DIYショップやECサイト運営をする“創業78年のベンチャー”大都、GCPなどから4.5億円の資金調達

体験型DIYショップ「DIY FACTORY」やDIY用品のECサイト「DIYツールドットコム」を運営する大都は7月27日、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)およびみずほキャピタルを引受先とする総額約4億5000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。また今回の資金調達にあわせてGCPの仮屋園聡一氏が同社の社外取締役に就任する。

工具の卸問屋からスタート、創業78年のベンチャー

大都は1937年(昭和12年)にスタートとした、創業78年の会社だ。もともと工具の卸問屋として創業したという同社が、今回のように資金を調達し、ベンチャー的な事業展開をするきっかけとなったのは、3代目となる現・代表取締役の山田岳人氏が入社したことなのだという。

大都代表取締役の山田岳人氏

大都代表取締役の山田岳人氏

当初大阪のリクルートで勤務していた山田氏は2代目代表取締役の娘と結婚したことを契機に大都に入社。社員15人ほどの工具問屋だった同社で、自らトラックを運転し、問屋やメーカー、ホームセンターを自ら回っていたのだという。「その頃初めて決算書を見たが真っ赤な状態。問屋業だけでは売上は出るが収益も悪化する一方だった」(山田氏)

そこで2002年頃にオンラインで商品の販売を開始。楽天市場に出店するところからスタートして、山田氏が問屋業の合間に対応するというところから1年半でやっと年商100万円を達成。そこからは専任の担当者も採用した。

それでもECの売上で業績を変えられる状況ではなく、問屋業の収益悪化から2006年にはいよいよ廃業をするかどうかという状況になった。そこで先代の代表と話して「(潰れるくらいなら)好きにやっていい」ということになり、当時の社員を全員解雇するという苦渋の決断をする。そして問屋業を縮小させ、EC化を進めた。

商品点数の拡大が成長の契機に

EC事業は徐々に成長するが、2009年前半に売上が鈍化した。「それまでは商品数1万8000点で日本最大級のDIY用品のECサイトをうたっていたが、問屋として持っていた10万点の商品データベースへの対応を進めた。アイテム数が増えて価格と納期が明確であれば、商品は売れる」(山田氏)。現在では実に90万点という商品数を誇っている。

増える発注に対応すべく、メーカーへの発注のシステムも2010年に内製した。「DIY用品のメーカーだとPCすら持っていないというケースも多かったが、売上がついてくれば認めてくれる。現在では86%がオンライン化されている」(山田氏)

DIYの楽しさを伝えていくためのリアル店舗

商品数の増加によって売上は伸びたが、それでも2013年頃からまた鈍化した。山田氏がそこで考えたのは、「競合も出てくる中で、我々がやりたいことは何なのかと考えた。日本にはDIYの文化はそれほど根付いていない。そうであれば、工具の使い方や、作る楽しさを未来に向けて伝えないといけない」ということ。それを形にしたのがDIY用品を購入できるだけでなく、ワークショップを通じてDIYの体験ができるリアル店舗だ。同社は2014年、大阪・難波に体験型DIYショップのDIY FACTORY1号店をオープンした。

DIY FACTORY2号店の店内

DIY FACTORY2号店の店内

店舗には、メーカー向けに月額5万円の壁面展示スペースを25カ所用意した。「メーカー向けにショースペースを提供することで、メーカーは自分たちの好きな商品を出す場所を確保できる。実は日本一のペンチメーカー、ドライバーメーカーなどは(同社の本社がある)大阪にあるのだが、そんなものは多くの人に知られていない。そういうモノを紹介する場所を提供することでメーカーは認知を高め、ユーザーはいい工具と出会え、我々は売ろう売ろうとしなくても収益を担保できる、という三方よしになるように考えた」(山田氏)

メーカー向けに提供する展示スペース

メーカー向けに提供する展示スペース

実際、このスペースの収入もあって、店舗は初月から黒字運営を実現している。2015年には東京・二子玉川の二子玉ライズに2号店をオープン。休日には7000人以上が訪れることもあるそうだ。

店舗を運営してはじめて理解したことも少なくない。「『電気ドリルを下さい』なんていって店舗に来る人はいない。たとえば『洗濯機の上に棚が欲しい』とかみんなやりたいことがあって店舗にくる。だからそのために商品や使い方を説明しないといけない。これは店舗を出してやっと分かったことだ。ユーザーが欲しがっているのは『モノ(商品)』ではなく『コト(体験)』」(山田氏)。これを受けて、ECサイトでも「やりたいこと」を基準にした検索機能を実装した。

店舗運営、ECサイトに加えてハウツー動画サイトを展開

大都が今回の資金調達を契機に進めるのは、店舗の拡大、ECサイトの強化・改善、ハウツー動画サイト運営の3点だ。

まず店舗については、都心部を中心に複数店舗を出店。DIYやセルフリノベーション向けのワークショップを積極的に開催する予定。「ABCクッキングスタジオのDIY版といった立ち位置を取っていく」(山田氏)。次にECサイトについては、在庫商品を増やして即納体制を強化。さらにシステム面での機能強化を予定する。さらにDIYのハウツーを動画で紹介するサイト「MAKIT!」を展開する。以下はMAKIT!で実際に紹介されている動画の一部だ。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。