CartaがCVC設立、自社プラットフォームに取り込むスタートアップに投資

未公開企業のエクイティ管理を支援するスタートアップCarta(カルタ)は2月7日、投資ビークルとしてCarta Venturesを設立したと発表した。 資金豊富なユニコーンである同社は、若いスタートアップに投資して、未公開企業の世界でデータ主導の視点を改めて構築し、自社の中核製品とサービスを中心としたエコシステムの育成を促したいと考えている。

TechCrunchが報告したように、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の世界ではプレイヤーの数が大幅に増加しており、さまざまな規模のキャッシュ潤沢なCVCがベンチャーキャピタルマーケットやその周辺で情報収集の手段としてキャッシュを使い、おそらくはそのキャッシュから多少のリターンも狙っている。Slackのような企業も、未公開の時代に投資ビークルを立ち上げ、同社のプラットフォームにプラグインする企業に資金を投じた。

あまたのCVCの中で、なぜCarta Venturesに注目するのか? それは主に、Carta本体がその重要性を増している未公開企業の世界で存在感を高めており、同社が投資する具体的な対象も複数あるためだ。

なぜ未公開企業が重要なのか

Cartaは未公開企業の各種バリュエーション、キャップテーブル、レポート作成を支援している。ベンチャーキャピタル向けのツールやサービスも提供している。これらにより、同社は長く堅調を保つ未公開市場の中心に位置している。

未公開企業への投資は増加している公開企業の数は減少しており、未公開企業の公開には時間がかかる。未公開のまま留まる企業は全部で数千億ドル(数十兆円)の価値がある。The Economist(エコノミスト)でさえ、未公開企業のブームについて特集し、「機関投資家は、未公開市場、特にベンチャーキャピタル、プライベートエクイティ、私募債に殺到している」と指摘した。

また、Cartaはプレイヤー(スタートアップなどの未公開企業)とその燃料補給役(あらゆる種類の投資家)の両方に後方からプレイヤーと組織を提供する。これまで本業で支援してきた企業を、今度はベンチャーファンドを通じて支え、スタートアップの世界で影響力を拡大する。

Cartaは、自社のプラットフォームに加わるように企業を促し、誘い出したいと考えている。未公開市場への参入と投資がより透明でシンプルになるためだ。未公開資本市場の世界とその構成員に欠けていたのが、この透明性とシンプルさだ。

誰のための資金か

Cartaがどの企業にどういう理由で資金を提供したいのかを把握するために、TechCrunchは同社の戦略を統括するJames McGillicuddy(ジェイムズ・マギルカディ)氏に話を聞いた。まず基本的な点から始めると、Carta Venturesの投資資金にはCartaの自己資金を使う。マギルカディ氏は同社が「外部のビークルを使わずに、貸借対照表上の資金」を投資すると述べた。これは「ほぼCVCのセオリー通り」に組成することを意味する。

ここまでは標準的だ。次に、Carta Venturesが市場に参入する際に集めるゼネラルパートナーの数を聞いた。マギルカディ氏はその質問には直接答えずに、多くの既存の内部スタッフや「投資委員会を構成する古典的な意味ですばらしい人たち」について言及した。「彼らなら起業家を支援できるし、当社が市場へのアクセスを始めつつある今、世の中に存在すべきと当社が考える事業へ導くことができる」

TechCrunchに共有されたブログ投稿のプレリリース版によると、Carta Venturesはシード投資に小切手を切るつもりだ。マギルカディ氏は、Carta Venturesの「最優先事項は、当社には専門知識がないが、今世の中に存在してしかるべき何かを、どうすれば当社のプラットフォームを利用して構築できるのか考えてもらうことだ」という。

マギルカディ氏の最後の2つの答えからわかるように、Carta Venturesでは、構築したいものに関して意図が明確だ。

CartaのCEOであるHenry Ward(ヘンリー・ワード)氏によるブログ投稿では3種類の企業に言及している。現金と株式の両方を含む「総報酬」を従業員に対して公正で市場に合った形で提供する手助けをするスタートアップ。「アセットクラスの1つとしてのベンチャー投資のための分析ツール開発」を行うスタートアップ。そして未公開企業に関するリサーチを行うスタートアップだ。

筆者は、Cartaがそれらをなぜ自社で開発しないのか興味があった。なぜなら開発して欲しいものに対する予測が正確だと思ったからだ。マギルカディ氏は、Cartaが実現したいことに携わるような最高の人材が必ずしも社内にいるとは限らず、いたとしても、同社には「優先すべき事項が他にたくさんあるし、開発すべきものも多くある」と述べた。

それはそうだろう。だが、CartaがCVCを用意するのは単に取り込む企業を探し、資金を投入し、取り込んだ企業が食べていけるようにするためだけではない。資金を活用して企業の成長を支援するのは、Cartaのリーチを拡大するためでもある。

他には?

Cartaのベンチャーファンドは、同社がおもしろいと思えることに取り組んでいるアイデア段階の企業を取り込むために、資金を投じたいと考えている。それだけでなく、同社のオフィスで一緒に働いてもらいたい。求めに応じて支援の手も差し伸べるはずだ。

なぜCartaは、こうした動きができているのか。それは、Cartaは公開企業ではなく、おそらく利益も計上していないためだ。また、なぜ自社でベンチャー投資部門を持つ余裕があるのか。その理由は次のとおり

Cartaが17億ドル(約1900億円)のバリュエーションで3億ドル(約330億円)を調達したのは、2019年半ばのことだった。

未公開資本市場から巨額の資金を喜んで投入するといわれ、さらに自社の未公開企業のプラットフォームに取り込んだら利益が出そうな小規模企業があれば、その資金を提供しない手はないだろう 1.。

1.「未公開会社」と早口で4回言ったら、Carta Venturesからの小切手を受け取らなければならない。それがルールだ。

画像クレジット:Somyot Techapuwapat / EyeEm / Getty Images

参考:スタートアップの資本構成を管理するCartaが創業6年でシリーズD $80Mを調達

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(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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