eブックの価格と販売量を分析する―英米で大きな傾向の相違があった

編集部:この記事は本の比較サイト、LuzmeのファウンダーRachel Willmerの寄稿

読者はeブックにいくらなら払ってよいと考えているだろうか? 9.99ドル? 0.99ドル? 逆に売る立場だったらどうだろう?

 昨年、Luzmeは大量のeブックの販売データを入手して分析を試みた。以下に私が興味を感じた結果を紹介したい。決して包括的な分析ではないが、議論を始める材料になるのではないかと期待している。

対象はAmazonで2013年にLuzmeを経由して販売されたAmazonのeブックの実際の価格である。

アメリカ市場

アメリカ市場のデータについては10ドルを基準としてグラフ化してみた。

グラフはそれぞれの価格帯で何冊売れたかを表している


価格の安いほうの端でいちばんたくさん売れており、価格が高くなるにつれて次第に減少している。しかし10ドルの部分に局所的な山がある。

10ドルの山を別にすればだいたい予期されたとおりの結果だ。ただし意外だったのは10ドル以上の高価格帯のeブックの売れ行きだった(この点については後で触れる)。

では価格帯別の売上高を見てみよう。

ここでは9-10ドルの価格帯の山がもっとはっきり見える。これはおそらく版元側が10ドルという価格を適正と考えて値付けしていることの表れだろう。.

イギリス市場

ところがイギリス市場の様子はアメリカとまったく異なる。こちらも6-7ポンド(おおよそ10ドルに相当)を中心に正規化してある。

イギリス市場では、1ポンド以下(主として0.99ポンド)の価格帯の販売量が断然多い。価格に反比例して販売量は減少していき、5ポンド(7.50ドル)以上では全くといっていいほど売れていない。


売上高についても同様で、5ポンド以下の価格帯が大部分を占める。

10ドル以下の価格帯で大部分の本が売れていることについて理解は難しくない。

Luzmeのユーザーにインタビューした結果では、大きく2つのカテゴリーが存在することがわかった。一つは毎週のように新しい本を買う熱心なユーザーで、どんな本であれその時点で安い本を好む。もう一つは層は特定のジャンルの本に関心を持つユーザーで、そう頻繁に本を買うわけではないが、値段はあまり気にせず欲しい本があれば買う。

しかしそれにしてもアメリカとイギリスではこれほど差があるのだろう?

イギリスではAmazonと新規参入したeブック・プロバイダとの間に激烈な価格競争がある。以前はソニーとNookだったが、現在はSainsburysが主要なライバルだ。以前はソニーが0.2ポンドの特別価格で攻勢をかけていた。現在では安売りは00.99ポンドが主流のようだ。

これに対してアメリカではNetflix、Spotifyなどeブック市場への新規参入組は定額(サブスクリプション)モデルで既存のライバルに挑戦している。

要約

Luzmeから見た2013年の意外なeブック事情

アメリカ

  1. アメリカではeブックは1ドルから10ドルまでのどの価格帯でもほぼ同じように売れている。
  2. 売上冊数がもっとも多いのは1-2ドル。
  3. 売上高がもっとも多いのは9-10ドル。
  4. 100ドル以上の高価な特別版も売れている

イギリス

  1. アメリカと様相が大きく異る
  2. 5ポンド(7.5ドル)以上のeブックはほとんど売れていない。
  3. 売上冊数がもっとも多いのは1ポンド以下。
  4. 売上高がもっとも多いのも1ポンド以下。
  5. 高価な特別版が売れている様子はほとんどない。

ちなみに、

  1. Digital Signal Processing in Power System Protection and Controlは134.84ドルもする!

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。