レシピ動画サイトのdelyがソフトバンクなどから33.5億円の大型調達、新規事業やM&Aも視野に

この2年ほどで大きく市場を拡大させたレシピ動画サービスだが、その競争はさらに激化しているようだ。2017年末には「DELISH KITCHEN」を運営するエブリーが20億円超の資金調達を発表して業界を騒がせたが、今日1月22日には「kurashiru(クラシル)」を運営するdelyがその金額を上回る33億5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。今後は調達した資金をもとに、人材やマーケティングを強化。さらに新事業やM&Aなども視野に入れているという。

今回の資金調達はソフトバンク、YJキャピタルの運用するファンドであるYJ2号投資事業組合、アカツキ、ユナイテッドなどを引受先とした第三者割当増資。なおYJキャピタルやユナイテッドはdelyの既存投資家だ。今回の調達により、同社は累計約70億円を調達したことになる。

dely代表取締役の堀江裕介氏

delyは2014年の創業。もともとはデリバリーサービスを展開していたが、約半年でピボット。その後はキュレーションメディア事業を展開。その中で反響のあった「動画」を軸にして、現在のクラシルを作った。

クラシルは当初、FacebookやInstagramなどのプラットフォームに動画を掲載する「分散型」の動画コンテンツを配信していたが、その後スマホアプリを展開。2017年8月には、レシピ動画数が世界一になった(ナイルの「Appliv」調べ。料理レシピ動画掲載アプリ内のレシピ動画数)と発表した。同年12月時点でのアプリダウンロード数は1000万件を超えた。

「マーケティングコストをかけたこともあるが、テレビ(でのプロダクト紹介)での露出も多いので、マスへ展開できつつある。本来オンラインマーケティングとテレビCMだけでは時間がかかるところが、うまくいっている。僕自身もテレビに何回か出演しているが、そこまでになるとテレビCMを見てもダウンロードしてくれないような属性……例えばガラケー(フィーチャーフォン)からスマートフォンに変えたばかり、というような人にもリーチできるようになってきた」(dely代表取締役の堀江裕介氏)

そう語る一方で、「料理のサイトでは、お金がかかるのは分かっていた。50億円なり、100億円なり必要だと思っていた。スピードが速い戦いではあるが、想定どおりだ」(堀江氏)と周辺環境も踏まえて説明する。

クラシルでは現在、タイアップ広告のほか、アドネットワークと月額480円の課金サービスを展開してマネタイズを進めている。

「課金は積み重ねるモデルなので、直近は広告(アドネットワーク)が中心になる。またタイアップも順調。(クライアントとして)想定していた上位50社に関してはほとんどタイアップをやらせてもらった。メーカーの広告予算は『テレビCM+ネット広告』で毎年すでに用意されているので、(その年度の)途中から入るのは難しかった。だが、一度やってくれた企業は翌年の予算を用意してくれている」

「(クックパッドなどの競合と)コンペでバチバチに当たるかというとそうでもない。オンラインに対する予算は全体的に増えており、かつ分散している。彼ら(クライアント)にとって『次のヘビーユーザー』となる40歳以下の層は、テレビを観なくなってきている。そこに当てるのはモバイル動画。テレビが観られないようになってから、その層にアプローチするのでは遅い。そういう流れができている」(堀江氏)

業績については開示していないが、狙えば今年度の単月黒字化も見えている状況だという。「とは言えまだまだ成長フェーズ。(黒字化するより)広告費用にどんどんつぎ込む」(堀江氏)

また冒頭に触れたとおり、今後は新規事業の展開に加えて、スタートアップのM&Aや投資も検討しているという。

「料理のメディアだけに閉じたマーケットは(規模が)見えているので、会社としては事業を複数作ろうとしている。今で言えば仮想通貨回りだとか、いろいろなものがある。僕は『モバイル動画』の波(トレンド)にはギリギリ乗れたが、それまで大きな波はなかった。今の会社を経験しつつも、新しいことを探し続けるのは役目では無いのか。どこまでいっても『大きいこと』を言ってしまうので、いつも自分との戦い。でもそれを達成しつつあって、やっと“ほら吹き”から“マトモ”になってきた」(堀江氏)

現在は新規事業に向けた人材も採用中だ。海外で活躍するエンジニアなども新規事業に向けて採用を薦めているという。「情報を僕自身が取って、インタビューして、発信して、仲間を集めるフェーズだと思っている」(堀江氏)

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TechCrunch Japan

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