Equal Venturesは61億円のデビューファンドを決めてテーゼ型シードを推進

この数年間、ユニークでハイリターンな機会をスタートアップ界に求めファンドが上下する中で、ベンチャー投資会社が急増している。大きなファンドは、次第に小さなラウンドに投資するようになり、そのためシード投資家は、彼らがそこに存在するそもそもの意義を、より慎重に見極める必要に迫られている。

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Richard Kerby(リチャード・カービー)とRick Zullo(リック・ズロ)が出した答は、慎重にテーゼを構築して、確固たる意志を持つ少数の投資家たちと綿密に協力し合うことで、シード投資家は今でも優位に立つことができるというものだ。

この2人の前途有望なベンチャー投資家は、今日、ニューヨーク市を本拠地とする彼らのEqual Ventures(イコール・ベンチャーズ)が初の投資を獲得したと発表した。彼らは、さまざまな機関投資家と選ばれたベンチャーGPとLPから5600万ドル(約61億5000万円)の資金を調達した。2人は、別々のベンチャー投資会社で経歴を積んだ後、昨年に合流した。カービー氏はサンフランシスコとニューヨークのVenrockで数年間働き、ズロ氏はシカゴに本社を置くLightbankに投資家として勤めていた。

2人は、シードのための中身の充実したテーゼに基づく投資モデルが、行き当たりばったりの数撃てば当たる的な投資家や、大きなステージのラウンドの資本政策表で有利な地位を得るためにシードに手を出す大企業に打ち勝つことができると信じている。

このラウンドは今週でクローズされるが、彼らはすでに、小売り、物流、人材などの5つ以上のスタートアップ向け投資を決めようと忙しく動き回っている。同社は平均して150万ドル(約1億6500万円)程度の投資を目指していて、できるだけ多くの資金を後の投資のために確保しておきたいと考えている。

Equalが他の企業と異なっている点は、2人の創設者に技術的経歴がないことだとカービー氏は私に話してくれた。彼とズロ氏は、現代のSaaSツールと、大幅に民主化された業務用プラットフォームがあれば、デジタルビジネスがこれまでになく簡単に立ち上げられると考えている。コンピューター科学や、AIやMLといった小難しいアルファベットスープの知識がなくても構わないという。

その代わりに彼らは、この20年間、ベンチャー投資家からの投資をほとんど受けられなかった市場や業界に挑む会社創設者たちに的を絞り、情報格差や「社会の変容」の緩和を目指す。ズロ氏によると、彼とカービー氏は常に「私たちの仕事をデジタルで本当に変革できるのか?」と問いかけているという。ファンドを支える枠組みはカーロータ・ペリッツの著書「Technological Revolutions and Financial Capital: The Dynamics of Bubbles and Golden Ages」の影響を受けたという。詰まるところ、次なる製品に注目するよりも、また市場経験が浅い技術系の投資家よりも、特定の市場の深い洞察力が最終的にはずっと大きなリターンをもたらすと彼らは信じている。

同社は現在、小売り、保険、サプライチェーン、ケアエコノミーの4つのテーゼを追求しているとカービー氏は話している。これらのテーゼは、彼とズロ氏と彼らの投資家仲間でありLightbank出身のAli Afridi(アリ・アフリディ)氏が別の題材を探る間も、ずっと変わらないか、変わるとしても3カ月ごとだ。この分析作業は、スタートアップが解決を望む問題の特定を助けるためのものだ。それにより、企業は、業務に必要な材料や部品の有望な調達先を見つけられるようになる。

Equalはまた、状況に応じて企業のインキュベートも行いたいと考えている。今のところ、ポートフォリオにある2つの企業を内部でインキュベートしてきた。カービー氏は、見通しの利く将来にかけては、この調子で続けていけると確信している。

Equalという社名は、ひとつには2人の創設者が社内で平等なパートナーであることと(彼らは、将来パートナーが加わっても同じ経済的扱いになると話している)、そして、どの起業家もみな平等な地盤からベンチャー投資にアクセスできる機会を与えたいという願いから付けられた。カービー氏は、数年かけてベンチャー投資の平等性の問題を調査してきたため(私の同僚であるMegan Rose Dickeyがその件について2年前に書いた分析記事を参照してほしい)、2人が新しい会社を立ち上げるとき、できるだけ多くのタイプの、さまざまな背景の起業家に手を差し伸べたいと考えた。

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平等に対するそうした意識と、スタートアップ設立に役立つソフトウェアツールの普及もあって、カービー氏とズロ氏は、ニューヨーク市の地元の市場だけに留まろうとはしていない。彼らは地理に関しては比較的無頓着だ。現に、彼らが支援している企業は、リモートワークの仕組みを利用していくつもの国に散らばっている。

最終的には、より多くのEqualモデルの投資が最も早いステージに適用され、彼ら自身だけでなく、新世代の起業家全体に機会が生み出されることを願っている。

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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