Facebookがプラットフォームの「オール・ビデオ化」を望んでいることについて

2016-06-10-facebook

Facebookはプラットフォームの中心となるコンテンツを文字からビデオに置き換えようと引き続き全力を挙げていることは覚えておく必要がある。

Quartzによれば、Facebook EMEA〔ヨーロッパ・中東・アフリカ〕副社長、Nicola Mendelsohnは昨日(米国時間6/15)、ロンドンで開催されたカンファレンスで「5年後にFacebookは「たぶんすっかりビデオ化しているだろう」と述べた。

Mendelsohnはまた360度パノラマビデオは「ごく普通になっている」とし、VRハードウェアの成長も予言した(もちろんFacebookはVRヘッドセットのRiftのメーカーであるOculusを傘下に持つのだから当然の主張ではある)。

Mendelsohnは「これほど大量の情報が氾濫する世界でストーリーを効果的に語る方法はビデオだ。短時間に大量の情報を伝達することができる。ビデオに向かうトレンドは私たちが情報を消化する速度を速めるために役立つだろう。ここ数年、テキストの役割は低下を続けている。…私が賭けるとしたらビデオだ。ビデオ、ビデオ、ビデオ、と言いたい」」と述べた。

しかしもちろん、ハンガー・ゲームの戦闘アリーナと同じで、Facebookは「壁に囲まれて」おり、Faceookの完全なコントロール下にある。

つまりMendelsohnはFacebookのユーザーが自発的に選ぶであろう未来を推測しているのではなく、Facebookという企業の至上命題がプラットフォームのビデオ化であることを再確認したにすぎない。Mendelsohnはビデオを他のあらゆるメディア・コンテンツの上位に置いたが、ビデオがコマーシャルを表示する媒体としてきわめて有効であることも見逃せない(そういえばSnapchatという例もある…)。

インスタント記事(Instant Articles)のフォーマットを利用している広告主は、 Facebookのプラットフォームは書かれた文字に対してほとんど敬意を払っていないことに留意すべきだろう)。

最近、Facebookはメインのアプリからメッセージ機能をほぼ完全に追放した。Facebookで特定の友達に情報を文字で送信したい場合は別アプリのFacebook Messengerを利用する必要がある(一部の地域ではFacebook本体のモバイル・アプリからテキスト・メッセージを共有できるが、少なくともアメリカでは不可能だ)。

またビデオの情報量は巨大であり、モバイル・ビデオは世界中どこでもアメリカでのようにありふれたものとはなっていない。Facebookの「オール・ビデオ化」という戦略は途上国の多数のユーザーに対してドアを閉ざすものとなるだろう。Facebookはこうしたユーザーの獲得にあれほど熱心だったにもかかわらず、ビデオ化は逆の効果を生む可能性がある。

つまり現実的には、Facebookアプリのオール・ビデオ化は アメリカその他の先進国に限られ、途上国のモバイル・アプリはもっと混合的な性格とならざるをえない。【略】

なるほど〔テキストだけの〕SMSの役割は減少傾向だ。ユーザーはビデオや写真を添付できるもっと進歩したチャット・アプリにシフトしている。しかし文字の役割が低下している? そんなことがあるわけがない。テキスト・メッセージのやり取りは過去に例を見ない水準に高まっている。

結論は、「文字の役割は低下していない」だ。文字の役割が低下しているのはFacebookのメインのアプリ内だけで、その理由はFacebookというビジネスはユーザーにもっとビデオを利用させる必要があるからだ。

ユーザーをビデオに慣れさせビデオの利用に誘導しようとする目的で、Facebookはビデオ・コンテンツを優遇する新しい表示アルゴリズムを開発し、テキスト・ベースの表示を格下げすることでユーザーがメイン・アプリでテキスト・メッセージを共有することを妨げようと試みている。

人間にとって文字の役割が減少するということはない。文字の役割が減少しているのはFacebookであり、ビデオ消費を増大させるスペースを生み出すために文字を削ろうとしている。われわれは友達と常にテキストで情報を交換しあっている一方、Facebookはビデオというリッチメディアの闘技場に変わる(Snapchat風になるのか?)ことを目指している。

「オール・ビデオ化」というのはFacebookがプラットフォームとして目指す方向ではあっても、人間のコミュニケーションの現実はまた別だ。これは一つのキーワードで括れるような簡単なものではない。会話体験のフォーマットは多層的であり、いわば〔神話の怪物のように〕多数の頭を持った存在だ。Facebookがどんな未来を望もうと、この現実は変わらないだろう。

画像: Twin Design/Shutterstock

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。