Discordがユーザーの反発を受けて暗号資産やNFTの調査を一時中断

Discord(ディスコード)の創業者でCEOのJason Citron(ジェイソン・シトロン)氏は米国時間10月10日、NFT(非代替性トークン)事業に手を出す差し迫った計画はないと発表し、ユーザーたちを安心させた。

シトロン氏は今週初めのツイートで、Discordのユーザーインターフェースに統合された暗号資産ウォレットMetaMask(メタマスク)の画像を、「probably nothing(おそらく大したことじゃない)」という発言とともにツイートした(これは、NFTの世界では、これから大きな出来事になることを示す隠語でもあるのだ)。同氏は、このツイートを水曜日の夜に補足して、Discordが暗号資産ウォレットをアプリに統合する「現在の計画はない」と発言した。

また、DiscordはTechCrunchに対して、計画を明らかにするために以下の声明を伝えてきた。

「今週初めのツイートでご覧いただいた内部コンセプトモデルについて、多くのご意見をいただけたことに感謝しています。しかし現時点では、これを実製品として提供する計画はないということをはっきりお伝えしたいと思います。私たちは、Web3テクノロジーの可能性ならびに、Discord上のコミュニティ、特に環境に優しくクリエイターを中心としたプロジェクトを中心としたコミュニティが、積極的に集まってくることに期待しています。しかし、解決しなければならない問題があることも認識しています。今のところは、スパムや詐欺、不正行為からユーザーを守ることに集中しています」。

シトロン氏は、元のスクリーンショットを、会社の公式発表としてではなく月曜日の返信ツイートでさりげなくシェアしたが、熱狂的なDiscordユーザーたちがすぐにこのツイートに飛びついた。同社はすぐに、このスクリーンショットはコミュニティのハックウィーク・プロジェクトの一部であり、Discordアプリの近未来像ではないと説明したものの、騒ぎは大きくなるばかりだった。

暗号資産スペースを警戒したDiscordのユーザーたちは、すぐにお互いにNitro(ニトロ)サブスクリプション(Discordの有料プレミアムサービスで、プラットフォームに広告がない状態を維持しているもの)を解約するように声をかけ合い始めた。反発が広がる中で、憤慨したDiscordのファンは、Web3とNFTについての意見を求める同社の最近の調査をも槍玉にあげた。

このスクリーンショットは、暗号資産ウォレットの統合がどのようなものかを示す単なるモックアップに過ぎなかったが、Discord自身は実際に、ブロックチェーン技術が既存のミッションをどのように補完できるかを積極的に模索していた。現在そうした作業の一部は中断していて、Discordは、プラットフォーム上に賑やかな拠点築いているコミュニティたちと、価値観を一致させるための最善の方法を再検討している最中だ。

Discordのユーザーの中には、暗号資産のマイニングが環境に与える影響を理由として、シトロン氏のツイートに対する激烈な反応をする人もいた。またより広く「NFTの類」に異議を唱える人たちもいた。しかし、Discord内の多くのNFTコミュニティさえも、ユーザーたちは暗号資産ウォレットの統合が、プラットフォーム上で横行する暗号詐欺を悪化させるだけだという懸念を示していたのだ。

2万の「いいね!」がついたあるツイートには「すぐにNitroを解約して、他のものを選択しよう。理由はCEOのツイートで十分だ」と書かれていた。「大きな声を挙げて、すぐに収益を減らしてしまうことが、現時点では唯一の変化の方策だ」。

シトロン氏の補足が示したことは、Discordはコミュニティに耳を傾けているということ、そして多くのNFTプロジェクトがプラットフォームのサーバーを本拠地としているものの、Discordのユーザーたちは、同社が暗号資産ビジネスに決して関わって欲しくないと思っていることは明らかだ。

反発を好む企業はないが、Discordの暗号資産への初期的な関心に対する否定的な反応は、同社のユーザーが現在の製品をどれだけ楽しんでいるかを本当に示している。ソーシャルメディアのユーザーは皆、変化を恐れている。たとえばInstagram(インスタグラム)のUIが少し変わっただけでどんなツイートが行われているかチェックしてみると良いだろう、その中でもDiscordのユーザーは、今ある製品を守ることに特に熱心なようだ。

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画像クレジット:Discord

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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