eVTOL開発のArcherがユナイテッド航空から受注、SPAC経由で上場も

都市部の航空モビリティマーケットをターゲットとしている電動航空機スタートアップのArcher Aviation(アーチャー・アビエーション)が、SPAC(特別買収目的会社)との合併を通じて公開企業となることを目指す一環で、United Airlines(ユナイテッド航空)を顧客そして投資家として獲得した。

Archer Aviationは米国時間2月10日、SPACのAtlas Crest Investment Corpと合併することで合意したと明らかにした。SPAC合併はスタートアップが従来のIPOプロセスを回避するのを可能にするという、このところよく見られる手法になっている。ティッカーシンボル「ACHR」でニューヨーク証券取引所に上場する合併会社の評価額は38億ドル(約3975億円)となる見込みだ。

ユナイテッド航空やStellantis、Exorのベンチャー部門、Baron Capital Group、Federated Hermes Kaufmann Funds、Mubadala Capital、Putnam Investments、Access Industriesといった投資家からのPIPE(私募増資)の6億ドル(約628億円)を含め、計11億ドル(約1150億円)を得ると予想される、とArcher Aviationは話した。Ken Moelis(ケン・モエリス)氏とその仲間、Archer Aviationの主要・初期投資家の1人であるMarc Lore(マーク・ロア)氏、そして初期投資家もPIPEに3000万ドル(約32億円)を投資する。

合併会社はまた信託で5億ドル(約523億円)を保有する。SPAC合併に先駆けてArcherはシードラウンドとシリーズAで6000万ドル(約63億円)を調達していた。

これとは別に、カリフォルニア州パロアルト拠点のArcherはユナイテッド航空がArcherに投資することに同意したと発表した。合意条件の下で、ユナイテッド航空は10億ドル(約1045億円)分の航空機をArcherに発注した。同航空は追加で5億ドル(約523億円)分の航空機を購入するオプションも持つ。

Archerはまだ電動垂直離発着機(eVTOL)の大量生産を開始していない。同社のeVTOLはフル充電すると時速150マイル(約241km)で60マイル(約96km)飛行できる。同社はフルスケールのeVTOLを2021年後半に披露する計画で、2023年の大量生産開始を目指している。

画像クレジット:Archer Aviation

同社は、ユナイテッド航空との取引、そして以前発表した自動車コングロマリットStellantisとの提携ならびにSPAC合併を通じて調達した資金によって商業化へ向けた取り組みを加速させられると確信している。

関連記事:エアタクシースタートアップArcherが電動飛行機生産で自動車メーカーのフィアット・クライスラーと提携

ユナイテッド航空のCEOであるScott Kirby(スコット・カービー)氏は今回の投資は同社が空の旅の脱炭素化を進める手法の1つだと表現した。

「Archerとの協業で、ユナイテッド航空はよりクリーンで効率的な交通手段を擁する時だということを航空業界に示しています。正しいテクノロジーを活用して我々は航空機が地球に与えるインパクトを抑制できますが、これを早期に現実のものとする次世代の企業を特定し、そうした企業が飛び立つのをサポートする方法を見つけなければなりません」と同氏は述べた。

また今回の動きは、ゆくゆくはユナイテッド航空の乗客の空港送迎ができるかもしれないという新たなビジネスラインへの投資でもある。ArcherのeVTOL1機を使えば乗客1人のハリウッド-ロサンゼルス国際空港間の移動による二酸化炭素排出量を最大50%減らすことができる、とユナイテッド航空は算出している。ロサンゼルスはArcherが最初に機材を飛ばそうと計画している都市の1つだ。

Archer Aviationがステルスモードから登場して1年も経たないうちに、SPACとの合併契約とユナイテッド航空からの受注となった。Archerは2018年にAdam Goldstein(アダム・ゴールドステイン)氏とBrett Adcock(ブレット・アドコック)氏が共同創業した。2人はSaaS企業VetteryをAdecco Groupに1億ドル(約105億円)超で売却した。Archerの主要投資家はロア氏で、同氏は自身の会社Jet.comを2014年にWalmartに33億ドル(約3450億円)で売却し、現在はWalmartのeコマース責任者を務めている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Archer AviationSPACeVTOLエアタクシー

画像クレジット:Archer Aviation

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。