Eメールの賽の河原問題

結婚を考えている現代人に与えるべき助言:「結婚する前にこれを考えること。『自分はこの人が携帯電話を見続ているところを、残る人生見続けたいだろうか?』」

ギリシア神話のシーシュポスは、神々の怒りに触れた罰として、毎日巨大な岩を山頂まで運び上げ、ようやく運び終えると岩が転がり落ちるということを繰り返した。

人間のデジタル環境に関する金言は山ほどあり、実に示唆に富んだものも多い。「Eメールとは他人から与えられたto-doリストである」は私のお気に入りの一つだ。あるいは、この記事の最初に挙げたのもそうだ。もっと堀り下げてみたい人のために、「メールの問題はそれがメールであること」もある。ただし、メールはあらゆる人間的コミュニケーションの頼りになる代役にすぎないことを知っておく必要がある。

IT業界の人間なら、1日に16時間メールに返信を続け、他に何も触れないこともできるだろう。未読ゼロというバカげた目標を達成しても、翌朝起きた時には未読276だ。.

それは抗し難くばかばかしいが、その数字に安心感や便利さを覚える人たちのために、われわれはメールをばらまく。タクシーの中でメールに返信する。あるいは食事の直前、ひどい時にはセックスの後に。あなたは、人よりも自分の携帯電話の方が魅力的に感じ始め、実際の会話よりもデジタル会話を好むようになる。携帯電話は、ドラッグに一番近い存在となり、空き時間や、自分の最も親密な時間に行うことが仕事になる。あなたは実存主義の教科書的事例だ。

ふつうの言葉でいえば、ダメ人間である。

「愚かさに気付くためには自殺が必要か?」とはシーシュポスの神話のアルベール・カミュ自身による解釈だ。「いや、抵抗が必要だ」と彼は答えた。そして、自動返信を設定して自分がいかに重要かをアピールすることは、これまた実存主義の典型例であり、答にならない。メールに不満を漏らすブロガーは、自分がいかに人気者であるかという不満を言っているだけだ。私の未読は4万6761 ― 成功を示す問題だ。

この場合、毎日メールに6時間以上費やす前に必要な抵抗は、返信を期待しないよう人々を教育することだ。そして、返信がない時に必要なら電話や何か他の方法を使ってもよしとすること。さもなければ、あなたはトイレからメールを送る人間になってしまう。

あの岩に近づいてはいけない。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。