Facebookの怠慢な態度に厳しさを強める欧州

イタリアの公正取引委員会は、Facebookに対して個人データの商用利用についてユーザーに完全に説明できていないことを理由に訴訟に踏み切った。

同時にドイツの裁判所は1月24日、Facebookの個人データとプライバシーの取り扱いに関する問題について消費者団体が国内の裁判所に提訴する権利を認めた。

透明性の欠如

勝訴すれば罰金500万ユーロ(約6億円)となる可能性があるイタリア公正取引委員会による訴訟は、2018年11月にこの規制当局が示した判断に従っている。

そのとき同委員会は、「無料」サービスに登録したことで発生する潜在的な交換価値について、Facebookがユーザーにわかりやすく説明していないことを突き止め、ユーザーの個人情報がどのように商用利用されるかを適切に伝えていないことに対して500万ユーロの罰金を科している。

今回の訴訟に関する広報資料によれば同委員会は、Facebookはホームページから、ある主張 — サービスは「Free and always will be」(ずっと無料)という文言 — が削除されたが、Facebookがユーザーの個人情報でどのように収益を上げているかを「明解かつ直接的に」ユーザーに説明する文章はいまだ見つからないと指摘している。

公正取引委員会は、Facebookの「欺瞞行為」と彼らが呼ぶ活動を禁止し、イタリアのホームページ、Facebookのアプリ、さらにイタリアで登録したユーザーの各個人のページで改正した説明を掲載するよう求めた。

今回の同委員会の訴訟に応える形で、Facebookの広報担当者はTechCrunchに次のように述べた。

私たちは当局の決定を精査しています。昨年、私たちは、Facebookの収入の仕組みをよりわかりやすく説明するために、利用規約を含む複数の変更を行っています。これらの変更は、みなさまにさらなる透明性と、ご自身の個人情報の管理方法を提供するという、私たちの継続的な取り組みの一環です。

昨年、イタリアのデータ保護機関は、Facebookに110万ユーロ(約1億3000万円)の罰金を科した。ケンブリッジ・アナリティカのデータ漏洩スキャンダルに関連したプライバシー侵害に対するものだ。

怪しくも怠慢な態度

別件だが関連ニュースとしてドイツの裁判所は1月24日、Facebookはサービスが「ずっと無料」という宣伝文句を今後も使い続けることができると判断した。サービスの代償として、金銭での支払いをFacebookがユーザーに求めていないことがその根拠だ。

ドイツの消費者権利団体であるvzbvは、Facebookがこの宣伝文句を使うことに反対する訴えを起こした。同プラットフォームはターゲティング広告に利用するためにユーザーの個人データを収集しており、誤解を招くという起訴内容だ。しかし、裁判所はこれを退けた。

だがそれは、この団体がデータ保護関連で提訴した全26件のうちのひとつに過ぎない。ベルリンの裁判所は、その他の多くの訴訟では団体に有利な判決を下している。

中でも注目すべきは、EU全体を対象とした一般データ保護法(GDPR)が施行されるにも関わらず、データ保護関連の法的訴えをドイツ国内の裁判所で起こす権利を同団体に認めたことだ。これは、プライバシーに大変に厳しい市場において、消費者擁護団体とプライバシー権保護団体の戦略的訴訟に道を拓くものだ。

EU加盟国単位でのプライバシー関連訴訟を回避する際にFacebookがよく用いる法的論拠に、Facebookのヨーロッパ本部はアイルランドにあるため他の加盟国の裁判所には司法権がないというものがあるが、それを考えると面白い(GDPRには、国境をまたぐ苦情をトップの規制当局にワンストップで訴えられる仕組みがある)。

しかし、この決定のためにFacebookは例えばFacebookを含む大手アドテック企業はユーザーに同意を強制しているとの2018年5月以来のGDPR違反の訴えに追われ仕事が山積みのアイルランドの規制当局に、個人データとプライバシーに関するあらゆる苦情を押しつけることが難しくなる。

ベルリンの裁判所はまた、Facebookのプライバシー設定と契約条件は同意に関する法律に違反しているとのvzbvの主張を受け入れた。つまり、Facebookのモバイルアプリで初めから有効になっている位置情報サービスや、デフォルトで有効になっているユーザーのプロフィールを検索エンジンにインデックスする設定などだ。

さらに同裁判所は、Facebookの契約条件であらかじめ定式化されている一部の条件は、準拠すべき法的基準から外れていることも認めた。例えば、名前とプロフィール写真が「商用で、スポンサーによって、あるいは関連するコンテンツで」使用されることにユーザーが合意しなければならないことや、将来の規約変更にあらかじめ合意するといった条項などだ。

vzbz法執行チームのHeiko Dünkel(ハイコー・ダンケル)氏は声明の中でこう述べている。「Facebookがそのユーザーの個人情報のずさんな扱いで有罪になったのは、これが初めてではありません。裁判所は消費者相談センターがGDPR違反に対して訴訟が起こせることを明らかにしました」。

我々は、Facebookにコメントを求めている。

画像クレジット:Twin Design Shutterstock

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。