DMM英会話も「艦これ」も──DMM.comがビットコイン決済を開始、レジュプレスのサービスを活用

会員数1900万人に達する総合エンターテインメントサイト「DMM.com」が、2016年2月29日よりビットコインの受け付けを開始した。レジュプレスのビットコイン決済サービスcoincheck payment関連記事)を利用する。レジュプレスによれば、coincheck paymentを導入する会社数は2016年2月末時点で1138社にのぼる。もちろんDMM.comはその中でも最大のユーザーだ。

任意のビットコイン・ウォレットからビットコインを送金して「DMMポイント」を購入できるようにした。DMMポイントは、DMM英会話の支払いにも、「艦隊これくしょん -艦これ-」や「刀剣乱舞-ONLINE-」などゲームの課金にも使え、DMM.make STOREで販売するCerevo製品やUPQ製品の購入にも利用できる。DMM.make ROBOTSで販売するホビーロボット「Palmi」「Robi」「BOCCO」の購入にも使える。アダルト系サービスも購入可能だ。

ビットコインを使ったレート固定の即時決済を実現

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ビットコイン送金の画面。10分間、ビットコインと円の交換レートを固定し、その間に送金を済ませる。決済は瞬時に終了する。お薦めはQRコード読み取りに対応するスマートフォン上のビットコインウォレットから送金するやり方だ。

coincheck paymentは、ビットコインで交換レート固定の即時決済を可能とするサービスだ。その前提だが、ビットコインを決済手段として使う場合には次の2点がネックになる。(1) 法定通貨(たとえば円)との交換レートが激しく変動すること、それに (2) 決済の確定まで「1確認」で約10分間(これはビットコインのブロックチェーンのブロック1個分が生成される時間だ)、念を入れる場合は「6確認」で約60分の時間が発生することだ。10分、あるいは60分も待たされるようでは、ほとんどの消費者は購入をあきらめてしまう。

そこでcoincheck paymentでは、ビットコインと円の交換レートを10分間にわたり固定、その間に利用者に決済を終えてもらうようにした。利用者がレート変動により予想外の損失を出さないように配慮している訳だ。また決済は、ビットコイン送金の到着と同時、つまりほぼ瞬時に完了する。このようなことが可能になるのは、運営会社であるレジュプレスが、ビットコイン交換レートの変動のリスクと、ビットコインをゼロ確認で使うリスクを負ってくれるからだ。とはいっても、多くの決済を処理する中で交換レートの変動による損益は平均化されてゼロに近づく。ビットコインをゼロ確認で使うことについては、少額決済でもあり負担可能なリスクだと見ている。

この記事を書くため、実際にDMMポイントをビットコインで購入してみた。手続きは簡単でスムーズだ。ただし、必ずスマートフォン上のビットコインウォレット、それもQRコードを読み取って送金する機能を備えたものを使うこと(今回はMycelium Bitcoin Walletを使った)。PC(スマートフォンやタブレットでもいい)の上でDMM.comにログインしてビットコインでDMMポイントを購入するページを開く。QRコードが表示されたら、スマートフォンのウォレットを使って読み取る。これで金額と送金先ビットコインアドレスの両方の情報がウォレットに伝わるので、あとは送金ボタンを押すだけでいい。ちなみに、とある別のウォレットで試したTechCrunch Japanの西村編集長は、ビットコインアドレスをコピー&ペーストして金額を入力する作業を強いられて不満を口にしていたことを報告しておく。繰り返すが、必ずスマートフォンで動くQRコード対応のウォレットを使うこと(なお、ビットコイン取引所Coincheckから入金する方法もあるようだ)。

「とにかく、安価で、速く、簡単に支払える手段」としてのビットコイン

レジュプレスの取締役COO(最高執行責任者)大塚雄介氏によれば、「とにかく、安価で、早く、簡単に支払いできる手段としてビットコインを使いたい」との問い合わせが増えているそうだ。ビットコインといえば、暗号通貨としての側面、国家に依存しない非中央集権型の通貨の側面に魅力を感じる人々(ビットコイナー)が使うものとのイメージがあったかもしれない。値動きが激しいことから、投機の一種として運用されていたりもする。だが大塚氏の”皮膚感覚”では「安価で、早く、簡単に支払いできる手段」としてのビットコインの認知が進んでいるというのだ。実際、来日する外国人客にしてみれば、ビットコインは両替せずに使えるので便利だ。それに、ビットコインの相場が上がっているときには、ビットコインによる消費意欲も増える傾向があるとのことだ。ビットコインによる消費にも資産効果はあるわけだ。

板前Tips

「銀座沼津湊」では寿司職人へのチップをビットコインで送金できるようにした。

意外な使い道もある。回転寿司の「銀座沼津湊」では、寿司職人へチップをはずむときにビットコインを使えるようにした。寿司職人にチップをはずみたいと考える外国人客はかなりいるそうだが、物理的なコインを寿司を握る手で直接受け取るのは衛生上問題がある。そこで壁面に寿司職人の顔とQRコードが貼ってあって、その場でビットコインを送金できるようにした。ほか、外国人客に人気があるスポットとして、例えば京都の「Bar祇園」もビットコイン受け付けを行っている

最近、ビットコインなど暗号通貨への規制を盛り込んだ「資金決済法」の改正案が今期国会に提出されると日本経済新聞が報道した。金融庁が監督官庁となる。レジュプレスらは、法整備が進みビットコイン産業を活性化することを期待して、一般社団法人日本価値記録事業者協会(JADA)を結成してロビー活動を続けてきた。日本の行政機関も、ビットコインを筆頭とする暗号通貨や、活用が広がりつつあるブロックチェーン技術には強い関心を抱いているのだ。

ビットコインに関しては、技術、エコシステム、社会的インパクト、法制度など、多くの分野で膨大な議論がある。議論はもちろん大事だが、今回のDMM.comや、多くの小売店、飲食店などで”ふつうに”便利な通貨としてのビットコインの利用が広がりつつあることは、とても重要な動きだと思う。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。