Crew Dragonの最新型宇宙服は通信装置と温度調節の機能を内蔵、タッチパネル対応グローブも装備

米国時間5月27日、スペースシャトルの引退以来、初めて人間を軌道に打ち上げる米国製宇宙船に乗るのはもちろん人間だ(悪天候のため5月31日に延期)。この人たちが着る最新型宇宙服も、また歴史的なデビューを果たすことになる。本日の打ち上げ(ライブ配信)に先立ち、NASAとSpaceX(スペースエックス)はその新型宇宙服の新鮮な姿を公開した。もうすぐ、たくさん見ることになるだろうが。

この宇宙服は、NASAと、今回宇宙船に乗り込む宇宙飛行士Bob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーレー)氏との協力のもとでSpaceXが開発した。彼らは、現代の素材と技術を使い、Crew Dragon(クルー・ドラゴン)と一体化できる着心地のいい形状を目指した。

ただし、こちらもNASAでデザイン変更が進められているのだが、何十年間も使われてきたおなじみのEVAスーツ(船外活動用宇宙服)に置き換わるものでないことは知っておくべきだろう。今回、ベンケン氏とハーレー氏が着るのは、戦闘機のパイロットが着るものと同様の与圧服だ。短時間の真空状態や高熱といった打ち上げの際に想定される危険から身を守るために飛行士の体に合わせて作られるもので、外宇宙には出られない。

 

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このSpaceX製の宇宙服は、耐火性と耐衝撃性を備え、通信装置と温度調節の機能を内蔵する。ヘルメットには、当然ながら無線とマイクが組み込まれていて、空気と電源は、宇宙船内の各飛行士の座席に接続する1本のヘソの緒のようなケーブルで供給される。

「このスーツの開発で重視したことに、簡単に使えるという点がありました。飛行士が着座したとき、文字どおりただプラグインするだけで、後は宇宙服が勝手にやってくれるという感じです」とSpaceXのChris Tripp(クリス・トリップ)氏は、スーツを紹介したNASAの動画で話している。「これはまさに宇宙船の一部なのです。そのため私たちはこれを、スーツとシートの一体型システムと考えています」。

この10年間のエレクトロニクスとソフトウェアの進歩を考えると、宇宙飛行士にもミッションコントロールにも、進化し簡便化されたコミュニケーションが期待されてしかるべきだ。ノイズリダクションや音声検知など、私たちがビデオ通話に求めるような機能は宇宙でも大いに活躍する。

もう1つ、面白い変化があったのはグローブだ。頑丈であると同時に柔軟でなければならない。さらに導電性も必要だ。Crew Dragonの操作はタッチパネル方式だからだ。操作のたびにグローブを外さなければならないのでは煩わしい。

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「彼らとともに操作の癖を特定してゆきました。明確な操作ができるために、タッチのミスをなくすために、間違った入力を防ぐために、その人のタッチの仕方を画面に登録しておくのです」と、先日のNASAの記者会見でベンケン氏が話していた。

宇宙船に積み込まれるその他の物と同じく、宇宙服も今回初めての実地テストとなる。とは言えもちろん、あらゆる評価が事前に社内で済まされている。

「見栄えが良く、それでいて高性能なスーツを完成させるのに、3年から4年近くかかりました」とSpaceXの創設者でCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は先日のインタビューで話していた。「いつか自分もあれを着たいと、子どもたちに夢を与えたいのです。宇宙飛行士になりたい、進化した宇宙船で宇宙航空エンジニアとして働きたい、と熱い思いを抱かせたいのです。今こそ、宇宙への夢に再び火を点けるときです」

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画像クレジット:NASA

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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