Dovetail、顧客調査に特化したソフトウェア事業の拡大に向けて71.6億円調達

オーストラリアの顧客調査ソフトウェア企業であるDovetail(ダブテイル)は、Accel(アクセル)が主導する6300万ドル(約71億6000万円)のシリーズAラウンドを完了したと発表した。これにより、同社は総額7000万ドル(約80億円)強の資金を調達したことになり、同社が「7億ドル(約797億円)以上」とする評価額に新たな資金を加えたことになる。

この数字からもわかるように、これは一般的なシリーズAではなく、Accelによる、いわばレイターステージ(後期段階)の投資である。Accelはこれまでも、資金調達額が少なく、自己資金で運営していたテクノロジー企業が成長して大きな収益を上げるまで、大規模な投資を行ってきた

通常のシリーズAとは異なる今回のDovetailのラウンドについて、ここでは同社の初期の歴史と、同社が作っているものから説明する。

ゼロからの起業であったDovetail

TechCrunchは、Dovetailの共同創業者でCEOであるBenjamin Humphrey(ベンジャミン・ハンフリー)氏に、今回の増資について、会社の創業当初にさかのぼって話を聞いた。ニュージーランド出身のハンフリー氏は、ベイエリアのテクノロジー企業で勤務した後、オーストラリアのAtlassian(アトラシアン)に入社して数年間在籍。その後、ベンチャーキャピタルに頼らずにDovetailを共同創業した同氏は、Buffer(バッファ)やBasecamp(ベースキャンプ)といった有名なテクノロジー企業のように、自己資金で会社を成長させていくことを計画したという。

ニッチに聞こえるかもしれない顧客調査市場向けのソフトウェア開発だが、Dovetailは創業当初から十分な支持を得て、チームを6人に拡大し、年間約50万ドル(約7000万円)の売上を自力で達成するまでに成長した。その時点でベンチャー投資家からのアプローチがあり、2019年に約500万豪ドル(約4億円)というごく小さなラウンドを完了した、と同氏は話す。

そのラウンドに参加したFelicis Ventures(フェリシスベンチャーズ)は、2020年末に向けてさらに資本を投入したいと考えていたという。ハンフリー氏によれば、資金は十分だったので、市場でのポジションを示すために1億ドル(約114億円)を超える評価額で1回目のシードラウンドを完了した(教訓:資金調達に関しては、利益を上げて成長していることが真に「おいしい」スタートアップである)。

現在もこの調子である。新しい投資家であるAccelのRich Wong(リッチ・ウォン)氏とArun Mathew(アルン・マシュー)氏によると、DovetailはAccelが投資する機会を得るまで、調達した資金総額の半分しか使っていなかったという。

市場に「ソフトウェア企業は資金を消費せずに成長できる」という傾向はない。つまり、Dovetailが作っているものを買いたいという顧客がすでに存在したということである。

Dovetailが販売しているもの

前述のAccelの2人は、Dovetailが構築しているものを「顧客調査のための記録システム」という新しいカテゴリーで表現する。

ハンフリー氏はもっと平凡な言葉で、自社の製品を「リサーチャーのための生産性向上ツール」と称し、エンジニアにはGitHubがあり、デザイナーにはFigmaがあるが、顧客のリサーチャーには独自のソフトウェアが必要だと指摘する。同氏はさらに、シリコンバレーやもっと規模の大きいスタートアップ企業は、R&Dの「開発」部分のツール開発には力を入れてきたが「研究」部分はそうではなかった、と付け加えた。

Dovetailの製品は、NPS(ネットプロモータースコア)調査、音声、動画、テキストの回答からユーザーのフィードバックデータを収集し、それをチームでタグ付けして機械で分析し、組織全体で共有することができるソフトウェアである。ハンフリー氏によると、顧客に関する組織的な知識を蓄積し、より迅速な意思決定を行えるようにするための企業向けのリレーショナルデータベースを構築することが目標だ。

例えば、プロダクトマネージャー(PM)が会社を辞めると、彼らと同時にかなりの量の知識がなくなってしまう。新しいPMは知識がないので、仕事を回すために会社中を質問して回らなければならない。Dovetailの製品を使えば、調査から得たデータや知識を永続的に保存して利用することができる。

成長

筆者はDovetailの活動について学んでいる最中なので、同社が顧客調査ソフトウェア市場を開拓していく中で、より多くのことが達成されることを期待している。現段階でいえることは、Dovetailは雑草のように成長しているということだろうか。ハンフリー氏によると、同社は2021年、収益と顧客数を3倍にしたという。すべてセルフサービスで、数カ月前に初めてアカウントエグゼクティブを採用した企業が、である。まさしく製品が主導する成長だ。

製品主導の成長とは、実際のサービスや商品が顧客を引き寄せるという考え方で、本質的にはプロダクトマーケットフィット(PMF、顧客を満足させることのできる製品が適切な市場で受け入れられている状態)の概念を再構築したものである(あるいはPMFの本来の意味をさらに純粋にしたものかもしれない)。いずれにしても、投資家によれば、Dovetailはまだ創業からそれほど時間が経っていないにもかかわらず、2022年も前年と同じ成長率を達成するか、少なくともそれに近くなるという。同社はすでにユニコーンに近い存在なのだ。

ハンフリー氏自らが、今後数カ月間に新たな資本のニュースを教えてくれることはないだろう。2022年の後半に同社の成長について彼を質問攻めにしようと思う。

画像クレジット:Vladyslav Bobuskyi / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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