Clubhouseがクリエイター向けアクセラレータープログラム開始、スポンサー紹介もしくは月54.6万円の収入を保証

Twitter Spaces(ツイッター・スペース)をはじめとする新規参入者の激しい追撃を受ける中、人気オーディオスタートアップのClubhouse(クラブハウス)は、自社ネットワークでより高品質なコンテンツを提供するための行動を起こした。同社はアクセラレータープログラムを立ち上げた。米国時間3月14日に行われた毎週恒例のタウンホールイベントで、同社は「Clubhouse Creator First(クラブハウス・クリエイター・ファースト)」と名づけた初のアクセラレーターの詳細を説明した。最初は20人前後のクリエイターを集め、作品制作を手助けする。そのためにClubhouseは、クリエイターが作業を始めるために必要なものはすべて提供する。iPhone、AirpPods、iRigなどの機器から、プロモーション支援、ゲストのブッキング、さらにはベビーシッターまで。何より重要なのは、参加したクリエイターにClubhouseが何らかの収益を約束していることだ。

イベント中ClubhouseのCEOであるPaul Davison(ポール・デイヴィソン)氏は、アクセラレーターで最も大切なのはクリエーターが自分の仕事で収入を得るのを支援することだと語った。そのためにClubhouseは、クリエイターをブランドスポンサーと引き合わせる、とデイヴィソン氏は語った。すでにClubhouseにアプローチして参入機会をうかがってブランドがいるのでそれが可能だと、同社は信じている。

特定のショーをスポンサーするブランドをClubhouseが見つけられなかったときは、会社が基本収入として月額5000ドル(約54万6000円)を、クリエイターがプログラムに参加している3カ月間保証する。

おそらくこの緩和策は、他のプロジェクトからClubhouseのショーに人を動かす有力な要因になるだろう。同時に視聴者を増やし、ブランドとの関係を築いてショーを長期にわたって継続することに繋がるだろう。

さらにClubhouseは、アクセラレーター参加者の番組制作を直接手伝うこともある、と私は理解している。

Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)が支援するこのソーシャルオーディオアプリは、同VCの新ゼネラルパートナーであるSriram Krishnan(シュリラーム・クリシュナン)氏が共同ホストを務めるThe Good Time Show(ザ・グッド・タイム・ショー)という人気テックショーを成功に導いている。番組には、Clubhouseに投資しているか、同社と何らかのつながりをもっているゲストと共同ホストが定期的に登場し、Elon Musk(イーロン・マスク)氏やMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏といったClubhouse最大のセレブ・ゲストの出演にもこのショーで実現した。

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この形式は繰り返すことができるようだ。デイヴィソン氏がタウンホールミーティングで語っていたように、同社はショーのためにクリエイターとゲストをマッチングする役割も請け負う。つまり、番組プロデュースにも協力するということだ。

デイヴィソン氏は、Clubhouseはアクセラレーター参加者に、何がうまくいくのか、いかないのかや「深く掘り下げたコンセプト開発」に関する意見など、方向性を示すフィードバックを行うことも話した。クリエイターのショーが放送準備完了になったら、Clubhouseはクリエイターをクリエイティブサービスとつないで、プロモーション素材のデザインなどClubhouse外へのマーケティングを支援する。ショーの初期オーディエンスを集めるために、クリエイターが潜在リスナーを招待するための支援も行うかもしれない。

もちろんClubhouseは、これまでもこの種の取り組みを陰で行っていただろうが、アクセラレーターを作ることでさまざまなアレンジが正式なものになり、より多くの有望なクリエーターに専用リソースを割り当てることができる。

しかし、これによってClubhouseは、未解決の議論運営問題に関して、不安定な立場に置かれる可能性がある。

概してブランドは、問題になるコンテンツや有害なコンテンツに自ら関わることを嫌がり、問題が起きるとクリエイターとの契約を解除する。過去には、コンテンツ管理の失敗が原因でトップソーシャルメディアで広告主の集団脱出が起こったこともある。例えばYouTubeで数年前に不適切なコメントを巡って主要ブランドが撤退し、その結果YouTubeの広告ネットワークで許されるビデオの見直しが行われた。そして2020年Facebookは、 同社史上最大の企業ボイコットに直面した。ヘイトスピーチと誤情報の拡散を適切に防ぐことに失敗したFacebookをブランドが非難したためだ。

それらと比べると規模は小さいが(App Annieによると全世界で1200万ダウンロード)、Clubhouseもすでに、女性嫌悪、反ユダヤ主義新型コロナウイルスに関する誤情報などが、それらを禁止するルールがあるにも関わらず許容されていることを非難されている。言葉による虐待を許容した例もあり、一部のユーザーは今もClubhouseのルームで中傷や嫌がらせにあっている(TechCrunchはこうした事例をユーザーから直接聴いているが、許可なく名前を公表することはしない)。

直近では、ニセの専門家がClubhouseのルームを占有し無責任な発言を繰り返していることへの懸念が増大している。多くの自称「エキスパート」がアプリ内で気前よくアドバイスを与えるが、ひと度メンタルヘルスなどの領域にたどり着くと、有害な誤情報を撒き散らし、人々に深刻な被害を与える。

会話管理の方法を改善して悪役を排除し、プラットフォームをブランドにとって安全な場所にすることができなければ、一連の問題はいずれClubhouseを大々的に襲うことになりかねない。

米国時間3月15日から、興味を持ったクリエイターはClubhouse Creator Firstに申し込むことができる。締め切りは2021年3月31日だ。

新しいアクセラレータープログラム以外にも、3月14日のタウンホールでいくつかのニュースが発表された。

同社は、Netflix(ネットフリックス)、OWNおよびHarpo Productions出身のMaya Watson(マヤ・ワトソン)氏をグローバルマーケティングの新たな責任者として招いたことを発表した他、いくつかのプロダクトアップデートについても紹介した。

またその中の1つに、ユーザーは電話番号だけで友達を招待できるようになるというものもある。これで、アドレス帳すべてをアップロードする必要がなくなる。さらに、自分のユーザープロフィールやClubページヘのリンクをシェアできるようになり、roomのリストを表示する際、ユーザーの言語設定をきちんと覚えるようになった。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Clobhouse音声ソーシャルネットワークアクセラレータープログラム

画像クレジット:Freepik / Kristina Astakhova

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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