリングを駆使しても、クルマの重さをごまかすことはできない。そのような時には、もっと小さくて小回りの効くものに乗り換えようと心に決めることになる。

スポーツモードでもコンフォートモードでも、GTのデュアルクラッチ・トランスミッションのギアチェンジの速さはほとんどシームレスであり、アクティブなドライバーには欲しいだけのパワーを、クルージング中のドライバーにはより穏やかな感覚を与えてくれる。高速道路でも、街乗りでも、GTスピードは一切の妥協を感じさせず、27万4000ドル(約3150万円)を超える価格に見合う価値を披露してくれる。少なくとも、そう願いたいものだ。

ライバルたち

スポーティなラグジュアリークーペが不足しているからという訳ではなく、同じミッションをいかにユニークに遂行するかという点で、競合他社から見ると、GTスピードは独特の存在だ。このセグメントの大手であるBMW(ビー・エム・ダブリュー)やMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)は、ベントレーが醸し出す豪華さや高級感には遠く及ばず、同じようにダイナミックさでもやはり劣ってしまう。ハンドリングとパワーの面では、AMG S63 Coupe(メルセデスAMG S63クーペ)が17万3100ドル(約1990万円)からと比較的安い価格で近づいてきているが、同じ重量クラスとしては、コンチネンタルGTスピードの方が明らかに優れている。

本当の意味でのライバルといえば、そう遠くない従兄弟にあたるRolls-Royce Wraith(ロールス・ロイス・レイス)が最も近い存在だろう。レイスは、同じような高級車の血統と独自性に加えて、624HP(465kW)の6.6リッターV12という巨大なパワーユニットを誇る。この2ドアのグランドツアラーは、30万ドル(約3450万円)という同じく目が眩むような価格設定であり、加速や走行の滑らかさの面でGTスピードと同様の神業を成し遂げている。

何事にもいえることだが、ベントレーがこの新旧の融合をどのように続けていくのか、将来は不透明だ。過去の例からわかるように、ベントレーは先を見越した計画を立てている。

「まず、製品群をハイブリッド化する。すでにBentayga(ベンテイガ)とフライングスパーのハイブリッド車を発売しており、コンチネンタル・ファミリーもそれに続く予定だ。その後、2025年に最初のBEV(フルバッテリー電気自動車)を発売し、2030年までにベントレーを電気自動車のみのブランドにすることを目指す」とセイヤー氏は述べる。

今のところ、ベントレー・コンチネンタルGTスピードがある。このほとんど時代錯誤なパワーに溢れた高級車は、12気筒エンジンのビートを響かせて走りながら、このセグメントの標準を確立している。それは、変化の風にも柔軟に対応しながら、自分たちが最も得意とすることを粘り強く貫き通す、ベントレーの集大成だ。

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(文:Alex Kalogiannis、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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