Customer.ioのホームページから学ぶコンバージョン率の改善方法

サイト訪問者を顧客へと転換させることができるホームページは、スタートアップが所有できる最も有用な資産の1つである。

コールドトラフィック(そのサイトで紹介されているビジネスについて知らない訪問者)を顧客へと転換させることができるようになれば、新たなオーディエンスを獲得するために、より多くの時間とリソースを注ぐことができる。

この記事では、マーケターが自分でキャンペーンを設計し、そのようにしてカスタマイズしたキャンペーンを実施するためのマーケティング自動化プラットフォームCustomer.ioのホームページを分析してみようと思う。Customer.ioの顧客リストには、大企業からスタートアップまで、数千の企業が名を連ねている。

ランディングページの主なセクションすべてを分析して、スタートアップのホームページのコンバージョン戦略やコピーライティング戦略に使える点に注目する。

サイト訪問者の注意を一瞬で惹きつける

初めてのサイト訪問者の目に最初に映るのは、ウェブサイトを開いた際にスクロールしなくても見ることができる部分、つまり「ATF(アバッブ・ザ・フォールド)」と呼ばれる領域である。訪問者がそのまま閲覧を続けるか、そのサイトから離れてしまうかは、このATF領域が訪問者にとってどの程度役立つかどうかによって決まるため、ATFは非常に重要な部分である。

Customer.ioのATF領域は、ヘッダー、サブヘッダー、CTA(行動喚起)、顧客からの推薦コメント、視覚に訴える画像という5つの要素で構成されている。1つずつ見ていこう。

画像クレジット:Demand Curve

内容の濃いヘッダーで、訪問者が知りたい情報を伝える

ATF領域では、その企業が何をしているのか、なぜそれが重要なのかを、正確かつ簡潔に説明する必要がある。

訪問者がそのヘッダーを読むだけで、どんなスタートアップなのか、なぜそのスタートアップの製品を使うとよいのかを理解できれば、そのヘッダーは全体的に効果的なヘッダーだということができる。

Customer.ioのヘッダーでは、同社の製品が「messaging workflows(メッセージング・ワークフロー)」という2つの言葉で説明されている。Customer.ioを使えば、ユーザーが理想とするワークフローを構築できるというメリットがあること、つまり全面的にカスタマイズが可能であるということをヘッダーから読み取ることができる。

画像クレジット:Demand Curve

サブヘッダーでさらに詳細を説明する

サブヘッダーでは、ヘッダーで掲げている顧客へのメリットをどのように実現させるか、という点を説明する。Customer.ioのサブヘッダーでは、同社のメッセージング自動化プラットフォームを使って、ユーザーが独自のワークフローを構築できることが説明されている。

画像クレジット:Demand Curve

サブヘッダーで製品の対象者について簡単に言及することも効果的な場合がある。Customer.ioのサブヘッダーでは、同社の製品の対象者が明確に指定されているため、ユーザーは「自分はハイテクに精通したマーケターだろうか」と考える。自分がそのようなマーケターだと思えば、サイトの閲覧を続けるだろう。あるいは、自分はその対象者には当てはまらないと思えばサイトを離れるだろうが、それはそれでまったく問題ない。

画像クレジット:Demand Curve

Customer.ioのサブヘッダーは「データドリブンなメッセージングによって顧客をより深く理解できるため、収益が増加する」という、ユーザーに提供できる最大のメリットについて言及して締めくくられている。

画像クレジット:Demand Curve

コンバージョン率を高めるCTAを作成する

CTA(行動喚起)とは、サイト訪問者と企業との関係をさらに深めるために訪問者側の行動を促すためのサイト構成要素である。このように、訪問者側からの行動を促す何らかの仕組みがないと、訪問者を顧客に転換させることは非常に難しい。

大抵の場合は、ATF領域の中に配置するCTAは1つだけにして、ユーザーが通る道を1つに限定することが好ましい。ただし、例えば、デモをリクエストするCTAを配置したのに、デモを申し込む人が少ないことに気づいた場合は「無料トライアル」など2つ目のCTAを配置して試してみるのもよいかもしれない。Customer.ioのサイトでは後者が採用されている。「無料トライアル」のCTAがなければ、数多くの見込み顧客を逃す可能性があることを知っているのだろう。

Customer.ioは、上記のように複数のCTAをユーザーに提示しているとはいえ、本当はデモを申し込んで欲しい、というのが本心である。そのため、デモをリクエストするためのCTAは他のCTAよりも強調された表示になっている。全体デモを申し込むユーザーの方が、コンバージョンへと至る確率も、サイトに留まる確率も他のユーザーより高くなることを、同社は理解しているのだろう。

画像クレジット:Demand Curve

画像を使って説明する

その製品ならではの価値をサイト訪問者によりよく理解してもらうために画像が役立つ場合に限り、ATF領域に画像を配置することはよいアイデアだと言える。実際のところ、企業のランディングページで目にするイラスト画像やストック画像は無作為に選ばれたような意味のないものが多い。

イラスト画像を使うな、と言っているわけではない。使うなら、自社の製品の価値を示すような方法で使う必要がある。Customer.ioのサイトでは、プッシュ通知のタイミングを遅らせるワークフローを視覚的に説明する画像が効果的に使われている。

画像クレジット:Demand Curve

顧客からの推薦コメントを掲載して信用を高める

顧客からの推薦コメントは、信頼を獲得するうえで必要不可欠なものである。さらに、他の顧客からの評価を掲載することには「皆がその製品について知っている中で、自分だけがチャンスを逃している」とサイト訪問者に感じさせるという目的もある。Customer.ioは、すでに3400社の企業が同社の製品を使用している、とサイトに掲載することにより、信用を確立し、ユーザーの不安を払拭している。また、顧客の中でも著名な企業のロゴを掲載することにより、伝えたいポイントをさらに強調している。

画像クレジット:Demand Curve

その製品ならではの機能を伝える

機能に関する説明は、ランディングページの大部分を占める。機能は、ユーザーにとってその製品が価値のあるものかどうかを判断する材料になる。同時に、ユーザーが抱くであろう懸念や反論についても、機能説明の部分で先を見越して対応する必要がある。

機能を説明する文章を作成する際の定石は、その文章を読む人が直面している問題について強調することだ。顧客が自身の抱える悩みについて説明する際によく使うフレーズを繰り返し使うことができるだろう。

Customer.ioのサイトを閲覧するのは、ハイテクに精通しているマーケターだが、彼らが抱える喫緊の課題を、サイトのコピー文によってさらに誇大する必要はない。Customer.ioは、それよりも、同社の製品を使うことによってユーザーの仕事がどれほど楽になるのかという点をアピールすることに焦点を当てている。

画像クレジット:Demand Curve

1つのセクションに多くの情報が存在する場合は、目立つ画像を使って訪問者の視線を誘導することができる。Customer.ioのサイトでは、黄色い電球の画像を使って、タイトルから段落、画像、顧客からの推薦コメントへと順に読み進めやすいように構成されている。

画像クレジット:Demand Curve

顧客からの推薦コメントを機能説明のセクションに組み込むことにより、機能説明の信用度を高めることができる。下記の画像で示されている通り、Customer.ioのサイトでは、実際のマーケターからのコメントを掲載して、タブウィジェットとして埋め込まれているそのセクションをさらに読み進めたいと訪問者に感じさせる仕組みになっている。掲載されているマーケターと同じ役職に就いている人であれば特に、他社の事例について読み、その決定に賛同する傾向が強い。

画像クレジット:Demand Curve

訪問者がウィジェットに興味を示さない場合は、タブや矢印などのナビゲーション方法をいくつか組み合わせて試してみることができる。

画像クレジット:Demand Curve

二次的な機能で見込み顧客に安心感を与える

サイト訪問者は、ランディングページをスクロールしながら半分ほどまで読み進めたところで疲れを感じる可能性がある。より楽に読み進めてもらうためには、各機能の重要な点を目立たせることができる。Customer.ioのサイトでは、高度なメッセージング・ワークフローを構成するそれぞれのパーツを目立たせて「本当にこれ全部できるの?」と、訪問者にうれしい驚きを提供する仕組みになっている。

画像クレジット:Demand Curve

顧客が自社で活用する方法を説明して、機能を際立たせる

機能について説明する文章には常に顧客にとってのメリットを盛り込む必要がある。顧客が即座に思いつくであろう反論に注意を向けることによっても、同じ目的を達成することができる。信頼に足る企業であることを顧客に感じさせ、顧客に論理的に訴求できるためだ。

Customer.ioのサイトでは自在にカスタマイズできることが強調されているが、そのうちユーザーは、論理的な思考のスイッチが入って「ちょっと待て。同じようなものを以前にもセットアップしようとしたけど、うまくいかなかったじゃないか」と考えるようになる。Customer.ioのサイトでは、技術的な仕様を掲載することにより、そのような考えに前もって対応している。

さらに「わずか数回のクリックで」という表現を強調し、使い方が簡単で、セットアップにわずかな時間しかかからないことをアピールしている。

画像クレジット:Demand Curve

セグメンテーション機能の画像は、Customer.ioの製品を使うことにより、顧客のエンゲージメントが高まることを示唆している。

画像クレジット:Demand Curve

ホームページのコピー文で反論に対応する

マーケターは、キャンペーンのために何千通ものメールを送信することが、どれだけ神経をすり減らす作業となるかを知っている。Customer.ioはこの悩みに注意を向け、テクニカルサポート用のチームとサービスがあることを強調して、その悩みへの答えを即座に提供している。

「自分が送信したメールが届かずに返ってきたり、迷惑メールフォルダに振り分けられたりすることは避けたい。リスクを取ってこのようなサービスを使うべきかどうか、わからない」と考えるユーザーもいるかもしれない。Customer.ioが配信率を最大化するためにユーザーのメールを分析することを確約しているのはそのためだ。

一部のユーザーは、当然のことながら、自社のデータを得体の知れないテック企業に渡して分析してもらうのは怖い、と感じるかもしれない。その点の信用度を高めるために、Customer.ioはデータの保護を保証している。

画像クレジット:Demand Curve

業界における信用を証明する

統計を使うことにより、信用があることをすぐに証明できる。例えば、ある企業が2021年だけで5億3500万件のウェブフックを送信したという事実を伝えれば、それはつまり、その企業が数多くの企業を顧客として抱えており、それらの顧客が同社の製品を使用していることを示すことになる。

扱うことができるデータの量について説明する際にも、文章より画像を活用した方が簡単だろう。

画像クレジット:Demand Curve

最終CTAと顧客からの推薦コメントで締めくくる

Customer.ioのランディングページでは、最後の数セクションで、プライバシー、セキュリティ、信頼について言及されており、それには理由がある。ユーザーの悩みを解決する機能をどれだけ用意したとしても、信頼を築くことなしにユーザーを勝ち取ることはできないことを、Customer.ioは知っている。だからこそ、同社は、どれだけの数の企業が同社に信頼を寄せているか、という点に言及してコピー文を締めくくっており、CTAのすぐ右側に、顧客企業のロゴを配置している。こうすることにより、サイト訪問者が同社に対して持つ信頼感をさらに高めることができる。

画像クレジット:Demand Curve

今回の分析を自社のホームページ作成に役立てるには

今回の分析を自社のホームページ作成に役立てるための主なポイントを以下にまとめてみた。

  • 製品の対象者は誰かを正確にユーザーに伝える。そうすることにより、対象者に該当するユーザーはより注意深くサイトを閲覧するようになり、対象者には該当せず、結局は購入に至らない訪問者をサイトから去らせることができる。
  • デモのリクエストをメインのCTAとしており、コンバージョン率が思わしくない場合は、無料トライアルをCTAとして追加してみる。
  • 画像のスタイルは重要ではない。重要なのは、製品の価値をユーザーに理解してもらうのに役立つ画像を使うことである。
  • 顧客の課題を解決する製品なのであれば、課題自体をそれ以上強調する必要はない。サイト訪問者が感じていることを見極めて、彼らの問題を解決する方法を提示する。
  • 特定の職業を対象とする製品である場合は、同じ職に就いている人たちからの推薦コメントを掲載する。その際には必ずその社名と役職名も掲載する。
  • サイト訪問者がタブウィジェットをあまり見ていないことに気づいたら、複数のナビゲーションオプションを試してみる。
  • 製品に対する最大の反論がセキュリティと信頼なのであれば、その反論に対応するために十分過ぎるほどのスペースを割いても問題ない。‍

画像クレジット:Klaus Vedfelt / Getty Images

原文へ

(文:Joey Noble、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。