BYDとLucidがNVIDIAの自動運転プラットフォームを採用する最新のEVメーカーに

NVIDIA(エヌビディア)は、同社のDrive Hyperion(ドライブ・ハイペリオン)プラットフォームを採用する自動車企業に、新たに2社の電気自動車メーカーが加わったことを発表した。Drive Hyperionは、自家用乗用車からロボットタクシー、自律走行トラックまで、あらゆるクルマの自動運転機能を強化するコンピューターおよびセンサーツールキットである。

その2社とは、中国のBYD(バイド、比亜迪汽車)と米国のLucid Group(ルシード・グループ)だ。両社は、インテリジェントパーキングや先進運転支援システム(ADAS)など、ソフトウェア定義機能を自社の電気自動車に提供しているが、米国時間3月22日に開催されたNVIDIAの「GTC 2022」AI開発者会議で、NVIDIAのハードウェア、ソフトウェア、コンピュートソリューションに依存する自動車メーカーの仲間入りを果たすことを発表した。他にもJiDU(ジドゥ)、Polestar(ポールスター)、Li Auto(リーオート、理想汽車)、Nio(ニオ、上海蔚来汽車)、Xpeng(シャオペン、小鵬汽車)、Volvo(ボルボ)、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)、Jaguar Land Rover(ジャガーランドローバー)などが、NVIDIAのテクノロジーを採用している。

自動車メーカーは、運転をアクションではなくスポーツ観戦に近づけるような機能を約束することで、潜在顧客となる人々の注目を得ようと競い合っている。問題は、多くの企業が「ソフトウェア定義」のアプローチで実現すると豪語しているものの、実際には低レベルの自律走行を実現するためのリソースさえ、自社で持っていないことだ。

なぜなら、クルマに自律走行機能を組み込むためには、機械学習アルゴリズムを訓練するための何百万キロメートルもの走行データ、センサーからデータを取り込んでリアルタイムに判断できる高度なソフトウェア、そしてそのすべてを動かすのに必要な計算能力を持つコンピューターが必要だからだ。このような技術は、一般的な自動車メーカーの手に負えないため、自動車会社がIntel(インテル)やQualcomm(クアルコム)、そしてNVIDIAなどの企業に、現在の自動車市場に対応するために必要なツールの開発と統合を依頼することが増えているのだ。

その結果、少なくともNVIDIAにとっては、今後6年間で110億ドル(約1兆3300億円)を超える自動車関連企業とのパイプラインができた。わずか1年前の80億ドル(約9700億円)からそれだけ増加したと、NVIDIAの自動車担当バイスプレジデントのDanny Shapiro(ダニー・シャピロ)氏は述べている。DeepRoute.ai(ディープルートAI、元戎啓行)やWeRide(ウィーライド)など、自動運転関連のスタートアップ企業も、NVIDIAのDrive Hyperionエコシステムに参加することを発表しており、NVIDIAのリーチはさらに拡大している。

BYDは、現在提供されている「DRIVE Hyperion 8」アーキテクチャを使って、次世代の「新エネルギー車」を2023年初頭から製造開始すると、3月22日に開催されたNVIDIAのカンファレンスで発表した。BYDによれば、同社は自動運転とインテリジェントなコックピット機能のための中央演算とAIエンジンとして、NVIDIAの「Drive Orin(ドライブ・オーリン)」車載用システムオンチップ(SoC)のみを使用するという。Orinは1秒間に最大254兆回の演算を可能とし、自動運転車で同時に実行される大量のアプリケーションとディープニューラルネットワークを処理できるように設計されている。BYDは、Hyperion 8が提供するソフトウェアやセンサー類を使用するかどうかなど、さらなる詳細についてはまだ明らかにしていない。

Lucid Groupは同じカンファレンスで、同社の先進運転支援システムである「DreamDrive Pro(ドリームドライブ・プロ)」がNVIDIAのDRIVEプラットフォーム上で構築されていることを明らかにした。現在路上を走っているすべての電気自動車セダン「Lucid Air(ルシード・エア)」には、LucidのADASに統合されたNVIDIAのSoCが搭載されているが、この自動車メーカーは現在も自社製のソフトウェアスタックを使用しており、自動運転とインテリジェント・コックピット機能のために、14台のカメラと1基のLiDAR、5基のレーダー、12個の超音波センサーからなるセンサー群に頼っている。Lucidは、将来の製品についてNVIDIAとさらに協業することを計画しているが、現時点では詳細を公表していない。

NVIDIAのハードウェアとアーキテクチャでシステムを構築することで、これらの自動車メーカーは、NVIDIAが将来的に性能を向上させた際には、Over-the-Air(無線経由)ソフトウェアアップデートで車載機能を強化することが可能になると、NVIDIAは述べている。

「Lucid Airにプログラマブルで高性能なコンピュート・アーキテクチャを採用することで、この自動車メーカーはNVIDIA DRIVEのスケーラビリティを活用でき、モデル数の増加にともなって常に最新のAI技術を取り込むことができます」と、NVIDIAは声明で述べている。

次世代のNVIDIA DRIVE:Hyperion 9

2021年11月、NVIDIAの秋のGTCイベントで、創業者兼CEOのJensen Huang(ジェンスン フアン)氏は、2024年型の車両向けにHyperion 8の提供を開始すると発表した。そして3月22日、フアン氏は2026年に出荷を開始する車両向けとなる新世代アーキテクチャ「Hyperion 9」を発表した。

Hyperion 9はセンサー群の一部として、14台のカメラ、9基のレーダー、3基のLiDAR、20個の超音波センサーを備えるという。先代の12台のカメラ、9基のレーダー、1基のLiDAR、12個の超音波センサーからさらに増えていることがわかる。

「クルマの周りで起こっているすべてのことについて、実に多様で冗長性のある視点を得ることができます」と、シャピロ氏はTechCrunchによるインタビューで語っている。「また、これにはAtlan(アトラン)が採用されます。我々のロードマップではOrinの後継として求められているため、Atlanは追加されたセンサーから入ってくるすべてのデータを処理できる、より高性能なSoCになるでしょう」。

画像クレジット:NVIDIA

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

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