Dropboxが日本市場へ本格参入、東京支社設立に向けカントリーマネージャーを募集中

Dropboxが東京支社設立に向けて、カントリーマネージャーを探している。来日中のDropbox COO、デニス・ウッドサイド(Deniss Woodside)氏によれば、今回来日の目的はズバリ、日本法人立ち上げの第1号社員を見つけることだそうだ。

法人設立時期や規模については明言しなかったが、カントリーマネージャーとなった人物に組織作りを任せるということで、その後に他社とのパートナーシップやディストリビューターとの契約も進めるという。東京に支社設立となると、シドニー、ダブリンに続いて3番目。ヨーロッパやアジア、南米でも拠点設置を検討しているそうだ。

「日本、とくに東京への投資をします。日本は世界第3位の経済大国ですし、Dropboxのユーザー数で言っても日本はトップ5に入っています。これまで日本では特にPR活動も何も行なってこなかったのに、すでにユーザー数は800万以上います」

Dropboxは過去18カ月でユーザー数が1億人から3億人へ増えていて、このうち70%が北米以外の海外ユーザー。日本市場もかなり大きいようだ。なかでも企業向けの「Dropbox for Business」の日本市場での伸びは大きく、「この領域だけで過去1年で2倍に伸びています」という。「どんな業態であっても、10%から20%の従業員がすでにDropboxを業務用途で使っているのです。CIOは誰がどのファイルに対して何をしているのかといった可視化を求めるので、Dropbox for Businessがソリューションとして浮かび上がってくるという形です」

コンシューマー市場で広く受け入れられた使い勝手の良い製品が、企業内個人というべき個人レベルから企業内へ広がる動きは、BYOD(Bring Your Own Device:自分のデバイスを持っておいで)なんて言われてる。この動きが顕在化したのはiPhoneで、その流れは今、サービスでも起こっている。

2007年創業のDropboxは登場当時としてはクラウドストレージとして後発だったものの、瞬く間に市場を席巻。その後、Google(2012年)やApple(2011年)など大手もクラウドストレージをリリースしていて、競争は激化している。企業向けではBoxも北米市場で伸びていて、先日日本市場に参入している。ストレージ単価については、Google Driveが月額9.99ドルで1TBの容量を提供したりMicrosoftが企業向けは1TBとするなどパワーによる殴り合いの様相。さらに、Googleはマイクロソフトのオフィス製品をシームレスにクラウドに統合してしまうなど、クラウドストレージ専業のDropboxは、かつてほど安泰ではないように見える。

容量無制限をうたうDropbox for Businessは別として、個人向けのストレージ単価でみれば、Dropboxは現在100GBで9.99ドルと、かなり割高となってしまっている印象もある。この点についてウッドサイド氏に聞いてみたところ、「スマフォを買うときと同じで、価格だけが決定的要因ではありません。最も重要なデータを預けるのですからね。サービスの違いを消費者もビジネスユーザーも理解してくれます」とのこと。競合と比べた時のDropboxの良さは、「信じられないほど直感的で使い勝手の良さ、いつでもちゃんと問題なく動くということ、エレガントなデザインなど、そうしたこと。それから、消費者向けとしてもビジネス向けとしても、どちらもちゃんと動くということです」との回答だった。

個人向け市場でみれば、クラウドストレージの入り口といえるのは、もはやスマートフォン。写真、そして次に来るのは動画だ。そうだとすると、Androidを持つGoogle、iPhoneを持つAppleにどう対抗していくのか? Google Photoだと単語による検索(「自転車」で検索すると、自転車の写った写真がでてくる)ができたり、自動修正や自動アルバム化機能、連写したスチル写真を認識してアニメーション化して見せてくれる機能まであるなど、アップロード後の機能が極めて充実してきている。

「ユーザーにDropboxを選ぶ理由を聞いたところ、特定のプラットフォームに紐付いていないことという答えが多くありました。これは非常に大きな価値です。特定企業のクラウドだと、どうしても自社サービスにロックインするように最適化することになりますからね」

これはその通りで、たとえばGoogle Photo上の写真で「共有」ボタンを押すと、出てくるのはGoogle+への投稿画面のみ。Facebookで共有するという選択肢がなくて驚く。ユーザーのデータはユーザーのものと言っていられないGoogleの焦りすら、ぼくは感じる。

「デジタル写真については、まだまだ解くべき多くの課題があります。まだこれから多くのイノベーションが起こるでしょう。(Dropboxが先日リリースした写真管理・共有アプリの)Carouselは、まさにそうしたプロダクトです」

Carouselは、Dropboxが2013年に買収したメールアプリ「Mailbox」のチームメンバーの一部から出てきたプロダクトだそうだ。買収を通して優秀な人材を確保する「アクハイヤー」(acqhire)だったのか聞くと、「そうとも言えますね。技術系企業の買収が成功だったかどうかが分かるのには数年かかることもあります。ただ、どんなテック企業でもアクハイヤーは戦略的に組み込まれているものですよ」だそうだ。


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TechCrunch Japan

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