Draper Nexusが1億7500万ドルの第2号ファンドを組成:LPにパナソニックやキヤノンなど

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アーリステージVCのDraper NexusでManaging Directorを勤めるQ Motiwalaは、同社が総額1億7500万ドルの第2号ファンドを組成したことを明らかにした。第1号ファンドは2013年に組成され、その規模は5000万ドルだった。

世界中のテクノロジー・コングロマリットがLPとしてDraper Nexusに参画しており、その多くは日本企業だ。

第2号ファンドには、パナソニック、日立、京セラ、清水建設、NEC、キヤノンなどを始めとした20社がLPとして参加している。どのような分野のアーリステージ・スタートアップでも、ぜひクライアントに加えたいと思うような企業ばかりが揃っている。

Draper Nexusは、マーケティングのLiveRampや、AIベースのサイバーセキュリティのCylance、自動運転車のNauto、商業ビル向けスマート電気システムのEnlightedなどに出資していることで知られている。

比較的若いVCであるにもかかわらず、エグジットを果たした投資先企業の数はすでに8社になる。その中でも特に有名なのは、2014年に東証マザーズに上場したソフトウェア・テスティングのSHIFTだろう。同社のビジネスは好調で、Draper Nexusは今でもSHIFTの株式を保有したままだ。

より大規模かつ歴史のあるシリコンバレーのVCとDraper Nexusとの違いは、大企業とスタートアップをつなげる力だ。

Motiwalaは、「Draper Nexusが投資する際には、単に私たちが面白いと感じたかどうかという事だけではなく、ファンドに参加する大企業を取引先や流通パートナーとして紹介することで、スタートアップに優位性を与えられるかどうかという事を考えます。私たちのファンドに参加している大企業とスタートアップは、痛みを分かち合う仲なのです」と語る。

Draper Nexusは1社の投資先に複数の大企業を紹介し、起業家と大企業の役員を引きあわせている。Draper Nexusがいなければ、起業家が会うことすらも難しい相手だ。

第2号ファンドでは、モビリティ分野やサーバーセキュリティ分野、そしてビックデータをロボティクス、AI、ロジスティクス、保険などの分野に適用している企業などに投資していく予定だ。

Draper Nexusのチームの3分の1は東京におり、残りのメンバーはSan Mateoを拠点としている。同社は日本地域にフォーカスする企業に投資をすることもある。

Motiwalaによれば、同社が日本で探しているのはマーケティング・オートメーションやアドテック分野のスタートアップだという。日本のB2B向けソフトウェアは、まだまだアメリカほど活発ではない。

Draper Nexusが出資した金額の8割はアーリーステージ企業への投資に向けられており、今後もそこにフォーカスしていくことは変わらない。

彼らは他のVCと共同で出資をすることが多く、シリーズAでは最高で500万ドルまで投資する。Motiwalaによれば、有望な企業のシリーズAを逃した場合にはシリーズBに参加することも考えるという。シード投資は全体の約5%程で、そこでは通常、25万ドルを出資する。

同社の期待の新星、Senior AssociateのDeepak Jagganathanは、第2号ファンドの組成とあわせて動き出した新しいプログラムの運営に携わっている。

Dubbed GoPilotと名付けられたこのプログラムは言ってみれば、すでに企業としての形が出来上がっていたり、資金調達も済んでいるようなスタートアップ向けのアクセラレーターのようなものだ。

このプログラムでは、企業向けソフトウェア、サービス、ハードウェアを提供するアーリーステージのスタートアップが招待され、5社から10社の大企業に対してピッチを行う。クローズドで行なわれるデモデイのようなイメージだ。

このプログラムで優秀な成績を残すことができれば、2社の大企業とパートナーシップを結ぶことが許される。さらに5万ドルが創業者に有利な条件でDraper Nexusから出資される。この資金を利用することで大企業とのジョイント・プロジェクトを進めていくことが目的だ。

「このプログラムから、すでに50ものパイロットプロジェクトが誕生しています。スタートアップと大企業との共同プロジェクトを、通常よりも短い期間で実現させるためのテンプレートをつくり上げてきたのです。このような共同プロジェクトは、スタートアップにとって非常に重要な通過点なのです」とJagganathanは話す。

大企業が単独でパイロットプロジェクトを始めるためには内部資金を用意しなければならず、そのせいでプロジェクトの開始が遅れかねない。それを考えれば、他社と共同してパイロットプロジェクトを進めることには大企業にとってもメリットがあると言える。

また、Draper Nexusを通しらスタートアップと大企業との各種契約は、スタートアップに不利なものになることがないよう徹底されている。スタートアップが自らの知的財産を守ることを可能にしたり、独占契約によって彼らの成長が妨げられることを防ぐためだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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