Blendleはドイツメディアと提携し、記事ごとに購入できるジャーナリズムのためのマーケットプレイスを拡張

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Blendleはオランダのスタートアップで、ジャーナリズムをNetflix形式のマーケットプレイスにしようとしている。Blendleはドイツの主要な発行元と契約し、ユーザーが単一の記事から購入できるBlendleのマーケットプレイスに加わった。本日からドイツ国内の主要な新聞と雑誌は、Blendleのウェブサイトから個別記事の販売を開始すると発表した。これにはドイツで有名な媒体であるBild、Die Welt、National、Der Spiegel、Die Zeitなどが含まれている。

Blendleは2014年4月にオランダでサービスをローンチし、昨年の10月の時点では13万人だった登録ユーザー数は、現在30万人以上にまで急伸している。発行元に関しては、これまで14の出版社が発行する、18の日刊紙と15の週刊誌と契約を結んだ。現在はオランダとドイツの2カ国でサービスを展開しているが、次はアメリカの英語メディアをターゲットとしている。

Blendleのマーケットプレイスは、ユーザーが個別記事ごとに支払うマイクロペイメント方式だ。記事辺りの価格はそれぞれの出版社が決定している。ユーザーは自分のアカウントに金額を選んで(10ユーロや20ユーロといった具合に)入金し、後はその分好きなように記事を購入することができる。どの出版社のどの新聞や雑誌からでも読みたい記事を購入することができるということだ。またこのサイトは、平均20ユーロセントの価格に記事が相当しないと感じた場合は、返金にも応じている。

このスタートアップは、昨年の秋に行ったシリーズAの資金調達ラウンドで、340万ドルを調達した。ヨーロッパの大手出版社Axel Springerのデジタル投資部門と、New York Times Companyがラウンドに参加した。Axel Springerは、Blendleが契約したばかりのドイツの出版物のいくつかを手がけているのは、当然のことだろう。最適な投資家を選択したことで、戦略的な価値がBlendleにもたらされている。3月には、New York Times、The Wall Street Journal とWashington Postと契約を締結した。しかし今の所、アメリカのコンテンツは、彼らが運営しているオランダ市場のみで展開する予定だ。

Blendleの事業モデルは、英語圏のメディア市場で検証されていないが、アメリカでのローンチを押し進めるなら、彼らは直にそれに取り組むことになる。英語圏では、大量に存在する無料のオンラインコンテンツと競合するのは避けられないだろう。彼らがどの程度収益をあげられるかに注目したい。

彼らのモデルがアメリカでどのようなパフォーマンスを期待できるかと尋ねたところ、共同ファウンダーのAlexander Klöppingは、発行元はこれまでペイウォール方式(有料登録で記事を閲覧できる)を利用してきたことは、より手軽に読者に品質の高いコンテンツを提供できるマーケットプレイスアプローチを後押しすることだと話した。

「発行元(WSJ、FT、Time Magazineなど)は、さらに多くのコンテンツをペイウォールの分厚い高額な壁で囲っています。Blendleは全ての発行元にアクセスし、ジャーナリズムに触れる、決済機能の付いた定期券となります。多くの発行元がマーケットプレイスに参加することで、始めて意味を成します」とTechCrunchの取材にそう話した。

「記事を発見できることも重要です。Apple Newsと似ているのかもしれませんが、Blendleも記事をレコメンドします。アルゴリズムと人の手により、記事を選別しています。編集者を雇い、ユーザーが読みたいと思うような新聞や雑誌の記事が発見されるようにしています。優れたコンテンツを簡単に購入できることとコンテンツが見つけられること。この2つの組み合わせで、Blendleはとてもうまく行っています。アメリカ市場でも成功できると考えています」。

「発行元にとってマイクロペイメントは、既存の広告収入に加わる収入源になると考えています。また、ユーザーにサブスクリプションを促す動線としても機能します(ユーザーはBlendleからクリック一つで特定の雑誌や新聞に有料登録し、無制限にその媒体の記事を読むことができる)」と続けた。

Blendleの記事に対する返金の割合は、少し上昇していたが、それはさほど驚くことでもないだろう。昨年の10月、彼らと話をした際、Klöppingは返金率は3%程度だと話していた。現在は少し上がり、平均で5%辺りだという。そして、特定の種類のメディアは明らかに他のメディアより返金の問い合わせが多いと話した。Blendleが「ゴシップ雑誌」と称す出版物は、「質の高い新聞」より返金率が高いとしたが、どの程度高いかは明示しなかった。

これがBlendleの最も興味深い要素だろう。マーケットプレイスモデルが、コンテンツのあり方を決めることになるかもしれないからだ。クリック数を追求する品質の低いクリックベイト記事にペナルティーを課し、「良質」な報道記事を推奨するなら、多くの市場で問題となっている「底辺への競争」をする広告収益に支えられたメディアコンテンツモデルに対する、実現可能なソリューションとなるかもしれない。(このスタートアップが編集者を雇って、コンテンツの発見を促す仕組みなのも興味深いが。)

「私たちのシステムは、クリックベイト記事ではなく、良質な記事の執筆を促します」とBlendleは説明する。「現在のインターネットは、クリック量産記事を推奨しています。クリックだけを追い求めれば、クリックは得られます。人の役には立っていませんが、クリックを得ることはできるのです。私たちのシステムでは、ユーザーは料金の支払いを拒むことができるので、そのようなクリックベイト記事にペナルティーを与えられる唯一のシステムです。そうすることで、良質なジャーナリズムを推奨することができます」。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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