ChatableAppsは周囲の雑音をリアルタイムに除去して聴力をサポートするアプリを開発

聴覚神経信号処理の研究者であるAndy Simpson(アンディ・シンプソン)博士の研究成果を商業化している、英国のスタートアップChatableApps(チャッタブルアップ)がひっそりとMark Cuban(マーク・キューバン)氏からシードマネーを調達していた。ChatableAppsは、周囲の雑音をほぼリアルタイムに除去することで「聞こえ」をサポートするスマホアプリを開発した。

シンプソン氏のほかに、同社の共同創業者はBrendan O’Driscoll,(ブレンダン・オドリスコル)氏、Aidan Sliney(エイダン・スリニー)氏、George Boyle(ジョージ・ボイル)氏だ。このチームは以前、音楽発見アプリSoundwave(Spotifyに買収された)を手掛けていて、のちにCEOのGiles Tongue(ジルス・タング)氏が加わった。タング氏は以前はウェアラブルテックスタートアップNURVVに在籍し、事業を進める役割を担っていた。

「アンディ・シンプソン博士は我々のCSO(サイエンス責任者)であり、投資家でもある」とタング氏は筆者に説明した。「シンプソン博士は聴覚神経科医学、聴覚認知、神経信号処理、人工知能を融合させた。AI異端者で、へそ曲がりの思想家だ。こうした普通ではないさまざまな要素が組み合わさって、神経科学主導のAIを一から立ち上げることにつながった。彼の数多くの研究は、ステルスモードで取り組みが始まる前に400以上も引用された」と続ける。

それからというものチームは忙しかった(しかしひっそりとほとんどの物事を進めた)。Chatableの聞こえサポートアプリはベータ版をGoogle Play Storeで入手できるが、まだ「正式展開前」だ。

「我々は臨床前の実証段階にある。実証はうまくいくだろう」とタング氏は話した。「アーリーアダプターからは『人生を変えるもの』との声が聞かれ、彼らは目に涙を浮かべていた」と続ける。

Chatableのオドリスコル氏は、同社のテクノロジーとアプローチはノイズフィルタリングや他のDSPテクニックを使用しておらず、「かなりユニークだ」と話す。「実際には、話し言葉とノイズを区分する深層学習ニュートラルネットアプローチだ。オリジナルの音声にフィルターを適用するのではなく、音を聞いてほぼリアルタイムでまったく新しい音声のストリームを再版する」と語った。

Chatableことを「クリック&ゴー」のユニバーサルな聞こえ補助と形容しつつ、オドリスコル氏はこのアプリが現代の100ポンド(約1万4000円)のスマートフォンと普通のイヤホンで使えるようにつくられた、と話した。「ユーザーが会話を聞き取りすいようにアプリはクリアで大きな音声を提供する。アプリには2つのスライダーがあり、1つは音量を上げるためのもの、もう1つは周囲のノイズをコントロールするためのものだ」と説明した。

より広い視点で、タング氏は「世界の聞こえの問題」はAIが大規模に解決できる最大の健康問題であり、Chatableは人生を変えるような手法で何百万人もの人を手助けする機会を有していると信じている。世界保健機関(WHO)によると難聴を抱える人は世界に4億6600万人いる。「Chatableは日々手にするスマートフォンを使ってグローバルの健康問題を解決することができる、世界初のアプリになる力を秘めていると確信している」と述べた。

一方Chatableは、月額9.99ポンド(約1400円)のサブスクで売上を上げる計画だ。これはもちろん事業を継続できるようにするためであり、長期的なプロダクトにも投資を続けられる(例えば、このアプリのiPhoneバージョンは現在プライベートベータだ。ただ、必要としている人にとって真に手頃なものになるよう、今後価格が下がることを期待したい)。

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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