BitTorrentの分散P2PブラウザMaelstromがベータを開始

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P2Pによるファイル配布やコミュニケーションのためのツールを作っているBitTorrentが今日(米国時間4/10)、同社ならではの、分散P2PアーキテクチャによるWebブラウザMaelstromのベータテストを開始する。

アルファテストを開始したのが昨年の12月だったが、BitTorrentによると、そのときからすでに大きな反響があった。1万名あまりのデベロッパと3500名のパブリッシャーがテストに参加し、このChromiumのフォークを試した。そのころのコードをMaelstromのGitHubページで見られる。

ベータになったことによって、Maelstromの初期の姿をより多くの人びとが試用できるようになり、torrentをベースとするブラウザではコンテンツの配布がどうなるのかを、実際に体験できる。

しかしあくまでも“初期の…”だから、Windowsのみで、ベータ用のページの最終的な形もまだよく分からない。同社によると、“アルファは数千人ぐらいの小規模なテストだっが、われわれにとっては大いに有益だった”そうだ。上図が、そのときの開始ページだ。“ベータのページも、これと同じようなものになるだろう。ChromiumのフォークだからMaelstrom以外のふつうのページは、通常のブラウザと同じように表示される”、という。上のページでは、これからMaelstromでダウンロードするtorrentを8人のピアが支えている。8人ではなく800人だったら、ページにはそう表示される。

BitTorrentの初期のサービスでは有料のコンテンツを不法に共有するユーザがいたりして、悪いイメージが広まってしまった。しかし最近の同社は心機一転、コンテンツの配布を合法的に行うためのクリエイティブな方法を提供している。P2P方式にはクライアント/サーバ方式にない柔軟性とスピードがある、と同社は主張する。

また、BitTorrentには、時流に乗ったという側面もある。 NSAのような政府機関がインターネットのさまざまな人気サービスのサーバから、国防の名のもとに個人情報を盗みまくったことがバレて以来、覗き見されたくなかったらP2Pがいいよ、と世の中に訴求できる環境が醸成された。全員が平等にピアであるP2P(peer to peer)システムでは、サーバがどこにもないから、アクセスして情報を読み取るためのストレージもない。

BitTorrentの理念が、時代というバットの芯に当たった。“BitTorrentを作ったときから、それがわれわれの、インターネットのビジョンだった”、とCEOのEric Klinkerが、今回のベータに関するブログ記事に書いている。“インターネットを真に中立的でコンテンツフレンドリで‘持続可能な’ネットワークとして維持するために必要なイノベーションがそれだ”、と。

BitTorrentは同社のP2Pベースのプロジェクト(Bundleなど、後述)で、著名なコンテンツクリエイターたちとも協働している。先週はそこに、BBCのDr Whoが加わった。Maelstromに関しても、その普及のために著名人の協力を求めていくだろう。

そして同社は、収益化の方法も考え始めている。同社によると、“収益化については探究すべきオプションがいくつかある。OperaやFirefoxのようなやり方もありえるだろう。Bundle*と連携すれば、もっといろいろな収益化の機会を作れる”、ということだ。〔*: BitTorrent Bundle, 日本語参考記事。 〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

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TechCrunch Japan

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