Epic Gamesが超リアルなキャラを柔軟に制作できるUnreal Engineの3Dツール「MetaHuman」披露

ますます精細さを高めるゲーム世界で最も難しい仕事の1つは人物、特にリアルな顔の制作だ。米国時間2月10日、ゲーム大手のEpic GamesはUnreal Engineの新しいキャラクター作成ツールを披露した。このMetaHuman Creatorは無限の種類のフォトリアリスティックなデジタル人物画像をこれまでよりもはるかに少ない手間で作成できる。

MetaHumanは、キャラクターデザインのツールで、用意されたプリセットを組み合わせて大まかな造形を行い、次いで細部の修正を行う。この解像度、照明でキャラクターをレンダリングするために必要なコンピューティング能力、ストレージ量は膨大になるためクラウドでホストされるサービスとなる。

高精細度のキャラクタークリエーターを使えばすぐに気づくはずだが、ヘアスタイル、耳、ヒゲ、唇など用意されたプリセット、デジタル版の「Mr.ポテトヘッド」のように追加したり取り替えたり微調整を加えたりできる。まさかこんなことができるようになるとは誰も思わなかっただろう。

Metahumanが生成した顔のクローズアップ。肌の反射率としわの詳細を示すCG(画像クレジット:Epic)

Metahumanと「Cyberpunk 2077(サイバーパンク2077)」のようなコンシューマー向けゲームで利用されているクリエイターツールとの違いは精細度と柔軟性にある。動画を見ればわかるが髪、肌、目、歯などのクオリティが圧倒的に高い。年配のアジア系男性が顔を動かすと顔のしわが変形し影ができる。肌への光の効果も中央の女性と左の男性ではまったく違う。

中央の女性は最初は中年男性としてスタートする。一気に「女性」に変形するプリセットを適用するのではなく、鼻、目など細部を1つずつ微調整していく。こうした操作を加えても顔が「壊れない」ことが示される。調整失敗で顔を「壊してしまう」のは多くのクリエイターが手こずらせてきたリスクだ。下の動画でプロセスの概要を見ることができる。

Metahumanには通常のクリエーターツールも組み込まれており、さまざまな方法でアニメーションを作成し、メッシュを調整することができる。また他のツールで使用するため3Dモデルのエクスポートも可能だ。

このレベルの精細度自体は前例のないものではない。しかし極端なクローズアップや微妙な細部の表現のレンダリングには膨大な作業量が必要だ。Epic Gamesのアプローチは、人物や照明などのレベルをアップするだけでなく、ゲームに実装することを大きく効率化する。潤沢なリソースを持つ大手ゲームメーカーだけが高精細度のキャラクターを作れるというのでは、ゲームビジネス全体としてはメリットが小さい。

Epic Gamesは最近もRAD Game Toolsを買収しているが、3LateralやCubic Motionなどこの分野のエキスパートを擁する企業を買収するとすぐにクレジットにそれらの会社名を加えた。Unreal Engineはコンピューターグラフィックにおける一枚岩的なプラットフォームとして紹介されることが多いが、実は数多くの細部から組み立てられている。

関連記事:Epic Gamesが老舗ゲーム開発ツール会社RAD Game Toolsを買収

現在は買収されてEpicの事業部となっている数十の企業による無数の改善と進歩を非常に巧妙に融合させたものだ。これは現在の主要OSが多数のアプリを組み合わせたものであることに似ている。

MetaHuman Creatorはまだ誰もがすぐに使用できる状態ではない。しかしEpic Gamesは早期アクセスプログラムを実施しているので興味あるユーザーはサインアップできる。現在Unreal Engineを使っているのであれば、この環境で操作できるキャラクター2体がテスト用に提供されている。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:Epic GamesUnreal Engine

画像クレジット:Epic

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:滑川海彦@Facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。