BtoBエンジニアプラットフォームを運営するメイプルシステムズが1.4億円調達、間接部門向け新サービスも

客先常駐型のシステムエンジニアリングサービス(SES)業界向けに、エンジニア管理のプラットフォーム「PRO-SESS」を提供するメイプルシステムズは6月20日、第三者割当増資と金融機関借り入れにより総額約1億4000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。第三者割当増資の引受先はベクトルエボラブルアジアオークファンOrchestra Investmentと個人投資家の高野秀敏氏。今回の資金調達は2017年8月に実施した総額1億円の調達に続くものとなる。

またメイプルシステムズでは同時に、PRO-SESSで提供してきた機能の一部を切り出し、いくつかのサービスに分けて提供していくと発表。第1弾としてSESの間接部門業務を一元管理できる「契約管理できるくん」を7月1日にリリースする。

IT業界では、急なエンジニア需要に対応するために、企業間でのエンジニア派遣の仕組みとして、SESが利用されてきた。しかしSESでは、仲介会社がいくつも関わることによるエンジニアのミスマッチや契約の不透明性、多重下請け構造などが問題となっている。

PRO-SESSは、そうした問題を解消したいと開発された、BtoBのオープンプラットフォームだ。エンジニアが所属する企業と顧客企業とを、仲介企業なしで直接結び付ける。

契約管理できるくんは、PRO-SESSの中からSESのバックオフィス業務を支援する機能を分割して提供。SES契約の管理や見積書・発注書・発注請書の作成・送付、勤怠管理、請求書発行などが行える。

メイプルシステムズ代表取締役の望月祐介氏は「PRO-SESSをエンジニアが集まるプラットフォームとして、1年ほどかけてブラッシュアップを進める中で、業務にシステムがより溶け込んでいかなければ使ってもらえないし、エンジニア情報も集まらない、と課題を感じた」とサービスを分割する理由について説明する。

望月氏によると、現在PRO-SESSの契約企業は300社を超え、対象企業のエンジニア数は1万2000人を数える規模となったそうだ。その一方、PRO-SESSに登録されているエンジニアは2000人程度で、登録にまで至っていないエンジニアの数が多いという。

「SESは契約形態が独特で、納品もプロダクトを引き渡せば終わり、とはならない」と望月氏は話す。エンジニアが現場常駐の形で働くことの多いSES業界では、契約期間や勤怠情報の管理・レポーティング、それに基づく請求書発行などのバックオフィス業務が煩雑になりやすい。

SES企業には小さな会社も多く、自社で管理ツールを導入できるところは少ない。こうした業務はExcelやWordを使って、手作業で行われていることがほとんどだ。

メイプルシステムズでは、業界でニーズが高かった、これらの業務支援を切り離してサービスとして前面に出し、契約管理できるくんとして提供。このサービスでは契約・勤怠管理から請求書発行までを一元管理できるため、エンジニアを登録することがバックオフィス業務負荷の軽減にもつながるという。

同社としては、ニーズの高い部分のサービスを業界に浸透させた上で、エンジニア登録を進めてもらい、エンジニア情報の収集も図っていく考えだ。

契約管理できるくんは登録料、月額利用料は無料。望月氏は「顧客企業からSES企業への支払いサイトを縮めるファクタリングの手数料などで収益化を検討している」と話している。PRO-SESSの一連のサービスについても「マッチングでの収益ではなく、案件情報やエンジニア情報の上位表示を有料オプションとして提供したい」とのことだ。

メイプルシステムズは契約管理できるくんに続き、エンジニア探しを支援するプラットフォーム「エンジニアあつまるくん」もPRO-SESSから切り出して、来年1月ごろをめどに正式リリースを予定している。7月の契約管理できるくんのリリースとともに、エンジニアあつまるくんのベータ版提供を開始する。また、今後も数段階にわたり、PRO-SESSから分割したサービスのリリースを行っていくという。

「SES所属エンジニアも、これまでは所属会社や客先へのレポーティングなどをExcelで行っていた。今後リリースするエンジニア向けのサービスでは、それに置き換わるアプリも提供するつもりだ」(望月氏)

今回、シリーズAラウンドの資金調達を完了したメイプルシステムズ。調達資金は「広報とカスタマーサクセスチームの体制強化に充てる」と望月氏は述べる。「今回参加した投資家は、事業会社としての連携に期待している。SES業界における『エンジニアがいない、抱えたい』あるいは『エンジニアを外に出したい』との需要に応えていきたい」(望月氏)

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TechCrunch Japan

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