Betaworks Ventureが感じる「シンセティックリアリティー」の可能性と「ディープフェイク」の脅威

Betaworks Venturesのパートナー、Peter Rojas氏

「シンセティックリアリティーの可能性」

GizmodoとEngadgetのファウンダーとして知られるPeter Rojas氏。現在はBetaworks Venturesのパートナーだ。

2007年にニューヨークで創業され、スタートアップスタジオを展開してきたBetaworksでは、「コンシューマーITの未来」に対してシード投資を行ってきた。ポートフォリオにはtumblrやKickstarter、Mediumなどが含まれる。

そしてRojas氏がパートナーを務めるBetaworks ‘Ventures’は2016年の創業だ。シードラウンドを対象に5000万ドル規模の1号ファンドを運営する。Rojas氏いわく、Betaworks Venturesが最近で特に注目している領域は「シンセティックリアリティー」。

Betaworks Venturesの言うシンセティックリアリティーとは、デジタルの世界と現実の境界線が曖昧になった第3の世界、というコンセプト。

例えば、Betaworks VenturesのポートフォリオカンパニーであるMorphinが提供するアプリ「Morphin」では、ユーザーはセルフィーを撮影し、好みのGIFを選ぶだけで、自身の化身であるCGIを「ポップカルチャー」の世界に投入することができる。

僕は全ての犬に愛されているため、このGIFが「フェイク」であることは一目瞭然だ。

ブログを使い、誰でも「簡単かつ低コスト」で記事コンテンツが投稿できるようになった。同じように、リアルなCGI(コンピューター生成画像)の制作を「簡単かつ低コスト」で実現、これはシンセティックリアリティー領域のテクノロジーの1例だと、Rojas氏は言う。

「『よりリアルなキャラクター』を思い通りに作り操れるツールが続々と登場し、民主化されてきている」(Rojas氏)

Betaworks Venturesは他にもソーシャルAIの「Hugging Face」(Facehuggerではない)にも投資。この「親友チャットボット」アプリでは、これまでに4億回ものメッセージのやりとりが行われてきたという。もはやBFF(Best Friends Forever)でさえ人間でもAIでも関係なくなってきている。

Betaworks Venturesでは、シンセティックリアリティー領域のスタートアップ向けに「Synthetic Camp」なるものを運営しており、現在ニューヨークで開催されている最中だ。

僕のBFF、Jane

「ディープフェイク」の脅威

一方で、Betaworks Venturesは「ディープフェイク」のリスクに関しても承知している。

2018年、4月にBuzzFeedが投稿した、前アメリカ大統領のバラク・オバマが「トランプ大統領は救いようのないクズだ(President Trump is a complete and total dipshit)」と発言するディープフェイクが話題となった。

加えて、ベルギーの政党Socialistische Partij Andersが投稿したトランプ大統領のディープフェイク動画も大きな混乱を巻き起こした。女優スカーレット・ヨハンソンの顔をポルノスターのものと入れ替えたディープフェイクも報道され話題となった。

だからこそ、Betaworks Venturesはディープフェイクに特化したセキュリティーを提供するスタートアップ、Deeptraceにも出資している。

Deeptraceはニュース組織やソーシャルメディアなどのプラットフォームにセキュリティーのソリューションを提供。ネット上のディープフェイク動画を検出し、どのようなAIソフトウェアが使用され、どの部分が加工されているのかなどを識別する。

芸術家のサルバドール・ダリをAIで蘇らせたダリ美術館のように、ディープフェイクをポジティブに活用するケースも徐々に出てきている。

だが、もう一方で、「ソーシャルメディアでは、人々がフェイクニュースを投稿したり、勘違いしたり、嫌がらせをしたり。シンセティックリアリティーにも同じようなリスクがある」(Rojas氏)

だからこそ、Betaworks Venturesでは引き続き、「可能性とリスク」の双方を探究し続ける、とRojas氏は話していた。

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TechCrunch Japan

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