Facebookは全プラットフォームで米国の陰謀論グループQAnonを締め出しへ

Facebook(フェイスブック)は米国時間10月6日、同社が運営するいくつものソーシャルプラットフォームでのQAnon(キューアノン)関連コンテンツの禁止範囲を拡大(Facebookリリース)した。これまでも、「『暴力を煽る議論』を行うQAnon関連グループを禁止していたが、それをさらに進めたものだ」と同社は話している。

QAnonの暴力的なコンテンツを禁止するのみならず「QAnonを代表するあらゆるFacebookページ、グループ、Instagramアカウント」も対象としたFacebookの今回の措置は、ますます対立が激化する選挙に先立ち、そのプラットフォームを浄化しようとするソーシャルネットワークの同巨大企業の強硬手段だ。

QAnonは、トランプを支持するための数々の陰謀論を無秩序に押し広める団体であり、米国人有権者の間に広く根付いている。その熱狂的な信奉者たちは、異常で支離滅裂な信念体系に執着するあまり危険な行為に及んでは、テロ活動として起訴(ABC News記事)されている。BuzzFeed Newsは先日、QAnonを「集団妄想」と呼ぶことを決めた。この陰謀集団の空虚で愚かで危険な信念を、的確に言い表した言葉だ。

QAnonの抑え込みを目指すFacebookのこの取り組みには効果があるだろうが、時期が遅すぎた。昨年の1年間で、陰謀論を振りまくキワモノ集団に過ぎなかったQAnonは、驚くほど大きな政治的思想団体に発展し、米国議会議員の候補者を擁立するまでになっている(The Guardian記事)。彼らを成長させたのは、同好の仲間を引き合わせる機能を本質的に備えたソーシャル・ネットワークだ。その機能が偽情報を広め、次第に過激な思想へと利用者を感化していくことが何度も繰り返し指摘されてきた。

7月、Twitter(ツイッター)は、「オフラインの危害」の懸念を理由に、QAnonに対して独自の対応に出た。同社はQAnonのコンテンツを格下げし、トレンドページとアルゴリズムによる「おすすめ」から排除した。Twitterのポリシー変更は、Facebookの以前の対応と同様、QAnonのコンテンツを完全に禁止するまでには至らなかったものの、その増殖を抑えることはできた。

他の企業は、Alphabet(アルファベット)のYouTubeと同様、外部の監視者による同種の批判を受けている、YouTubeはアルゴリズムを見直し、大量のコンテンツの中から怪しいものをより的確に排除できるようにしたと話しているが、実験の結果は確実とは言い難いものだった(Wired記事)。

FacebookやTwitterなどのソーシャル・プラットフォームも、選挙を前にして作為と虚偽に満ちた政権に対抗し、ルールを変更した(未訳記事)。その同じ政権が、投票のセキュリティーと、20万人以上のアメリカ人の命を奪ったウイルスに関するデマや偽情報を拡散している。この2社の対策には、とくに危険なこれら2つの偽情報の威力を弱めるだけの価値はあったが、積極的な措置ではなく後手の対応であったため、そのポリシー上の決断は危険なコンテンツの拡散を抑えるには遅きに失した。

Facebookの新ルールは、米国時間10月6日から有効となる。同社は広報資料で、これから「ルールに従いコンテンツを削除してゆく」と話しているが、QAnon自体を排除する取り組みには「時間がかかる」とのことだ。

Facebookの今回の変化は、何に後押しされたものなのか?同社によると、QAnonの暴力的なコンテンツを引っ張り出したときに、「西海岸の山火事は一部のグループが引き起こした、などという陰謀論をはじめ、さまざまな形で現実の災難に結びつけられた別のQAnonコンテンツ」が見つかったという。先日、山火事が発生したオレゴン州では、Facebookプラットフォームで広がった偽情報のために、アンティファ(ファシズムに反対する人を真正面から軽蔑した呼称)が州に火を放ち、不法に道路を封鎖(CNN記事)しているというウソを住民たちが信じてしまった。

Facebookが運営するいくつものプラットフォームで、QAnonをどれだけ効果的に排除できるか、今はまだわからない。だが、私たちはそこに注目していく。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:ドナルド・トランプ、Facebook、フェイクニュース、QAnon

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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