BMWと米電気会社がEV充電スマート化のパイロット事業を拡充

BMW Group(ビーエムダブリューグループ)とカリフォルニアの公益事業会社Pacific Gas & Electric(パシフィックガス&エレクトリック)は、電気自動車(EV)が送電網の再生可能エネルギーの統合をいかにサポートできるかをテストして学習するためのパイロット事業を次の段階に進める。

第3段階に入るChargeForwardプログラムは、BMWのEVあるいはプラグインハイブリッドEVに乗っているPG&E顧客向けに展開されている。電気需要が低く再生可能エネルギーの供給が豊富なときに「スマートに充電できる」よう、約3000人のドライバーが任意でサインアップできる。ドライバーはプログラムに参加することで、サインアップ時の150ドル(約1万6000円)と年250ドル(約2万7000円)のインセンティブをもらえる。

このプログラムは、電気会社と自動車メーカーの間で展開されるこれまでで最も長期の提携の1つだ。第1段階と第2段階の参加者はそれぞれ100人と400人で、最新の第3段階では規模をかなり拡大している。内燃機関エンジン販売の漸減に備えている2つの産業にとってこれは賢明な同盟だ。電気会社にとって、太陽光や風力などの再生可能エネルギーが徐々に増えている送電網に対する顧客需要の大幅増のプランニングを意味する。

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「誰かが土曜日の午前9時に家でクルマにプラグをつなぎ、その日の午後4時にクルマで出発すると仮定しましょう」とChargeForwardを監督しているBMWのエネルギーサービスマネジャーAdam Langton(アダム・ラングトン)氏は話し、次のように続けた。「ChargeForwardのソフトウェアシステムは車両と通信し、車両のバッテリーが半分以上充電されていて、フル充電するのに2時間必要だと判断します。そしてシステムはその人の家の電気料金のレート、再生可能エネルギーの可用性、周辺の送電網の混雑を評価します。その日、送電網の混雑はなく、太陽光エネルギーが午後に豊富になるとします。するとChargeForwardシステムは車両に午後1時に充電を開始して、午後3時までに充電を完了するよう指示します。そして出発前にバッテリーはフル充電されます」。

電力需要は、太陽光エネルギーのリソースがオフラインになるちょうどのとき、人々が仕事から帰宅する夜の早い時間にピークを迎える「ダックカーブ」型になる傾向がある。そして人々は夜の間にEVを充電しがちだ。この需要に対応するために天然ガスのような化石燃料のリソースが増える。

その結果はどうなるか?温室効果ガスが出る。MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者らがEnvironmental Science and Technologyに発表した研究では、カリフォルニアの夜間のEV充電は、日中の充電より74%多く温室効果ガスを排出していることが示された(送電網によって違いはある。風が強い中西部やテキサス州では、風は夜強く吹く傾向にあるために夜間のEV充電は最も理に適っている)。

ChargePointプログラムは日中利用できるたっぷりとある再生可能リソースのメリットを生かし、その過程での温室効果ガス排出を削減するのが狙いだ。参加する顧客はBMWのChargeForwardモバイルアプリで充電の好みと出発時間を入力する。BMWはまた、顧客のロケーションに基づく再生可能エネルギーの可用性など、送電網についてリアルタイムの情報を受け取る。この情報を理想的な充電時間帯の算出に使い、結果を自動的に車両に送る。顧客はアプリを通じていつでも充電シフトのオプトアウトができる。

カリフォルニア州は野心的なクリーンエネルギー目標を追求していることで知られている。そこには、2045年までに100%再生可能で二酸化炭素排出ゼロの電気を達成するという画期的な目標を法律に成文化するというものが含まれる。また、2030年までにEVを500万台にするという目標も掲げている。同州では交通が最大の温室効果ガス排出源であることを考えれば、そうした目標の設定は驚きではない。

BMWとPG&Eは、EVが送電網に電気を供給できるようにする車両から送電網へのテクノロジーを開発するためにラボで協業もする。そうした双方向の給電機能では、非常事態の場合や、分散する小型発電所が送電網のバランスを終日とれるようにするのに、EVが大きなバックアップ発電機として使われるようになるかもしれない。

ChargeForwardプログラムの第3段階は2021年4月中旬に始まり、2023年3月まで続く。

カテゴリー:モビリティ
タグ:BMW電気自動車再生可能エネルギー

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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