EU圏内のローミング手数料が原則無料化――デジタル単一市場の構築に向けた大きな一歩

EU全域でローミング手数料が撤廃されたことを受け、加盟国(28か国)の人々は国をまたいで移動するときも制限なくモバイル端末を使えるようになった。

6月14日に公開された欧州委員会、欧州議会、欧州理事会の共同声明の中で、これは「EU市民にとっては具体的かつポジティブな」変化だと記されている。

しかし、いわゆるパーマネントローミング(通信料の安い国で契約を結び、自国に戻ってからもローミング状態でサービスを利用し続けること)を防ぐために一定の制限が設けられており、極めて価格の低いプランに関しては(上限付きの)ローミング手数料が発生する可能性がある。データ通信量が無制限のプランについても、他のEU加盟国でデバイスを使用するときには何かしらの制限や追加料金が発生するかもしれない。

とはいえ平均的なユーザーであれば、EU圏内の他の国にいるときも自国にいるときと同じ価格でモバイル通信を利用できるはずだ(詳細は欧州委員会のウェブサイトに掲載されているFAQを参照してほしい)。

さらに各国のキャリアは、ローミング手数料がなくなるからといって国内の通信料を上げることはないとされている(実際どうなるかは今後の動きを見ていくしかないが)。

昔は涙が出るほど高かったローミング手数料のせいで、消費者は仕事や休暇でEU圏内を移動する際もネットサービスの利用を控える傾向にあった。そのため、EU全域でのデジタルビジネスの障壁を下げ、競争力を高めようとするデジタル単一市場の構築を目指す欧州委員会にとって、ローミング手数料の撤廃は10年単位の一大プロジェクトだった。

ローミング手数料撤廃に向けた最後のハードルは、今年4月に欧州連合の3機構(欧州委員会、欧州議会、欧州理事会)が各国キャリアのローミング手数料に上限を設けると合意したことでクリアされた。

「私たちは欧州連合が高額なローミング手数料の撤廃に踏み切ったことを誇りに思っていますし、このゴールを実現する上での課題を乗り越えるために努力してくれた人たちに感謝しています」と3機構の上級代表は共同声明の中で語った。

「さらにEUはローミング手数料を廃止しつつも、各加盟国内の通信料を競争力のある水準に保つことができました。各キャリアは2年間の準備期間を経て今回の変更を反映しており、顧客の利益のためにも彼らは新しいルールがもたらすチャンスを利用することになるでしょう」

対象となるEU加盟28か国は次の通りだ。オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、イギリス。

なお、ブレグジット(イギリスのEU離脱)の影響で再びイギリスでローミング手数料が導入されるかどうかについてはまだわかっていない(今年の3月から2年間の離脱プロセスは始まっている)。

これもまたブレグジットの不確定要素のひとつということになるが、少なくとも実際にイギリスがEUを離脱するまでは、同国の市民もローミング手数料なしで携帯電話を使えるようになった。

(日本版注)プリペイドSIMについてもローミング手数料が原則撤廃されるため、EU圏外からの旅行者も加盟国内でSIMカードを購入すればこの制度変更の恩恵にあずかれる。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

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TechCrunch Japan

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