Clubhouse似のソーシャルオーディオプラットフォーム「Walkie-talkie」は匿名性が高く若年層に人気

Picslo Corp(ピクスロ・コープ)が開発したソーシャルオーディオプラットフォーム「Walkie-talkie(ウォーキートーキー)」は、Heroic Ventures(ヒロイック・ベンチャーズ)が主導するシードラウンドを実施し、325万ドル(約3億7000万円)の資金を調達。このラウンドには、TI Platform Ventures(TIプラットフォーム・ベンチャーズ)、LDVP、Partech(パーテック)、Diaspora Ventures(ディアスポラ・ベンチャーズ)、Breega(ブリーガ)、Kima Ventures(キマ・ベンチャーズ)が参加した。Clubhouse(クラブハウス)に似たこのアプリは、2年前にサービスを開始し、現在120万人のアクティブユーザーを抱えている。

Picslo CorpのStephane Giraudie(ステファン・ジラウディ)CEOは以前、VoIPウェブ会議ソフトウェアのVoxeet(ヴォックスィート)を設立した人物だ。Voxeetは後にDolby(ドルビー)に買収され、Dolby.ioの基礎となった。ジラウディ氏がTechCrunchに語ったところによると、Walkie-talkieは、元VoxeetのエンジニアであるCorentin Larroque(コランタン・ラロック)氏とValentin Martin(ヴァレンティン・マーティン)氏の2人がサイドプロジェクトとして制作したものだという。ラロック氏とマーティン氏がWalkie-talkieを市場に投入して、いくつかの国で有機的な成長を遂げた後、ジラウディ氏がチームに加わった。

「私たちはこれまで多くのコミュニケーションアプリを作ってきたので、それは間違いなく私たちの得意分野だったと思います。しかし、当時はポッドキャストが台頭しており、Clubhouseはまだ存在していませんでした。特にZ世代やアンチソーシャルネットワーキングの動きから、オーディオが再び注目を集めていました。Instagram(インスタグラム)では、自分のイメージや見た目が重視されるため、絵に描いたような美しさが求められます。Walkie-talkieの場合は、匿名性が高く、批判されることなく自分らしくいられるという要素があります」と、ジラウディ氏は述べている。

Walkie-talkieでは「frequencies(周波数)」と呼ばれるオーディオルームをホストすることができ、これは公開と非公開のどちらにも設定できる。非公開の周波数では友人と安全に会話ができ、公開した周波数では世界中のユーザーとさまざまなトピックについて会話ができる。同社は最近、ラジオのような周波数スキャン機能を導入した。ユーザーはボタンを押すだけで、さまざまなライブオーディオルーム(周波数)をスキャンし、自分の興味に最も合ったものを見つけられる。

Walkie-talkieとClubhouseの比較についてジラウディ氏に尋ねると、Clubhouseは年齢層の高いユーザーを対象としており、ルームの話題がより精選されているのに対し、Walkie-talkieは若年層をターゲットにしており、あまり構造化されていないフォーマットになっているとのこと。また、Walkie-talkieのユーザーの多くは、サービスを紹介するTikTokの動画を見て有機的にアプリを見つけ、それが少しだけ話題になったことを、同氏は指摘した。

ジラウディ氏によると、今回のラウンドで調達した資金は、同社のグローバルリーチを拡大するとともに、オーディオインフルエンサーが新たな発見、収益化、分析を可能にする新機能を構築するために役立てる予定であるという。同社は製品、エンジニアリング、オペレーションの各部門を拡張することも計画している。また、Walkie-talkieではドルビーと共同開発した新技術を活用して、ユーザーがアプリ上で新しいクリエイターを発見できるようにしていくと、ジラウディ氏は語っている。同社では、クリエイターがWalkie-talkie上でフォロワーとコミュニケーションを取り、交流する方法を促進したいとも考えている。

「インフルエンサーの人達には、さまざまなプログラムを提供する用意があります。また、新たな体験を提供することで、アプリ上で見られる現在のユースケースを強化していくつもりです」と、ジラウディ氏は語る。

同社のシードラウンドが行われたのは、新型コロナウイルスの影響からソーシャルオーディオのアプリや機能が人気を博していた時のことだった。Clubhouseの台頭により、Twitter(ツイッター)やFacebook(フェイスブック)などのソーシャルメディアの巨人たちは、市場シェアを獲得するために独自のライブ音声会話ルーム機能を起ち上げた。しかしながら、現在は多くの国で集会に関する規制が解除され、対面式のイベントが戻りつつあるため、ライブ音声会話ルームを提供する企業は、新機能を導入したり利便性を向上させることで、ユーザーの維持に努めている。

Twitterは最近、ユーザーが自分の音声会話ルーム「Spaces(スペース)」へのダイレクトリンクを共有できる機能を導入し、他のユーザーがTwitterにログインしなくてもウェブ上でライブ音声セッションに参加できるようにした。一方、Clubhouseは、会話の録音や共有が可能になるクリップやリプレイと呼ばれる新機能をサポートし、非リアルタイムで「後聞き」できる機能を拡充した

Walkie-talkieについては、ジラウディ氏はこのプラットフォームを、時間の経過とともにより大きなネットワークへと成長していく、これまでとは異なる種類のソーシャルオーディオアプリとして捉えている。

「Walkie-talkieは単なるコミュニケーションツールに留まらないため、私たちは非常に興味深いソーシャルネットワークの始まりを目の当たりにしています。ユーザーはどんどん友だちを増やしていき、友達が増えれば増えるほど、アプリに費やす時間も増えていきます。だから私たちは、彼らがちゃんとポジティブな体験ができるようにしていくつもりです」と、ジラウディ氏は述べている。

画像クレジット:Walkie-talkie / Picadilly Posh

原文へ

(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。