eコマース向けレコメンデーションテックのLily AIが約14億円を調達

Lily AIは、ブランドが顧客の気持ちにぴったりとくるレコメンデーションをできるようにサポートするために深層学習を活用している。1月9日、Canaan PartnersがリードするシリーズAラウンドで1250万ドル(約14億円)を調達したと発表した。既存投資家のNEAUnshackledFernbrook Capitalも本ラウンドに参加した。

Crunchbaseのデータによると、Lily AIがシリーズA以前に調達した資金は数百万ドルにとどまる。

今回のラウンドが注意をひく理由はいくつかある。まず、本ラウンドをリードした投資家Maha Ibrahim(マハ・イブラヒム)氏はThe RealRealシリーズAもリードした。The RealRealも衣服にフォーカスしている会社で、2019年に上場した(イブラヒム氏は、こちらのビデオを含め、時おりTechCrunchにも登場している)。関連する業界の会社のアーリーラウンドをリードする投資家として注目に値する。

Lily AI共同創業者のPurva Gupta(パーヴァ・グプタ)氏と Sowmiya Chocka Nara(ソーミヤ・チョカ・ナラ)氏が構築したテクノロジーはこざっぱりとしている。グプタ氏は以前Eko IndiaUNICEFで、ナラ氏はBoxで働いていた。

TechCrunchが最初にLily AIを取り上げたのは、2017年に同社がNEAから200万ドル(約2億円)を調達したときだった。当時、Lily AIはiOSアプリ、ウェブアプリ、そしてAPIを展開していた。小売が自前のカタログやネット店舗で、「女性のファッションに関する好みをより理解する」のをサポートするAPIだ。

TechCrunchとの電話インタビューでグプタ氏は、ビジネスモデルという観点から2人が構築したテクノロジーは「企業プロダクト向け」だという結論に至った、と述べた。iOSアプリの優先度は徐々に下がり(CEOによると立ち上げから1年もしないうちに)、2018年初めには企業向けのサービスにフォーカスする方向に動いていた。

Lily AIは何をしていて、小売大手に何を売っているのだろうか。それはeコマースをパワーアップさせるものだ。

いかに機能しているか

Lily AI設立時の仮説はグプタ氏の経験からきている。同氏はニューヨークで何百人もの女性に最近何を買ったかを聞いて回った(同社創業に関するストーリーはここで読める)。この試みで、どの客も気分にまかせて買い物していることがわかり、「体についてどう思っているのか」「異なる種類のディテールやアイテムにどう対応しているのか」という疑問が生まれた。

グプタ氏は、そうした要素をオンラインショップに盛り込めたら、おそらく消費者が欲しいものを探し出すのをサポートでき、それと同時に小売の販促もサポートできると考えた。オンラインショッピングするときの「各顧客」の「それぞれの感情的なコンテクスト」を知りたかった同氏によると、これがLily AIの仮説だ。

こうした考えが、シリーズAでの1250万ドル調達につながった。この額はそれまでに調達した総額よりもずっと大きい。

Lily AIのサービスは3つのステップから成る。まずカタログにある商品についてかなり多くの特性を引き出すことができるテックを使う。特性が多岐にわたるほど、商品ついてより多くの情報を得ることができる。グプタ氏はTechCrunchに対する電子メールの中で、Lily AIのアプローチは、スタイルや着心地、着るシーンなど、顧客がアパレルを購入するときに求めていることに基づいてそれぞれのプロダクトのかなり多くの詳細情報をとらえることができると述べた。

そしてLilyはすでにブランドが集めた「細切れ状態の顧客データ」を使う。カタログにあるさまざまな商品のあらゆる特質を顧客が好むかどうか自信を持って予測できるよう、顧客データを商品の特質と照らし合わせる。そこからはレコメンデーションの世界だ。

グプタ氏によると、こうしたプロセスを適用することでLilyの全クライアントのパフォーマンスが「さらに改善する」だけでなく、「あらゆる指標が上向く」ようになる(同社のウェブサイトには、顧客のプロダクト購買の利益率が10倍になると書かれている)。

Lilyのサービス料金はボリュームに応じている。Lilyの売上はかなりのものになるはずだ。Canaanのイブラヒム氏によると、eコマースは年15〜20%成長を続ける見込みで、2020年に全小売消費額は20%ほど伸びる。eコマース消費額は最大4兆ドル(約438兆円)とかなりの額になる。つまりLilyが成長する余地は大きく、これはベンチャー投資家が好ましく思う点だ。

最後に1つ。電話でのインタビューで、プライバシーについてグプタ氏に尋ねた。結局のところLilyはブランドが恩恵を受けられるよう、消費者の好みを他の情報とペアリングさせている。消費者のプライバシーをいかに守るかについて、ぜひとも拡大してほしいと思う興味深いことを同氏は語った。それは、いかに他人の気持ちを汲むか、だ。これは共感として知られるものだが、Lilyは次のように述べている。

顧客がスタイリッシュでいられるよう、そして最高の気分でいられるようにLily AIを立ち上げた。プロダクトの構築や雇用、人材の囲い込み、企業文化の醸成など全ての面での指針に「共感」を盛り込んでいることを誇りに思う。

スタート地点としては悪くない。

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(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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