Facebookが写真をGoogleフォトに移行するツールをアイルランドで提供開始

それは友達のポータビリティーではなかったが、Facebookは米国時間12月2日「写真ポータビリティー」のツールを発表した。ユーザーはFacebook上の写真をGoogleの写真ストレージサービスに直接エクスポートできる。なお、データは暗号化して転送される。

新機能はまずアイルランドのFacebookユーザーに公開される。Facebook本社の所在地だ。現在まだテスト中でありユーザーのフィードバックを基に微調整を進め、2020年前半には「全世界に提供」する計画だとFacebookは表明している。

同社はさらに、転送先の写真ストレージサービスとして、将来はGoogleフォト以外のサービスも追加する可能性を示唆している。

Facebookによるとこのツールは、昨年始まったIT巨人5社、すなわちApple、Facebook、Google、Microsoft、Twitterが支援するData Transfer Projectという共同プロジェクトに参加する中で開発されたコードをベースにしている。同プロジェクトは「どのプラットフォーム間でも、ユーザー主導でシームレスに直接データを移行できる共通フレームワークをオープンソースコードで作る」ことを約束している。

Facebookは去る9月に発行した白書にも言及した。白書では移行を可能にすべきデータのタイプ、および「他のプロバイダーに移行する際に誰が責任を持ってデータを守るか」に関する「明確な規定」の必要性を主張している。

もちろんこうした行動の向こうには、反トラスト規制の脅威が待ち受けており、各社の市場、ユーザーおよびデータの囲い込みについて、大西洋の両岸で規制当局が目を光らせている。

Facebookが白書で、移行ツールは「オンラインサービス間の競争を活性化させる」ためだと表現していたのもそのためだ(ただし提示される「選択肢」が別のIT巨人にデータを移行することなら、競争状態の再編成にはなりそうにない)。

ユーザーのアップロードしたデータを移行できることによって「支配的サービスから移動できることが可能だとユーザーが感じられる」というのはたしかにそのとおりだ。

しかし、そこには偽装もある。特に、問題になっているプラットフォームがFacebookのようなソーシャルネットワークであり(この種のサービスに人を留めているのは他のユーザーである)、データの生み出した価値は写真そのものが他の場所に移っても維持されるからだ。

Facebookはユーザーがアップロードした写真などのデータを処理して個人的な知見を得ることによって、広告ターゲティングのためのプロファイリングを行っている。つまり、たとえ写真を他に送ったとしても、Facebookがすでに処理した自撮りや赤ん坊やペットの写真から学習した内容はなくならないさらに、移行ツールはデータの複製を送るのであって、元のデータはユーザーがさらに行動を起こさない限り(アカウント削除など)Facebookはユーザーの写真を持ち続ける。

Facebookは、写真などの個人データに基づいて同社が推測した内容の移行や利用する権利について、ユーザーは何の制御権も与えられていない。あるいは、ユーザーのFacebookの利用形態やインターネット全般の閲覧状況を分析して得られた知見についてもユーザーは何もできない。Facebookはソーシャルプラグインやピクセルの追跡などの手段によって、ユーザーだけでなくユーザー以外の行動も追跡している。

同社のターゲット広告事業が、ユーザー追跡(別名個人データ処理)の膨大な副産物に支えられていることを踏まえると、サブメニューのどこかに埋もれた移行ツールを提供して、ごく一部の物知りユーザーがクリックして別のIT巨人に写真を送り込んだとしてもリスクはほとんどない。

むしろ、将来別のプラットフォームから同じようにデータが送り込まれてくる利益に期待しているかもしれない。「このサービスによって、白書に記載したプライバシー問題に関する議論が高まることを期待している」とFacebookは記載している。「これは当社だけではできないことなので、もっと多くの会社がData Transfer Projectに参加して、データ移行のイノベーションを起こすことを期待している」。

デジタル市場の刷新を目指す規制当局は、こうした利己的な取組みの表面下を探り、プラットフォームの支配力を抑止する意味のある手段であるかどうかを見極める必要がある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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