Blue Visionから複数ユーザーが共有するARプラットフォームのSDK――Google他から1450万ドルを調達

今日(米国時間3/15)、ロンドンを本拠とするAR(拡張現実)のスタートアップ、Blue Vision Labsはステルス状態を抜け出し 世界で初となるコラボレーションAIを実現する新しいプラットフォームを発表した。共同ファウンダーはオックスフォードとインペリアル・カレッジのコンピュータービジョンの専門家だ。

今回発表されたAPIとSDKを通じてBlue Visionのテクノロジーを用いると、複数のユーザーが同一のバーチャル空間にオブジェクトを表示させ、対話的に操作できるようになる。特にバーチャル・オブジェクトを表示するための空間認識の精度はこれまでのARに比べて格段にアップしているという。

こうしたテクノロジーが有効なユースケースはマルチプレイヤーゲーム、複雑な経路の案内、教育、ソーシャルメディアなど広い範囲にわたる。

共同ファウンダー、CEOのPeter Ondruskaは、私の取材に答えて、「Blue Visionのテクノロジーが特に優れているのは人間その他の動くオブジェクトをピンポイントでバーチャル空間に定位できる点だ。 対象の現実の位置を数センチの誤差で同定できる。GPSデータを用いた他のシステムと比べて桁違いに正確性が高い。たとえばライドシェアリングのように2人のユーザーが出会う必要がある場合、互いの位置を正確に認識できることになる」と述べた。なるほど、Uberを呼んだのはいいが、ドライバーが顧客の位置を把握できず時間を空費してしまったという経験をした読者も多いだろう。

Blue Visionは過去2年表立った発表をせず、いわゆるステルスモードでプロダクトの開発に専念していた。Ondruska、Lukas Platinsky、Hugo Grimmettに連続起業家のAndrej Pancik、Bryan Baumもチームに加わっている。共同ファウンダーたちは2011年からこのアイデアの実現に取り組んでいたが、このほどいよいよ実地で作動するプロダクトが完成した。

SDKの発表と同時に、Blue Visionは総額1700万ドルの資金を調達したことを発表した。このうち1450万ドルは新規のシリーズAラウンドで、Googleの親会社、Alphabetの投資会社GVがリードした。これ以前に調達した250万ドルのシード資金はAccel、Horizons Ventures、SV Angel 他が出資した。これらの投資家はすべてシリーズAにも参加している。

Ondruskaによれば、当面SDKの利用は無料だ。

この2、3年、VR/ARに対する関心が急速に高まっており、GoogleやAppleのような大企業からもSDKや作成したアプリを作動させるハードウェアが各種リリースされている。有力メディア企業はこうしたプラットフォーム向けにコンテンツを製作するための多額の投資をしており、投資家はソフト、ハードのさまざまなスタートアップに何百万ドルも注ぎ込んでいる。

しかしこうした試みの一部は明らかに大胆なムーンショットだという印象を受ける。Magic Leapは長期にわたって巨額の投資を受けながらこれまで何のプロダクトも生み出していない。一方でAppleのARKitやGoogleのARCoreはすでに利用可能な堅実なプロダクトだが、その影響は限定的だ。

VRの世界では、多数ユーザーの協調動作を可能にすべく努力が開始されている。たとえばFacebookのOculus事業部が開発しているRoomsでは複数のユーザーが同一の拡張空間を体験できる。

しかしBlue VisionのアプローチはOculusなどと異なり、専用ハードウェアを必要としない。誰もが持っているスマートフォンと内臓カメラだけで複数ユーザーによる協調的AR体験を実現する。Blue Visionはユーザーが利用し始める上でのハードルを下げるために画期的なARのバックエンドを開発したとしている。これに成功しているのであれば、このスタートアップのテクノロジーの利用範囲と影響は注目すべきものとなるだろう。

今回のラウンドを機に取締役に就任したAlphabetのGVのTom Hulmeは「(Blue Visionは)特定の専用ハードウェアなしで作動できるプラットフォームを開発した。これまで(正確な位置定位を行うには)複数のレンズを必要としたが、同社のテクノロジーは通常のスマートフォンのカメラで同様の結果を得られる」と述べた。

こうした効果を達成できた秘密の一部はデベロッパーがきわめて精密な現実空間のマップを利用できるようにした点にある。デベロッパーはこのマップをカンバスとしてその上に各種のオブジェクトが表示し、協調的なARを構築できる。

Ondruskaはインタビューに答えて、「われわれはまずロンドン、サンフランシスコ、ニューヨークの中心部の精密なマップ製作を行った。将来はカバー範囲をさらに拡大していく。同時にユーザーはそうしたマップが存在しない場所でもBlue Visionのアプリを作動させることで随時ロケーションを追加していくことが可能だ。この場合は精密マップが存在するエリアに比べて精度は下がる。特に動きが速い環境ではそうだ。こうした場合、正確な位置定位を行うためには多数の精密な基準点を知ることが必要になる」と述べた。

ある推計では、ARベースのアプリの市場は2022年までに850億ドルから900億ドルに、VRは100億ドルから150億ドルになるという。

これは現状から見れば飛躍的拡大だ。2018年現在でのARベースのプロダクトにおける最大のヒットはポケモンGOだろう。OndruskaはAR市場の拡大が進まないのはシームレスかつ快適なAR体験を可能にするテクノロジーがまだ欠けているためだと信じている。こうした「欠ている部分」を実現するのがBlue Visionの目標だ。

「ARプロダクトがマスマーケットの主流になっていない原因の一つは現在のテクノロジーだ。シングル・ユーザーしかサポートしないARは応用が限られたものになる。われわれはこれを次の段階に進め、複数の人々が同一AR空間を見られるようにする。こうしたこと実現できるようなバックエンドがこれまで存在しなかった。Blue Visionはこの欠けたピースを埋め、誰もが毎日利用するような重要なARテクノロジーを実現し、新たなユースケースを切り開いていきたい」とOndruskaは述べた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

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TechCrunch Japan

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