Facebookが動画内に挿入できる広告ブレークを導入へ―、広告収益の55%がクリエイターのもとに

facebook-video-money

Facebookは本日(米国時間2月23日)、数社のパートナー企業を対象に、動画の最中に表示される広告ブレークのテストを開始したと発表した。広告収益のうち55%はビデオを提供している企業が受け取り、残りの45%がFacebookのポケットに入ることになる。広告ブレークの導入により、Facebook向けコンテンツをつくる人が増える可能性があると共に、ユーザーに広告を最後まで見せるため、今後動画の構成が変わっていくかもしれない。

動画をアップする企業や個人は、どこに広告を挿入するか選ぶことができるが、少なくとも20秒の尺をとって各広告の間隔は2分以上空いていなければいけない。ちなみに広告ブレークの導入については、先月Recodeが報じていた。

サードパーティーアプリで広告を表示するためのAudience Networkでも、昨年から今年にかけて行われたテストが終わり、利用者は動画内広告を使えるようになった。

facebook-video-ad-breaks

動画内広告の例(Matt Navarraのツイートより引用)

さらにFacebookは、昨年8月に発表した通り、現在行っている広告ブレークのテスト範囲をライブ動画にも広げていく。現在のところは、アメリカ国内のFacebookページや個人のアカウントの中で、フォロワー数2000人以上かつ最近のライブ動画配信で同時視聴者数が300人を超えたものについては、広告ブレークを使えるようになった。

同時視聴者数が300人を超えた状態で4分以上動画を配信していると、「広告ブレークを挿入できます」というお金のマークがついたアラートが、視聴者からのリアルタイムコメントと並んで表示される。メッセージをタップすると、最大20秒間の広告が表示され、さらにそれから5分以上経つと新しい広告が表示できるようになる。

広告ブレークの導入によって、ライブ動画を配信する人も、予め準備した動画をアップする人も視聴数に応じて広告収益をあげられるようになる。その結果、Facebookはオープンな広告収益プラットフォームとしても機能するようになり、クリエイターをFacebook Liveにひきつけることができるかもしれない。

収益面に限らず、広告ブレークはライブ動画を配信する側にとって便利な機能だ。というのも、動画配信中にちょっと一息ついたり、髪型をなおしたり、セッティングを変えたりしたいと思ったら、彼らは広告ブレークを使って、カメラから離れることができる。さらに広告ブレークは縦向き動画にも対応しており、FacebookがSnapchatの陣地へさらに攻め込もうとしているのがわかる。

また、Facebookが広告営業や集金を行ってくれるので、動画配信者はマネタイズに関して何か特別なことをする必要がない。大手報道機関やエンターテイメント企業を除くと、ウェブ上の有名動画クリエイターの多くは自分の部屋で動画を撮っているティーンやヤングアダルト層にあたり、彼らは必死に自分たちの趣味を仕事にしようとしている。

だからこそ、彼らに広告収益をもたらしているYouTubeが、若いビデオグラファーの拠点になっているのだ。しかしFacebookの広告ブレーク導入により、たとえYouTube上のコンテンツと共食いすることになるとは言え、彼らには動画を拡散させる以外の目的でFacebookに動画を投稿するインセンティブが生まれた。そしてライブ動画へも広告が挿入できるようになった結果、まだ有名人との大型スポンサー契約をはじめたばかりのPeriscopeから、Facebookはライブ配信者を奪うことができるかもしれない。Facebookも、大手エンターテイメント企業にライブ動画機能を使ってもらうための単発の取引を過去に行っていたが、同社の新しい広告システムは、もっと広い範囲の人々を対象にしている。

広告ブレークによって動画の数が増えると共に中身が変わる

これまで、Facebook上の動画広告は、ユーザーが自分で選んで見た動画が終わった後に関連動画として表示されるか、フィード上に単独で表示されていた。しかし今後Facebookは、1日合計1億時間も視聴されているという動画コンテンツから、直接広告収益をあげられるようになる。しかもこの1億時間という数字は1年前のもので、そのときFacebookはまだ有力なビデオプラットフォームとして認知されていなかった。さらに同社は、ストリーミングボックス用アプリ(今のところ広告表示は予定されていない)のローンチによって、これまで主戦場としていたモバイル端末を超えて、動画の視聴数を伸ばすことができる可能性もある。

live-ad-break一方で心配なのは、動画をつくる人が盛り上がりどころを広告ブレークの後に持ってきてしまい、そもそも動画の視聴数が減ってしまうということだ。これまで動画クリエイターは、視聴者が求める面白い部分を最初の数秒に詰め込むことで、フィードをスクロールしていくユーザーの目を引こうとしていた。

今後彼らは、最初の20秒間で緊張感を高めてから広告ブレークを入れ、収益を確保した後に、動画の面白い部分をおくようになるかもしれない。そして自動再生時のデフォルト音声設定がオフからオンに切り替わったように、Facebook向け動画作成のルールは大きく変わっていくだろう。

Facebookでパートナーシップ担当VPを務めるNick Grudinは「Facebook向けであろうが他のプラットフォーム向けであろうが、私たちはパートナー企業と強力して、デジタル動画用の新しいマネタイズ方法や広告商品の開発に力を入れています。まだこの分野でのビジネスをはじめたばかりですが、本日のアップデートによって、一歩ゴールに近づけました」と話す。

諸々の施策によって、Facebookはニュースフィードのスペースはそのままにして、売上を拡大できるかもしれない。彼らが優秀なクリエイターを集めることができれば、ユーザーはこれまで目もくれることのなかった写真広告よりも収益性の高い動画広告を最後まで見るようになるだろう。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。