Facebook、アルゴリズム改訂でスパムコンテンツの表示順位低下を狙う

Facebookは、あるユーザーが1日に50件以上の偽ニュースや扇情的なコンテンツ、クリックベイト(釣り記事)をシェアしていたとしても、厳密にはその人のアカウントを削除することはできない。というのも、同社は人々の”シェアする権利”を尊重したいと考えているのだ。しかしそのようなコンテンツをニュースフィードの下の方に埋めておき、ほとんどの人の目に入らないようにすることならばできる。

Facebookはまさにそれをするために、ニュースフィードのアルゴリズムをアップデートしたと先週発表した。新たなアルゴリズムは、スパマーだと思われるユーザーがシェアしたリンクを検知し、その表示順位を下げるような仕組みになっている。Facebookの調査によれば、このようなリンクは「クリックベイトや扇情的な記事、偽ニュースといった低品質なコンテンツとの関連性が高い」とされており、新アルゴリズムを活用することで、リンク先のコンテンツを個別に分析しなくてもプラットフォーム上のスパムコンテンツを浄化することができるのだ。

単に投稿数が多いだけのユーザーであれば、今回の変更の影響は受けないだろう。また、対象は個人のアカウントに限られているため、Facebookページもこれまで通り好きな数だけコンテンツを投稿でき、トラフィックを増やすためにスパマーを活用しているFacebookページのリーチにのみ影響が及ぶことになるとFacebookは言う。

ニュースフィード担当VPのAdam Mosseriはその背景について、同社がターゲットにしているのは「意図的に低品質なコンテンツを1日あたり50件以上シェアしているユーザー。統計的に見れば、これはかなり例外的な数だ。並外れた影響力を持つ彼らは、何かしらの目的のためにニュースフィード上に有害なコンテンツを垂れ流している」と語った。

「まさかあの人がレッドカーペット上で転ぶとは……」と題されたクリックベイトの例

Facebookとクリックベイトの戦いは2014年に始まり、まず同社は移動先での滞在時間が短いリンクの優先順位を下げるという施策をとった。それ以降もアルゴリズムに改変を加え、捏造記事がなるべく表示されないようにしたり、クリックベイトやスパムを根絶するためAIにトレーニングを施したりしていた。それ以外にも、通報オプションの導入やファクトチェッカーとの協力で偽ニュースに対抗し、広告で埋め尽くされたサイトに飛ぶリンクの表示優先順位を下げたり、クリックベイト対策を9言語に展開したりしていた。

数十種類におよぶアルゴリズムの改訂履歴の詳細については、こちらの記事を参照してほしい。

「プラットフォームから偽ニュースやクリックベイト、扇情的なコンテンツを駆逐するために、私たちは最大限の努力をしている」とMosseriは語る。「Facebookは人々にストーリーを共有する力を提供しようとしているため、スパマーはグレーエリアにいると言える。彼らは不要なコンテンツを垂れ流している一方で、私たちのポリシーに反しているわけではないため、これはスパマー対策としてはふさわしいアプローチだと考えている」

もしもFacebookの試みがうまくいけば、ユーザーはもっと時間をかけてコンテンツに目を通すようになり、リンクをクリックするのに不安を感じることもなくなってくるだろう。そうすれば、Facebookも「世界のつながりをより密に」という新しいミッションステートメントに沿ったサービスを提供できるようになる。露骨な偽ニュースが人々の注目を集めている一方で、これはFacebook上でシェアされている劣悪なコンテンツの一部に過ぎない。実は社会の分断につながるような扇情的でバイアスのかかったコンテンツの方が、人目にはつきにくいものの大きな影響力を持っているのだ。そのようなコンテンツの表示順位を下げることができれば、リベラル派と保守派も建設的な議論ができるようになるだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

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TechCrunch Japan

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