ConsenSysがエネルギー効率を99%向上したNFTエコシステムを発表、第1弾は現代アートの巨匠ダミアン・ハースト氏

昨今のNFT(非代替性トークン)の流行は、デジタルアーティストにとっては興味深い出来事だ。テクノロジーによって作品を制作する方法は飛躍的に進歩したが、それによって利益を得る方法はそれほど進歩していない。

これまでのところ、クリプトをいち早く採用したアーティストたちが最も注目を集めているようだが、より組織的に活動しているアーティストもトークンの世界に足を踏み入れている。大きな障壁の1つは、Ethereum(イーサリアム、ETH)ブロックチェーンに関連する環境問題だ。Ethereumブロックチェーンは、新しいアートワークを作成するために大量のエネルギーを必要とし、非常に高い取引手数料が発生する。気候変動への懸念から、初期のアーティストたちは物議を醸した。

ここ数カ月の間に、Ethereumの利点を保ちながら速度の向上、コスト削減、エネルギー使用量の削減を約束するブロックチェーン製品が数多く登場しているが、中でも注目を集めたDapper Labs(ダッパー・ラブス)のFlow(フロー)ブロックチェーンは、同社のNBA Top Shot(NBAトップショット)製品をサポートしている。そして米国時間3月30日、ConsenSysから「Palm」と呼ばれるレイヤー2(セカンドレイヤー)の新規参入者がデビューした。PalmはEthereumのメインネットワーク上のサイドチェーンとして動作するが、人気の高い仮想通貨ウォレットMetaMaskを通じてサポートされる。

Palmのローンチの一環として、英国の現代美術家であるDamien Hirst(ダミアン・ハースト)氏は、彼が初めててがけるNFTプロジェクト「The Currency Project」を、同プラットフォームのPalm NFT Studioで立ち上げることを発表した。

Ethereumは、よりエネルギー効率の高いプルーフ・オブ・ステーク(Proof-of-stake、PoS)方式のコンセンサス構造に移行することをすでに表明しているが、それがどれほど早く実現するかは不明だ。現在、Ethereumでは(ビットコインと同様に)プルーフ・オブ・ワーク(Proof-of-work、PoW)方式を採用している。PoW方式では、チェーン内の次のブロックを採掘する場所の優先順位を決めるためにエネルギーを大量に消費するが、ネットワークのトラフィックが増えれば増えるほど、エネルギー消費量も高くなる。そのため、暗号化されたマイニングを行う企業は、常に最新のハードウェアに投資して優位性を保ち、より多くの電力を使用しなければならない。PoSではそのようなパワー消費や機器のニーズを減らし、評判や資産保有量(stake、発行済の全コイン総量に対する保有コインの割合)に基づいて次のブロックを採掘するネットワーク上のノードを選択する。セキュリティ面では回避する必要があるいくつかのトレードオフがあり、クリプトコミュニティの多くはこの妥協に満足していないが、賛成派は環境問題が優先されるべきだと主張している。

Palmを開発したチームはプレスリリースの中で、このエコシステムは「PoWシステムに比べ、エネルギー効率が99%向上しています」と述べた。

Dapper LabsのFlowとは異なり、PalmはEthereum開発者コミュニティとの相互関係から利益を得ており、Nifty(ニフティ)を含むいくつかの業界パートナーシップを紹介した本日の発表にもそうした要素が見られた。このニュースは、折しもDapper Labsによる3億500万ドル(約337億8000万円)の資金調達と同じ日に発表された。この資金注入によりDapper Labsは、NFTスペース全体に現在起こっている熱狂をもたらしたTop Shotの勢いをさらに加速させることができるだろう。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:ConsenSysNFT

画像クレジット:Panuwat Sikham / Getty Images

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(文:Lucas Matney、翻訳:Aya Nakazato)

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TechCrunch Japan

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