Dropbox、e署名とワークフローのHelloSignを2.3億ドルで買収

今日(米国時間1/28)、 DropboxHelloSignを買収することを発表した。HelloSignは電子署名と軽量のドキュメント・ワークフロー・サービスを提供するスタートアップで、買収価格は2億3000万ドルだったという。

Dropboxのエンジニアリング担当副社長、Quentin Clarkは「この買収は単にDropboxのサービスに電子署名機能を追加するだけでない」という。2017年にHelloSignが追加したワークフロー機能が買収の本当の鍵だったという。ClarkはTechCrunchの取材に対して次のように述べた。

HelloSignのユニークな点は、APIやワークフロー製品への投資が、われわれの長期的な方向性と非常によく一致している点にある。Dropboxに機能が増えるというのに留まらず、幅広いビジョンの下にわれわれの事業を拡張していくために役立つ。現在のDropboxソリューションの核心はストレージ機能だが、われわれは長期的にこれを拡大していくビジョンを持っている。

Dropboxが昨年追加したエクステンション機能もこの文脈で見る必要がある。実際にHelloSignはDropboxエクステンションのローンチ時点で機能を提供した企業の1つだった。。 Clarkによると、同社は引き続きDropboxソリューションの拡張をサードパーティーに求めていくが、今日の買収により他社との提携を必要としない独自機能が提供され、すでにエクステンションを介してDropboxに連携されているという。
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インテグレーションのスピードアップ

Deep Analysisのファウンダー、プリンシパルアナリストのAlan Pelz-Sharpeは、この市場を長年モニターしてきたベテランだが、「HelloSignがエクステンション・サービスのパートナーであることが重要。買収した企業を本体に統合することが通常の場合よりはるかにスピードアップされる。また大企業以外の企業では大部分の文書がオフラインで個別処理されている。HelloSignが不動産、保険、顧客社員関係などの一般的なソリューションに加えて、すでにDropboxの既存のエクステンション機能を備えている。このためHelloSignの各機能がDropboxの事業拡大にすばやく利用できることを意味している」という。

Pelz-Sharpeは、買収金額からするとDropboxがこうした能力を強く欲していたことが推定できると付け加えた。「財務指標からすると非常に高い価格だがこうした急成長分野における有望スタートアップの買収としては不合理な金額ではない。同時にここまで価格がアップしたことは他にもHelloSignの買収に意欲的な企業があったことがほぼ確実に推定できる」と述べた。

HelloSignのCEO、Joseph Wallaは、同社のブログ記事でこう述べている。

Dropboxのメンバーとなることで、HelloSignが上場大企業のリソースにアクセスできるようになり、これまでよりいっそう広い市場に参入できるようになる。Dropboxと連携させることで、幅広い顧客によりシームレスなドキュメントワークフローを提供し、われわれのソリューションのインパクトの拡大を劇的に加速することができるだろう。

HelloSignは独立を維持する

元Box、元EMC Documentumで現在はHelloSignのCOO、Whitney Bouckは「われわれは後も独立したブランドとして運営される」と述べた。つまりHelloSignはDropboxファミリーのメンバーとなるが、運営形態は現状のままということだ。またClarkはHelloSignの社員全員がDropboxで雇用されることを保障するのが買収条件の一環だったと示唆している。【略】

エンタープライズワークフローを専門とするConstellation Researchのアナリスト、Alan Lepofskyは、「HelloSign買収でDropboxは有力なエンタープライズ向けワークフローツールを獲得したわけだが、エンタープライズのドキュメント管理に高い実績、ノウハウを持つWhitney Bouckをスカウトできたのも大きなボーナスだ」と述べた。また 「これはもちろん人材獲得のための買収ではないが、Dropboxは、エンタープライズ向けにサービスを拡大する事業分野ですでにリーダーと認められているWhitney Bouckを獲得することにも成功した。Bouckは彼女の以前の雇用者であるBoxとの競争でDropboxに大きな助けになる可能性がある」 とLepofskyはTechCrunchに述べた。

DropboxのClarkは、「現在のエクステンションとは別にHelloSignの機能ををDropbox本体にバンドルしていくかは具体的に説明するには時期が早すぎる」と語った。しかしClarkはHelloSignが独自の顧客を持つ独立ブランドとして運営されていても、両社それぞれのプロダクトを統合する方法を見出すだろうと期待してると述べた。

HelloSignはサンフランシスコを本拠として2011に創業したスタートアップだが、これまでに1600万ドルしか資金調達を行っていない。今回の買収は投資家には大きなリターンを約束するものだし、もちろんHelloSignにとっても理想的なエグジット(現金化)となった。

買収手続きは2019年第1四半期中に完了できる見込みだという。通常どおり、規制当局による承認を必要とする。


(日本版)恋人がデートに契約文書とスキャナー、携帯発電機を持ってやってきた。なんでスキャナー? HelloSign使えば? というCM(音に注意) DropboxのHelloSignエクステンションを利用すれば契約書をDropboxに保存して関係者の電子署名を求めることができるという。

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滑川海彦@Facebook Google+

投稿者:

TechCrunch Japan

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