BitTorrentの発明者が(ビットコインとは違って)環境に優しい仮想通貨Chiaを発表

ビットコインの1トランザクションには、今やアメリカの家庭の1週間分の電力が浪費されている。伝説のプログラマー、ブラム・コーエンが狙うのは、それをなんとかすることだ。そして、彼が広く用いられているBitTorrentピアツーピアファイル転送プロトコルの発明者であることを思えば、その動きは真剣に受け止める必要があるだろう。

コーエンは、Chia Networkという新しい会社を立ち上げたばかりだ。ビットコインの採用する電力浪費型のproofs of work方式ではなく、proofs of timeとproofs of storageという手法に基く仮想通貨を始めるためだ。本質的に、Chiaはハードドライブ上の安価で豊富な未使用のストレージスペースを利用して、ブロックチェーンを検証する。

「より良いビットコインを作り、中央集権化の問題を解決することが目標なんだ」とコーエンは私に語った。彼がビットコインで問題だと思っている2つの点は、地球環境への影響と、安価な電力にアクセスできる少数のマイナー(採掘者)たちが持つ巨大な影響力から生じる、不安定性である。

Chiaはこの両者を解決することを目指している。

BITCOINCHIAネットワークの動作原理
・全ての履歴とペンディング中のトランザクションの全てを保存しているノードたちが、ネットワーク上にある。それらのノードは自分の知る中で最も重い1つの3つの履歴を自分のピアに送信する。
・新しいブロックが生まれたときには、それは素早く全てのノードに送られて、マイナーたちファーマーたちは、それを使って計算を始める。1人のマイナーがファーマーが新しいブロックを発見したら、それをネットワークにパブリッシュする。ファーマーたちは彼らのもつ最高のproof of spaceを発見する。3つの最高のproofs of spaceが素早く全てのネットワークに送り出され、proofs of timeサーバーたちが、それらを用いて計算を始める。1つのproof of timeサーバーがproof of spaceのためのproof of timeを完了すると、それら全てを完全に検証済のブロックとしてネットワーク上にパブリッシュする。

ビットコインはブロックチェーンを検証するためにproofs of workという手法を用いる。これは、本物と同様の計算を行って、ニセのブロックチェーンを作成するのは非現実的なほど高価につくからだ。しかし、それは時間が経つにつれて、低コストの電力が手に入る場所や、マイニング装置を自然に冷やせる場所でビットコインをマイニングする者たちに、大きな優位性を与えることになった。

Chiaはその代わりに、人びとが多くの場合既に持っていて、追加費用なしで使うことができる、ファイルストレージを用いたproofs of spaceを利用する。そしてこれをproofs of timeと組み合わせる(こうすることで、proofs of spaceが受けやすい様々な攻撃を無効にするのだ)。

「私はこのアイデアを思いついた初めての人間ではないけどね」とコーエンは言う。しかし実際に実装するには彼が専門とするような先進的コンピューターサイエンスが必要とされるのだ。

2000年代初頭にtorrentの基礎を発明し、ValveのSteam(ゲームプラットフォーム)を暫く開発したあと、コーエンはライブビデオ配信のための新しいピアツーピアプロトコルの本格的開発のために、BitTorrentを設立した。しかし、ビジネス面での管理の失敗が会社を崩壊させた 。現在同社は非常に弱りきった状態であり、コーエンは「会社は私を毎日必要とはしない」と言うようになった。そこで、彼はまだ取締役会の一員ではあるものの、8月の初めに同社を去り、Chia Networkを始めたのだ。

Chia Networkの共同創業者ブラム・コーエン

コーエンは、ビットコインの初期からの交換所であるTradehillのCOOであるRyan Singerとチームを組み、Chiaの立ち上げと雇用のためのシードラウンドを行った。コーエンは、シードでの調達金額を明かさなかったが、笑いながら「現在いくら必要と言うべきかは良くわからないね、でもまあとてもホットなラウンドだったよ」と語った。目標は、2018年の第2四半期までにChiaの早期販売を開始して、2018年末までには仮想通貨として完全に立ち上げることだ。

コーエンは素晴らしい技術者だが、ビットコインからChiaへの切り替えを人びとに納得させるためには、それ以上のものが必要だ。彼は私にChiaでは「新規まき直しをするのだから、法的な位置付けをよりスマートなものにして、かつ膨大な技術的修正を行なう」計画だと語った。

これがどういうものであるかを推測するのは時期尚早だが、少なくとも、ただ不平を言うのではなく、仮想通貨の生態系への影響に対してアプローチしようとしている者が居るということは言える。コーエンは興奮しているように見えた。「これは技術的にとても野心的なことで、やるべきことがたくさんあるんだ。既に十分な資金は調達したし、人も雇った。後は実際にやるるだけさ」。

[画像クレジット:Michael O’Donnell]

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(翻訳:Sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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